しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年6月6日(水)

カジノ解禁 今国会成立狙う

安倍政権 異常な執着

 刑法が禁じる賭博場・カジノを解禁するカジノ実施法案の審議が衆院内閣委員会で始まりました。与党は今国会での成立をねらっています。まだわずかな時間の審議のなかからも違法な民間賭博の解禁に執着する安倍晋三内閣の異常な姿勢と日本社会に大きな害悪を広げるカジノの異次元の危険性が鮮明になっています。(竹腰将弘)


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 (写真)大阪市内で開かれたカジノ見本市で米ラスベガスカジノ大手のMGMが展示した大阪カジノの計画図=4月27日

「反対」65%の世論に背

 カジノ法案「今国会で成立させるべきだ」22%、「成立させる必要はない」71%(「朝日」4月14・15日調査)

 カジノ解禁に「賛成」26・6%、「反対」65・1%(「共同」3月3・4日調査)

 直近の各種世論調査でも、カジノに反対する国民の声は明瞭です。

 日本共産党の塩川鉄也衆院議員が「国民多数の反対の声はなぜだと思うか」と迫ったのに、安倍首相は「カジノにばかり焦点があたって弊害を心配する方が多い」というすり替え答弁をしました。

 政府は、同法案は「カジノ単体」を解禁するのではなく「IR(統合型リゾート)の一部としてカジノを実施する」ものだといいます。

 しかし、国際会議場など観光施設を整備するだけなら新たな立法は要りません。IRの「収益面での原動力」としてカジノを解禁するというのがこの法案の本質であり、だからこそ国民は反対しているのです。

 首相は「(IRが)日本の成長戦略に資する経済効果を有することについてイメージの共有が道半ばだ」とのべました。

 「経済効果」といいますが、政府は「経済効果、雇用効果、財政上の効果などを定量的に試算することは困難」(中川真IR推進本部事務局次長)と答えています。ギャンブル依存症や副次的な犯罪被害など、カジノが必然的にもたらすマイナスの効果はまったく考慮しておらず、根拠を欠くものです。

 首相は2014年5月、シンガポールのカジノ施設を視察したさいに「日本の成長戦略に資すると思う」とのべ、カジノ解禁を国策としてすすめてきました。その“思いこみ”のまま、国民の異論に耳を貸す必要などないという強権的な姿勢で、カジノを強引に押し通そうとしています。

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(写真)カジノ見本市で松井一郎大阪府知事(右から2人目)に大阪でのカジノ計画を説明する米カジノ大手MGM日本法人のエド・バワーズCEO(右端)=4月27日

胴元企業の金貸し許可

 安倍首相は「世界最高水準のカジノ規制」(4月27日)とのべました。▽7日間に3回、28日間に10回と“入り浸り”容認の入場回数「制限」▽1回6000円と規制の意味のない入場料―などには「何が世界最高だ」という批判が相次ぎました。

 カジノは毎日24時間営業で、天井知らずの高額の賭けを、切れ目なく繰り返します。

 その「異次元」ともいえる危険性を示したのが、カジノ業者が客に賭け金を貸す「特定資金貸付業務」です。

 カジノ客が手持ちの資金を使い果たしても、さらに賭け続けるためカジノ業者から賭博資金を借りることができるのです。負ければ借金を負ったうえ、それを取り返そうとさらに深みにはまっていく仕組みです。

 塩川氏は、多重債務問題が深刻化するなか06年に実現した貸金業法の抜本的改正で過剰貸し付けを抑えるさまざまな施策がとられているのに、これとは別枠の新たな貸し金の仕組みがつくられ「依存症者、多重債務者を生み出すことにつながる」と批判しました。

 石井啓一IR担当相は、日本人客への貸し付けは、あらかじめカジノ業者に預託金を納めた者だけが対象で「簡単に預託できる額にはせず富裕層に限定する」と、それで十分な規制がされているかのようにのべました。

 参考人質疑で新里宏二弁護士は「これまで日本では公営ギャンブル、パチンコで事業者が現場で貸し付けをすることはないし、あってはならないと考えられてきた。ギャンブル依存症に直結するからだ」とのべ、その危険性を警告しました。

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(写真)大阪市内で開かれた大規模なカジノ見本市での米カジノ大手「シーザーズ」の展示。世界各国に持つ大規模カジノを誇示して日本進出をアピールしました=4月27日

外圧で依存症対策後退

 塩川氏は、依存症対策として当初予定されていたカジノの面積上限の絶対値での規制が、米国のカジノ企業の要求が強まるなかで削除された経過を示し、「ギャンブル依存症対策よりも海外カジノ企業の要求を優先したのか」と追及しました。

 法案は、251条にわたる大部なもので、しかも350項目以上を今後の政省令やカジノ管理委員会規則に委ねており、制度の細部はまったく明らかになっていません。外圧や事業者の意向に沿って、ますますカジノのもうけばかりを優先するいっそう異形なカジノへと進む危険性もあります。

 安倍首相は塩川氏の追及に、今後「全国キャラバンを行う」という考えを示しました。

 数の力で強引にカジノ解禁を押し通した後で、いくら国民むけに都合のいいことだけアピールしてもなんの意味もありません。

 国民の声に向き合い、同法案は撤回し、カジノ解禁の是非から国民的な議論を行うべきです。


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