2018年2月20日(火)
主張
首相が言う「国の形」
侵略戦争の反省が欠落の危険
憲法9条に自衛隊を書き込むなどの改憲の動きを加速させている安倍晋三首相が、憲法は「国の形、理想の姿を示す」ものだと繰り返しています。狙いは何か。首相の改憲発言は閣僚などの憲法尊重擁護義務を踏みにじるもので、そのうえ特定の「国の形」を国民に押し付けるというのは、立憲主義破壊の極みです。自民党は以前の改憲案で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」という前文の削除を掲げていました。今回の検討項目には挙げていませんが、侵略戦争の反省は憲法の出発点であり、前文を含めその空洞化を狙うなら重大です。
平和主義こそ国の針路
日本がアジア・太平洋戦争に敗れた翌1946年に制定された憲法は、日本の侵略戦争での310万人以上の日本国民、2000万人以上のアジアの人々の犠牲の上につくられました。憲法前文の「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が…」という言葉には、侵略戦争への反省が込められています。国民主権と、戦争の放棄・戦力の不保持・交戦権否認の平和主義、基本的人権の尊重などは文字通り憲法が示す基本方向そのものです。
自民党がかつて2005年に作成した「新憲法草案」や安倍首相が政権に復帰する直前の12年に作成した「日本国憲法改正草案」は、いずれも憲法前文を書き換え、侵略戦争への反省などを削除していました。それは消えていません。
安倍首相が昨年5月から公然と言い始めた改憲では、憲法9条に自衛隊を書き込むことや緊急事態条項の創設など4項目に絞り、前文には触れていません。しかし首相がしきりと「国の形」や「理想の姿」を強調する背景には、侵略戦争への反省などを消し去ってしまいたいという思いが込められているといわざるを得ません。
実際、安倍首相は今年の自民党の仕事始めのあいさつで、「占領時代につくられた憲法をはじめ、さまざまな仕組みを安定した政治基盤の中で変えていく」と、改憲派の持論である「押し付け」憲法論に立った改憲を主張しています。安倍首相が日本の侵略戦争を肯定・美化する「靖国」派の代表格であることは明らかです。極め付きの右派団体「日本会議」が、首相と一体で改憲を推進していることもその危険性を示しています。首相がいくら改憲で「国民主権や基本的人権の尊重、平和主義の基本理念は今後も変わらない」と言っても、その言葉通り信じることはとてもできません。
安倍首相は戦後70年の談話などで「侵略戦争」や「植民地支配」といった言葉の使用を避けようとしてきました。政権復帰後に出し直した著書『新しい国へ』では、日本が戦力を持たず、憲法前文で「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」していることについても、「へりくだった、いじましい文言」などと非難しています。侵略戦争の反省を認めたくない態度には、根深いものがあります。
まさに戦争する国づくり
憲法9条に自衛隊を書き込むこと自体、安保法制=戦争法を超えて、海外での無制限の武力行使への道を開くものです。そんな改憲が侵略戦争への反省を欠落させた首相の下で行われれば、それこそ日本は一気に「戦争する国」に逆戻りです。絶対に許されません。