しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年4月22日(日)

日米首脳会談・北朝鮮問題

BSフジ番組「プライムニュース」 志位委員長、大いに語る

 日本共産党の志位和夫委員長は20日放送のBSフジ番組「プライムニュース」に出演し、18~19日(日本時間)に行われた日米首脳会談の評価、北朝鮮問題解決に向けて日本共産党が行った6カ国への要請、当面する国会対応、野党共闘の展望などについて語りました。このなかで、日米首脳会談と北朝鮮問題について発言した部分を紹介します。聞き手は、フジテレビの松山俊行解説委員、生野陽子アナウンサー。

日米首脳会談

トランプ発言に注目、非核化と戦争終結が議題へ

 生野 志位さんは、今回のトランプ大統領と安倍総理の会談をどうごらんになりましたか。

 志位 私が最大の注目点だと思って聞いたのは、トランプ大統領が日米首脳会談の冒頭の発言で、「いま北朝鮮と韓国が首脳会談をやろうとしている。そこで朝鮮戦争の終結について議題にしようとしている。自分はそれに賛成だ。大いに支持する」といったんですね。

 松山 (日米首脳会談のポイントを書いたフリップを示し)このトランプ大統領の発言ですね。「戦争を終わらせるために韓国と北朝鮮は会談する予定がある。私はそれに賛成だ。人々は戦争が終わっていないことをわかっていない。いまも進行中だ」という発言ですね。

 志位 これは初めての発言ですね。これから行われる南北首脳会談、そして米朝首脳会談での議題が、朝鮮半島の非核化ということだけでなく、今の戦争状態を終結させるという、平和体制をつくっていこうという、この両方が議題になってくることを明らかにした点で、非常に大事な発言だと思います。

 松山 トランプ大統領本人が今度の米朝首脳会談で、いわゆる朝鮮戦争の終結、休戦協定から平和協定に変えるという方向性までを出そうとしている思惑の表れと受け止められるでしょうか。

 志位 私はそう受け取りました。非核化と戦争終結=平和体制をセットでやろうとしているという意思表示だと思います。これ自体は理にかなっていると思います。ぜひ今後の首脳会談が成功することを強く願いたいと思います。

安倍政権

主体的・能動的な対北朝鮮の外交戦略がない    

 松山 日本政府のいまの立場では、北朝鮮の非核化が完全に進まない限りは、具体的に行動に起こさない限りでは、そういった合意に一足飛びに行くのは慎重な姿勢を示していますが。

 志位 私が(日米首脳会談で)もう一つ感じたのは、日米(両政府)の落差なんですよ。

 トランプ大統領の方は、圧力と対話の両方が常に視野に入って、幅をもった対応をやってきたわけですね。“いまは対話の時だ”と対話をはっきり選択したわけです。

 それに対して安倍首相の方は、対話を否定して圧力一辺倒できた。“いまは対話はすべきではない”“対話のための対話はやるべきではない”“北が非核化の行動をとるまでは対話をしてはいけない”ときたわけです。ところがこれが(現実と)合わなくなっちゃった。破たん状態になっているわけですね。トランプ大統領が、“いまは対話のときだ”と始めちゃったわけですから。

 こうなったらトランプ大統領に対して、“いやいや、やめなさい”というわけにはいかないから、(安倍首相は)「大英断だ」と言っていますけれども、それに追随して対話を認める形になったわけだけれども、ただ日本政府として対北朝鮮でどういう外交戦略をもって今後のぞむのかというのは、首脳会談全体をみてもまったくありませんね。外交戦略がない。これまで「対話否定」論できたために、日本政府の側は外交戦略がない。これが大きな問題点だと思っております。

 松山 日本以外の当事国はもうすでに対話の方向に動いてしまっていると。日本だけは対話を否定してきたので、それに取り残されているという意見ですか。

 志位 トランプ大統領が対話にいくのは批判はできない。だから「大英断」というけれど、日本がどうするかという、主体的・能動的な外交戦略がない状態ですね。これは大きな問題だと思います。

拉致問題

諸懸案の包括的解決の中に位置づけ解決をはかることが一番の王道      

 松山 それと、今回の首脳会談でかなり早い段階で、トランプ大統領から日本の拉致問題を今度の米朝首脳会談で提起をするということを明言していましたけれども、このこと自体はどう評価されていますか。

 志位 これはいいことだと思います。ただ同時に言いたいのは、これは「アメリカまかせ」では絶対に解決しない問題です。日朝が交渉をやらないと解決しない。

 この点で、日米首脳会談が終わった後の共同記者会見で、安倍首相が日朝平壌宣言に言及して、“日朝平壌宣言に基づいて、核・ミサイル、拉致、過去の清算など諸懸案を包括的に解決して国交正常化を目指す”と言いましたね。これは大事な点なんですね。

 拉致問題をいま解決しようと思ったら、一つ大きなチャンスだと思うんですが、いま起こっている非核化の動き、そのための対話の流れのなかに拉致の問題も位置づけて、諸懸案の包括的解決の中に位置づけて解決をはかっていくのが一番の王道だと思います。

首相との党首会談

提案に対する異論、反論はなかった

 生野 先日9日に志位さんは安倍総理と会談されていますけれども、どういった話をされているんでしょうか。

 志位 私たち共産党として、いま対話による解決(の動き)が起こっていると。これをどう実らせるかという点でいくつかの提言をいたしました。簡単にいいますと、非核化と地域の平和体制の確立を一体的に、そして段階的にやってほしいと。そういう立場で交渉してほしいと関係6カ国に要請いたしました。

 松山 (要請文の内容をまとめたフリップを掲げて)(1)朝鮮半島の非核化と、北東アジア地域の平和体制の構築を一体的・包括的に進める(2)合意できる措置を話し合って一つずつ段階的に実施して目標に近づいていく―段階的アプローチが現実的だということですね。

 志位 そうです。その2点を安倍首相にも提起しました。

 松山 安倍首相は、この提案に対してはどう話されたんですか。

 志位 党首会談の中で(首相から)最初に出てきた言葉は、「対話による外交的解決が基本です」といわれた。直前の参院決算委員会の中では「対話のための対話は意味がない」とおっしゃっていたので、そうおっしゃるのかなと思ったら、それはおっしゃらなかった。わが党の提案については、「しっかり検討いたします」という発言で、異論、反論はいっさいありませんでした。

「朝鮮半島の非核化」とは

南北の非核化宣言、6カ国協議の共同声明で規定

 松山 ほう、そうですか。朝鮮半島の非核化というときに、よく問題になるのが、日本政府の公式の立場としては北朝鮮に対してはあくまで北朝鮮の非核化を求めていくと。それで核の完全放棄を求めていくことだったんですが、朝鮮半島の非核化といった場合、たとえば北朝鮮とか中国なんかが使う場合は、朝鮮半島全体の非核化というニュアンスで使うことがある。そうなると、在韓米軍の撤収とかも視野に含まれてくると思うんですが、これは(要請文で言われているのは)どちらの意味ですか? 

 志位 これは朝鮮半島全体の非核化なんですね。その中心はいうまでもなく、北朝鮮の核放棄――完全かつ検証可能で不可逆的な核放棄を求めることが中心です。同時に、朝鮮半島全体を核のない地域にしようと(いうことです)。

 これは過去、繰り返し合意になっていることなんですよ。その出発点は、1992年の南北が共同で宣言した朝鮮半島非核化宣言です。これは南も北もいっさい核のない地域にするというものです。それから2005年9月19日の6カ国協議の共同声明でも、朝鮮半島の非核化が宣言されています。

 生野 そうですね。(共同声明の内容を記したフリップを掲げて)この共同声明は2005年に採択されました。「北朝鮮がすべての核兵器、既存の核計画を放棄」「アメリカは朝鮮半島において核兵器を有しない」「韓国はその領内に核兵器を有しないことを確認」となっていますが、2006年の10月に北朝鮮が1回目の核実験を行ったことで破られてしまいました。

 志位 共同声明の第1項にこの三つの要素が入っているんですね。まず北朝鮮がすべての核兵器を放棄すると。同時にアメリカは韓国に核兵器を持ち込まないし、韓国も持ち込ませないということがセットで合意になっているんですね。これを朝鮮半島の非核化と国際社会はずっと規定づけてきた。

 今度の日米首脳会談(終了後の共同記者会見)でも、トランプ大統領が「自分は金正恩(キム・ジョンウン)とこれから協議をする。そこで朝鮮半島の非核化を目指す」という言葉をはっきり使っているんです。

 松山 トランプ大統領にしては珍しい。

 志位 はっきり言いました。ですから、(目標は)朝鮮半島の非核化ということだと思うんですね。朝鮮半島の非核化というのは、在韓米軍の撤収とかそういうことではないんですよ。核を持ち込まないということなんですね。在韓米軍を撤収しろとかなんとかという要求をいま持ちだしたら話が進みません。あくまで非核化ということです。

 生野 核においてだけということですね。

 志位 そうです。

6カ国協議

3、4の国でスタートしても、6カ国が最良の枠組み

 松山 志位さんがおっしゃっている、共産党として安倍首相にも要請したという要請文ですが、これはほかの関係国にも同様の提案をされているんですか。

 志位 これは6カ国全体に同じ文面で、要請いたしました。6カ国協議に参加している米国、韓国、中国、北朝鮮、日本、ロシアの6カ国に同じ文面で要請いたしました。

 松山 それは6カ国協議の枠組みをもう一度、ちゃんと維持してそこで協議していくことも重要だということですか。

 志位 最後はそこに行きつくべきだと思います。それは国連安保理決議も求めていることでもありますし、一番安定してことが進むのが6カ国協議だと、これが最良の枠組みだと(思います)。

 ただ、起こっている動きからしますと、南北あり、米朝あり、この三つの国でまずスタートして、四つぐらいになって、そこいらへんでまずスタートすることはあるでしょうけれども、しかし6カ国で保証していくようにしないと安定的に進まないと(思います)。

「約束対約束、行動対行動」の原則で、段階的に一歩一歩進む

 生野 一度失敗してしまったアプローチだと思うんですけれども、どうやればうまくいくんでしょうか。

 志位 きちんと歴史を検証する必要があると思うんですね。1回目の核実験ということを言われましたが、2005年9月にこういう合意をしながら北朝鮮がそれを破った。破った一番の基本的な要因が、北朝鮮の側にあることは明瞭です。

 ただ、もう一つ見なければならないのは、アメリカの側にはいっさい問題がなかったかというと、問題があったんですね。(05年)9月に共同声明が結ばれた直後に、米国の財務省が北朝鮮の金融口座を閉鎖しちゃうということをやりまして……。

 松山 金融制裁ですね。

 志位 そうです。「バンコ・デルタ・アジア」(マカオの銀行)の口座が閉鎖された。それに北朝鮮がたいへん怒って是正を求めて、しかしなかなか折り合わなくてミサイル実験と核実験にいってしまったという流れがあるんですよ。

 もう一つの原則の「段階的アプローチ」も2005年9月の共同声明に入っているんですね。「『約束対約束、行動対行動』の原則で、段階的に一歩一歩進もう」というのが国際合意になっているんですけれども、これをしっかり守っていくということが一番大事な教訓だと思いますね。

 松山 この部分でちょっと気になったのは、中朝首脳会談で出たとされる発言内容ですけれども、金正恩委員長が「アメリカと韓国がわれわれの努力に善意でこたえて、平和実現に向けて段階的で歩調を合わせた措置をとるなら半島の非核化は実現できる」と。「段階的、同時的アプローチ」と言われていますけれども、これとかなり似通ったものですか。

 志位 北朝鮮の立場と言うより、6カ国で合意した立場なんですよ。2005年9月の共同声明の第5項に、「約束対約束、行動対行動で段階的に進む」というのは全部の国が合意しているんです。アメリカも日本も。ですから私がこの提言を出した時に、安倍首相の方からも異論はなかったですよ。どの国も、六つの国が全部段階的なアプローチに合意して、その後、破棄もしていない。異論をいっている国も一つもありません。

 なぜこれを言うかといいますと、非核化と平和体制を一体にやると。これを大きな目標として合意する。非核化というのは朝鮮半島の非核化。平和体制というのは米朝、南北、日朝の関係改善と国交正常化です。これを一体にやることが一番大事な目標だということを合意したとしても、実行するのは大変です。どうしてかというと相互不信が強い。

 松山 検証のプロセスが必要となってくる。

 志位 いろんなプロセスが必要です。実行するのは、相互不信が強いもとで、お互いに信じられないわけですよ。信じられない者同士が、ちゃんと事をなそうと思ったら、まず合意したところで一歩一歩進んで、信頼醸成をはかりながら進む以外にない。これがやはり一番合理的なんですね。

どんな困難があっても交渉を続けて先に進む――これが歴史の教訓

 松山 最近までの日本政府の姿勢としては、6カ国協議の失敗、教訓をもとに「行動対行動」といって時間稼ぎに使われてしまったという反省もあると思うんですけれども。北朝鮮の主張にかなり近いのかな、日本の政府のスタンスとかなり違うなと思うんですけれども。

 志位 先ほど言ったように、(「行動対行動」という原則は)北朝鮮というより、6カ国の合意だと。今もそれを否定する国は6カ国ではありません。日本も否定はしていない。さっきも言ったように、相互に不信がある中で進もうと思ったら、これが唯一の一番合理的な方法ではないかと(思います)。

 それともう一つ言いたいのは、(交渉が)時間稼ぎに使われるという話がよくあります。しかし、レオン・シーガル氏という、94年の米朝「枠組み合意」の時のアメリカ側の交渉者だった方が最近、「(米朝の)核交渉の25年」という論文を書いているんですよ。これを読むと大変面白いんですが、“交渉をしている間は、核・ミサイル開発はとまった、交渉を続けなかったのが失敗の原因だ、ずっと交渉を継続しないといけなかった”といっているんですね。これは大変大事なところで、確かに交渉しているときは(核・ミサイル開発は)とまるんですよ。一番進んだのは、オバマ政権の第2期なんです。

 松山 「戦略的忍耐」といっていたころですね。

 志位 その通りです。6カ国協議の共同声明が結ばれるのが2005年9月でしょ。その後、いろんなぎくしゃくがありながら、12年2月29日に「閏(うるう)日合意」という米朝合意があるんです。このときまでは交渉をやっていたんですね。

 ところが、それが破られたといってオバマ政権が一切これからは「戦略的忍耐」ということで、「北朝鮮が非核化の行動をしなければ交渉しませんよ」という「交渉否定論」をとってしまった。12年から16年までの5年間に、核・ミサイル開発がどーんと進んでしまった。ここは大事な教訓だと思うんですよ。

 私は、南北、米朝の首脳会談で一定の合意を見る可能性は大いにあると思うけど、その後が大事だと思うんですね。交渉を続けるということが大切です。交渉を続けて、非核化と地域の平和体制の確立までやりとげる。交渉をあきらめたりしない。どんな困難があっても交渉を続けて先に進む――これが歴史の教訓だと思います。

 松山 まずは米朝首脳会談の結果をみて、ということですね。

 志位 そうですね。


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