2018年6月2日(土)
密告型「司法取引」始まる
情報提供者に見返り、えん罪増も
容疑者や被告が他人の犯罪に関わる情報を検察官に供述すれば、不起訴や軽い求刑などの見返りを得られる日本版密告型「司法取引」が1日から始まりました。見返り目当ての虚偽供述で無関係の人が巻き込まれる懸念が出ています。
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密告型「司法取引」は自分の犯罪行為についての供述ではなく、他人の犯罪につながる情報に見返りを与える点が特徴です。
詐欺や脱税、談合などの経済事件や薬物銃器犯罪が対象となっています。検察官が許可すれば、警察官も取引に関与できます。虚偽供述や偽造証拠の提出には5年以下の懲役が科されます。
取引する場合、検察官は弁護人が関与する中で、容疑者と協議します。捜査協力と見返りの内容で双方が合意すれば成立します。取引をした事実を公表する義務はありません。
日本では、警察による“利益誘導”によるウソの供述で多くのえん罪が生まれています。松川事件(1949年)では、別の暴行事件で逮捕された人物がウソの供述をして、無実の人々が列車転覆事故の“犯人”に仕立てあげられました。北九州市で起きた「引野口事件」(2004年)では、留置所で同房だった女性が「犯行告白を聞いた」とウソの証言で警察に協力していました。
密告型「司法取引」と同時に、「刑事免責制度」も導入されました。裁判所が証人に対し、罪に問われかねない発言をしても免責することを約束した上で証言を強いることができる制度です。密告型「司法取引」を盛り込んだ改悪刑事訴訟法は、盗聴の対象拡大などと共に2016年に成立しました。