2018年3月10日(土)
主張
米朝首脳が会談へ
非核化と平和構築につなげよ
米国のトランプ大統領は8日(日本時間9日)、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の要請を受け5月までに会談する意向を表明しました。訪米した韓国大統領の特使から、金委員長が非核化の姿勢と核・ミサイル実験の自制を示していると説明を受けての決断です。恒久的な非核化をめざすといいます。4月末の開催で合意している南北首脳会談に続く大きな動きであり、北朝鮮の核・ミサイル問題の解決はもちろん、朝鮮半島の平和体制、北東アジアの安定に向かう転機とするため、関係国と国際社会が取り組みを強める時です。
問題解決すすめる可能性
米朝間では、2000年10月に当時のオルブライト国務長官が訪朝し、金正日(キムジョンイル)委員長と会談したのが最高レベルの対話で、首脳会談が実現すれば史上初めてです。北朝鮮が核兵器と長距離ミサイルを開発・保有している今、以前より困難とはいえ、朝鮮戦争の「休戦」から65年間対立してきた両国による首脳会談は、問題解決への動きを促進する可能性をもちます。
6カ国(米国、北朝鮮、韓国、中国、日本、ロシア)協議の05年の共同声明では、北朝鮮が核開発を放棄する一方、米国は北朝鮮を攻撃・侵略する意図がないことを確認し、両国が相互の主権を尊重し平和共存し国交正常化の措置をとると約束しています。声明ではさらに、朝鮮半島の恒久的な平和体制に関する協議、北東アジア地域の安全保障での協力を探ることでも一致しています。この共同声明の合意に米朝が立ち戻り前進をつくれるかがカギとなります。
そのことは国連安全保障理事会の決議も繰り返し求めてきました。昨年12月に全会一致で採択された決議2397は、同年11月の北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難、経済制裁の強化を決める一方で、6カ国協議と05年の共同声明への支持を表明し、「対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にする」各国の取り組みを呼び掛けました。
日本共産党は、北朝鮮の核・ミサイル開発を厳しく糾弾するとともに、国際社会が一致結束し、中国、ロシアを含め経済制裁を強化することと一体に「対話による平和解決」をはかることが唯一の解決策だと強調してきました。米朝の対立激化の中で、万一、偶発・誤算による軍事衝突が、核戦争にまで発展する事態となれば、おびただしい犠牲は避けられません。昨年8月には危機打開のため米朝が直接対話に踏み出すことを提唱、日本政府と関係国にその努力を要請してきました。
南北朝鮮、そして米朝の首脳会談に向かう今の動きは、破滅をもたらす戦争を絶対に回避し、軍事対軍事のエスカレートではなく、紛争の平和解決を求める国際的な世論と外交の中で生まれたものにほかなりません。
日本は対話成功に力を
日本と北朝鮮は、核・ミサイル、拉致、過去の植民地支配の清算などの懸案を包括的に解決し、国交正常化をめざすとした「日朝平壌宣言」を02年に首脳間で結んでいます。4月に訪米するという安倍晋三首相は、米国の先制攻撃を含む「全ての選択肢」を支持し対話に消極的な姿勢を改めるべきです。6カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言の当事者としての立場も生かし、米朝対話の動きを促進し、成功させる外交こそ求められます。