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2018年3月26日(月)

海自おおすみ 衝突前「やばい」

音声記録解析で確認 原告弁護団

 2014年1月15日、広島沖で釣り船「とびうお」(5トン未満)に衝突し沈没させ、船長ら3人を死傷させた海上自衛隊の大型輸送艦「おおすみ」(基準排水量8900トン)。遺族らによる損害賠償請求訴訟で、艦長、当直士官らのやり取りを録音した艦橋音声記録をめぐって、早い段階から衝突の危険性を認識していたと思える「やばい」という発言を被告の国(海自)側は「確認できない」としています。原告弁護団の依頼で解析・鑑定した音響専門家が、発言音声を再生、独自の周波数解析などを駆使し、発言の存在を判定したことが25日、関係者への取材で分かりました。

 鑑定したのは、大手レコード会社で音響技術の研究開発に携わり、航空機事故のボイスレコーダー解析、国内外の重要犯罪事件などでの音声分析・鑑定の実績をもつ日本女子大学客員研究員の村岡輝雄氏(工学博士)。

 問題の発言は三つあり、海自が提出した“海のボイスレコーダー”、簡易型艦橋等情報記録装置に記録された音声を、弁護団が文字起こしによる解析で確認しました。

 一つは衝突直前の2014年1月15日午前7時57分40秒に記録されている「やばい」。二つは同7時59分06秒の「(衝突は)避けられん」で、三つは同7時59分30秒に再び発せられた「やばい」です。

 「おおすみ」が「初めて衝突の危険を感じた」(海自事故報告書)時間が、衝突直前の午前7時59分38秒とされています。

 分析結果について弁護団は「おおすみ艦橋では、衝突の2分20秒前の57分40秒には釣り船(とびうお)との接近模様から“やばい”(危険)状況にあったことを認めていたことが分かる。衝突は、とびうおが海自艦へ向かって右転したとする右転原因説の誤りが立証された」と指摘しています。

 簡易型艦橋等記録装置は、千葉県房総沖で漁船に衝突、沈没させ船長親子が死亡した海自のイージス艦「あたご」事件(2008年2月19日)をきっかけに義務付けられました。

 原告側は27日の口頭弁論で判定結果を示し、被告の衝突責任を追及します。(山本眞直)


法廷で追及する

 原告弁護団の田川俊一弁護士の話 あたご事件の刑事裁判では、漁船の船長親子が犠牲となり“死人に口なし”とばかりに自衛隊が描く漁船に責任を押し付ける(漁船の)「突然の右転」という航跡図がつくられた。艦橋でのやりとりは記録装置がなく自衛隊は無罪となり、逆に被害者の漁船側に過失責任が負わされた。海難審判では「あたご」側に衝突回避義務があったと認められた。今回も海自は釣り船の「右転」を主張しているが、この艦橋音声記録を弁護団が解析、さらに音響専門家による解析と分析で危険の認識を示す「やばい」「避けられん」発言の存在を明らかにできた。海自側の釣り船の「右転が衝突の原因」説の誤りを法廷で追及したい。


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