2018年6月4日(月)
新基地工事の環境影響
沖縄防衛局 辞職の監視委員に口封じ
「報道の取材に応じるな」
沖縄県名護市への新基地建設で、工事による環境への影響などを「監視検討」するとして沖縄防衛局が設置している環境監視等委員会を4月に辞職した委員に対し、同局担当者が報道機関からの取材に応じないよう“口封じ”と受けとられる対応をしていたことが関係者への取材で3日までに、明らかになりました。
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辞職については、4月9日に開かれた第14回環境監視等委員会の議事録に「本日をもって委員会から離れることになります」と、東清二副委員長(琉球大名誉教授)、松田裕之委員(横浜国立大大学院教授)、山崎秀雄委員(琉球大学理学部長=当時=)の氏名が記載されていました。
3氏には翌10日付で解職通知が行われました。取材に対して沖縄防衛局は辞職理由について「個人の情報でもあり答えられない」としています。
辞職した1人で、副委員長だった東氏は本紙の取材に「委員会の審議は、基地建設ありきで、環境問題での発言は聞き流される建設優先の姿勢に耐えられず3年前に辞意表明した」と説明。解職通知の際、担当者から「『報道機関からの取材には応じないでほしい。防衛局に一任してほしい』と通告された。はいそうですか、と納得できることではない」と憤ります。
沖縄防衛局は本紙の取材に「委員をやめられた方のコメントは差し控える」としながら、「委員会の議論や個別事項についての問い合わせには事務局が対応することが確認されていることを改めて伝えた」と述べ、口封じに当たる通告をしていたことを認めました。
解説
機能不全隠す思惑
沖縄防衛局が新基地建設にかかわる環境監視等委員会の委員解職をめぐって「口封じ」したことは、基地建設ありきで形だけの環境配慮だと露呈することを避けたい政府・防衛局のこりない姿勢の表れです。
解職された東清二副委員長は昆虫の分野では沖縄県内外で著名な専門家。すでに3年前の2015年3月に「基地優先のお墨付きの場であり意味がない」と辞意を伝えていました。しかし同局は「出席できなくてもよい。年度末まで(委員名簿に)名前だけでも載せてほしい」として、東氏の辞職表明を3年間、放置してきました。
そこには、前知事の埋め立て承認の際、留意事項として環境対策を監視検討する場として委員会が設置された経緯があります。「地元重視」を示すために沖縄の専門家が副委員長として名を連ねる必要があったからです。
同委員会をめぐっては議事録の改ざん、同委員会の受託業者からの委員への「寄付金」問題、環境軽視の工事強行など「やりたい放題」(環境団体関係者)です。監視検討機関としての機能不全ぶりをこれ以上、ニュースにされたくない思惑が口封じにつながったとの指摘があります。
米国でのジュゴン訴訟にかかわる、ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹氏はこう整理します。「辞職理由についてさえ口封じする防衛局の態度は無視できない。前知事の留意事項で設置された委員会の機能不全は、翁長知事の埋め立て承認『撤回』の重要な要件になる」。重い指摘です。(山本眞直)