2018年2月19日(月)
東京五輪選手村9割引き 都有地売却なぜできた
建設コンサル使い都が当初から検討
開発企業のもうけを優先
本紙が文書入手
東京都が2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の選手村整備の名目で、中央区晴海の都有地を近隣地価の9割引きの格安価格で開発業者に売却したことが大問題になっています。土地を売却する際に必要とされる財産価格審議会での了承を回避するなど、都が建設コンサルタント会社の報告書をもとに、市街地再開発事業の手法を導入したからくりと経過が、本紙の取材で明らかになりました。(岡部裕三)
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選手村用地(約13・4ヘクタール)は、東京駅から直線で約3・5キロの至近距離にある都心の一等地です。小池百合子都知事は16年12月、五輪選手村整備の名目で、東京ドーム2・9個分の都有地を三井不動産、住友不動産、三菱地所レジデンス、東急不動産、野村不動産など11社グループに129億6000万円で売却する契約を結びました。1平方メートル当たり9万6784円で、近隣の基準地価の10分の1以下です。
本紙は都に情報開示請求を行い、建設コンサルタント会社のパシフィックコンサルタンツ(東京都)に委託した「選手村開発方針検討支援業務報告書」(13年9月)を入手しました。
報告書は、民間事業者を活用して選手村整備に当たって七つの事業手法を、民間事業者や都側の視点からの評価を含めて比較検討。第一種市街地再開発事業が最適だと結論づけました。また平均容積率を350%とし、土地の譲渡価格を110億円と試算しました。
市街地再開発事業は、東京都が唯一の地権者であり、かつ個人施行者であると同時に、事業の認可権者である都が認可するという一人三役の手法です。
報告書では、土地の代金支払いと所有権移転の時期を東京五輪大会後に先延ばし(実際は22~23年度)にでき、金利負担が軽減され、固定資産税の課税期間が短縮できるなど、開発企業に最も有利な手法と評価しました。
その一方、報告書は通常の土地譲渡や定期借地権方式などは低く評価しています。都の意見を反映した「都の視点からの評価」では、土地譲渡方式は「都の財産価格審議会に基づく価格設定を行う必要がある」ことをデメリットとし、格安処分が難しいことを示唆していました。
都は14年、報告書をもとに選手村整備を市街地再開発の手法で行う方針を決定。都オリンピック・パラリンピック準備局は本紙の取材に対し、報告書を受けた13年9月に秋山俊行副知事(当時)に説明、14年2月に舛添要一知事(同)に報告して了承を得た際、「報告書もひとつの素材として、知事への説明資料をつくった」と説明しています。
土地評価行う審議会逃れ ひどい
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東京都が早い段階から、晴海選手村の整備を民間事業者のもうけを優先する手法として、都市再開発事業で行うことを検討していたことを裏付ける報告書だ。都有地を売却する際に都財産価格審議会で土地評価を行うことが必要なのに、審議会を逃れて格安処分をする手法に誘導していたことを裏付けている。区画整理や再開発などを監督・指導する責任がある都が、民間企業に事業手法を丸投げして土地ロンダリングを行ったに等しい、あまりにもひどすぎる行為だ。