2018年5月15日(火)
人間らしい労働へ連帯
雇用安定・反差別など訴え
ドイツ労働総同盟 大会始まる
【ベルリン=伊藤寿庸】ドイツ労働総同盟(DGB)の4年ぶりの定期全国大会が13日、ベルリンで5日間の日程で開幕しました。八つの単産から400人の代議員が参加し、世界各地の労組や国際・地域労組連合の代表が来賓として出席しています。
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今年に入り金属労組、統一産業サービス労組(ベルディ)の公共サービス労働者などがストライキを通じて賃上げや労働条件改善を含む労働協約を勝ち取りました。他方で、労働協約が適用されない労働者が広がり、短期雇用などの低賃金で働く人々が増加。DGBの組織人員は2017年に初めて600万人を割りこみました(20年前の1997年は862万人)。社会格差を背景に、人種差別的な極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)やAfD系の労働者組織の伸長にも直面しています。
DGBのホフマン議長は、「人間らしい賃金と労働条件」を勝ち取ったたたかいをたたえつつ、労働協約と労働者の経営参加権を維持、拡大していく重要性を強調。人間らしい労働を守り、不安定雇用をなくしていくことや、教育・職業訓練の充実、安価な住宅の供給、差別に反対する連帯を強めていくことを訴えました。
また他の幹部は、▽使用者側は労働時間法を改悪して1日8時間以上働かせようとしているが、絶対に許さない▽最低賃金以下の労働者が160万人もおり、国がこうした働き方を取り締まらなければならない▽東欧出身の労働者を使った賃金ダンピングが、食肉、輸送、物流、介護、造船など各産業に広がっている▽大学や研究所での有期雇用が横行しており、根拠となっている法律を廃止すべき―などとさまざまな提起を行いました。
社民党が、メルケル首相与党の中道右派政党との間で「大連立」政権を継続したことについて、ホフマン議長は、労働者の要求を連立協定に盛り込むことができたとして高く評価しました。
これには、「社民党の再生につながるのか疑問だ。(2005年導入の労働市場改革)ハルツIVは間違っていたと認めるべきだ」「東独部の格差問題に触れておらず、連立協定には賛成できない」など異論が相次ぎました。
運動で国民生活改善
独大統領、労組の役割を評価
【ベルリン=伊藤寿庸】ドイツのシュタインマイヤー大統領は13日、ドイツ労働総同盟(DGB)の大会であいさつし、「労働運動がわが国の国民の生活を改善してきた」と指摘し、労働時間短縮、公正な賃金、経営参加、労働協約、ストライキ権などの成果を列挙しました。
また欧州各地や米国の選挙での民族主義、ポピュリズム(大衆迎合主義)の伸長に触れて、「権威主義への新たな魅了が広がっている」が「今こそわれわれの価値を守るべき時だ」と訴えました。そして「民主主義が圧迫されたときにはいつも、労働組合が常にそれに抗してきた」と右翼ポピュリズムに抵抗する労組の役割に期待を表明しました。