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2018年6月1日(金)

カジノ法案 参考人質疑の意見陳述

 衆院内閣委員会で31日に行われたカジノ実施法案についての参考人質疑での、静岡大学の鳥畑与一教授と、日弁連カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループの新里宏二座長による意見陳述(要旨)は次の通りです。

依存症対策が形骸化

静岡大学 鳥畑与一教授

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(写真)意見陳述する鳥畑与一氏=31日、衆院内閣委

 IR(統合型リゾート)型カジノは、日本経済の発展、地域社会の安定と振興に逆行します。

 政府は、カジノ単独では刑法の賭博禁止の違法性を阻却できないが、IRのなかに組み込んだカジノは違法性を阻却できるとしています。

 その論拠は、カジノの高収益で世界最高水準の国際会議場、展示施設や宿泊施設等を備えたMICE(マイス)が実現し、観光振興や巨大な雇用と税収の実現などの経済効果が生まれるというものです。

 カジノの収益性の水準がIR型カジノの経済効果を左右する仕組みで、不可避的に「世界最高水準の依存症対策」とは矛盾します。

 今国会でも巨大なMICE施設が国民負担なしに実現するとの説明がされていますが、ギャンブルの負けという国民犠牲のうえに民間の投資が回収されるというのが実態ではないでしょうか。

 経済効果をカジノの高収益性に依存するIR型カジノは必然的に依存症対策を形骸化せざるをえません。

 入場料徴収は、入場料も含めた負け額を取り戻せると信じる依存症者の行動を促進することはあれ、抑制することはありません。

 週3回・月10回という入場回数制限は、72時間連続カジノづけを容認することであり、年間120回の入場を認めるということです。

 世界最高水準のカジノ規制というならば、欧州におけるギャンブル継続時間や賭け金額の制限、事前に賭け金額を決定させるなどの規制を導入するべきです。

 今回の法案は、公設・公営・公益のギャンブルのみ認めるというこれまでの方針を百八十度転換させるものです。カジノ事業者の私益を追求しながらその利益の一部が納付金や寄付等で社会還元されることをもって、カジノ事業者の利潤極大化行動を公益性で粉飾することはできません。

 今この段階での経済効果と社会的コストの評価をすべきです。

 IR型カジノがなくても国際観光客が増大しているいま、そもそもカジノ合法化がIRにとって不可欠なのかという根本にたちかえった議論が必要です。

国民の理解得られず

日弁連カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ 新里宏二座長

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(写真)意見陳述する新里宏二氏=31日、衆院内閣委

 日本弁護士連合会では2014年5月、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律、いわゆるカジノ解禁推進法に反対する意見書を発表しています。

 カジノ解禁には暴力団対策上の問題、マネーロンダリング対策上の問題、ギャンブル依存症の拡大、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響など多数の弊害があることを理由にしており、一貫してカジノ解禁に反対です。

 本法案(カジノ実施法案)に反対の立場から四点について意見を述べます。

 第一は国民的議論がつくされていないことです。政府の推進会議のとりまとめについて昨年8月、一般からの意見募集が行われましたが、カジノ解禁に反対が67・1%にのぼるなど、これまでの世論調査とほぼ同様の結果があらわれたといってよいと考えます。

 第二にカジノ解禁について負の影響の検討が不十分な点でございます。推進会議や本法案でも経済効果や地方への波及効果は述べられておられますけど、負の影響についての記載がなされておりません。したがって、経済効果から負の影響を差し引いて真に経済的効果が期待されるかは定かではないといえます。

 第三にカジノについて「世界最高水準の規制とはいえない」ことです。

 第四に、カジノ解禁について違法性の阻却ができるとは考えられないことです。

 本法案の85条以下で、特定資金貸付業務として、カジノ事業者に貸し付けの業務を認めております。

 これまで日本の公営ギャンブル、パチンコで、事業者が現場で貸付することはあってはならないと考えられてきました。ギャンブル依存症に直結するからにほかなりません。この部分が、これまでの公営ギャンブルの違法性阻却との関係で大きく逸脱していると考えます。国民の理解を得られないカジノ実施法案には反対させていただきます。


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