2018年5月8日(火)
国連核兵器禁止条約の順守を宣言 タコマパーク市議会
全米初 決議を採択
自治体レベルから支持の声広げる
米東部メリーランド州タコマパーク市議会は3月、核兵器禁止条約の順守を宣言する決議案を全会一致で採択しました。昨年7月に同条約が国連で採択されて以来、市がこうした決議をあげるのは全米で初めて。市民からは、1980年代に各地の地方自治体に広がった反核運動の再構築に向けた「重要な一歩」と歓迎の声があがっています。(タコマパーク=池田晋 写真も)
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タコマパーク市は、首都ワシントンの中心部から地下鉄で約20分の郊外にある、人口約1万7千人の街。決議は、禁止条約に対してだけでなく、条約の履行を加速させるため、国際NGOの連合体「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の活動にも支持を表明するものです。
なぜ同市が全米初の条約順守都市になったのか―。
「決議は、世界の存続のために核兵器は違法化されるべきだとの、市の政策と信念と合致するもの」。こう話すのは、市の助言機関のタコマパーク非核委員会の一員であり、反核平和団体「ビヨンド・ニュークリア」の一員でもあるポール・ガンターさんです。
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市は83年に制定した条例で非核地帯宣言を行い、核兵器製造に関わる企業の市内での商取引、市の契約への入札などを禁止。そのため、同市は以前から条約が目指す事実上の“核兵器禁止地帯”となっていました。
市は条約の「順守」を改めて宣言することで、トランプ政権が核戦力強化を進める中、自治体レベルから条約支持の声を広げていく決意を示しました。
「政府が(核軍拡という)反対の方向に向かう中、国民が意思を示すためには、民主主義が重要な役割を果たすと市が認識した結果だ」。ガンターさんは採択に胸を張ります。
移民にも寛容
投票権は16歳から、移民にも寛容、市民と当局が協力してリベラルな気風を長年守ってきた同市。欧米で反核運動が高まった80年代当時も、全米でいち早く非核地帯宣言を行った都市の一つです。
条約推進キャンペーンを進める「ニュークリア・バンUS」のまとめによると、米国内で現在、非核地帯宣言の存在が確認される地方自治体・先住民部族は少なくとも計217にのぼり、そこでは2000万人以上が暮らしています。
「この決議は、80年代以来の全米規模の運動を復活させるため、とても大事な一歩だ」。ガンターさんらは、同様の決議を他の自治体にも広げようと、他の市民団体との連携も進めています。
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完全非核化へ
タコマパーク市自身の“非核化”も、今回の決議で完結したわけではありません。
核兵器関連産業が根付く米社会にとって、関係の完全断絶は容易なことではなく、同市の非核委員会は核関連企業への融資が報告されているサントラスト銀行からの市の資産の撤退について数年をかけて慎重に議論を進めてきました。
決議が採択された3月14日の市議会で、スチュアート市長は“完全非核化”に向け次の課題に言及する一方、「一言感謝を伝えたい」と祝福と完全非核化への後押しに駆け付けた市民らをねぎらいました。