2018年2月18日(日)
羽生 連覇の舞
自己高め66年ぶり偉業
宇野「銀」 フィギュア
【平昌=五輪取材団】平昌五輪第9日は17日、フィギュアスケート男子のフリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(はにゅうゆづる)選手が男子66年ぶりとなる連覇を達成しました。冬季五輪で日本選手の個人種目連覇は初で、日本勢の今大会金メダル第1号となりました。五輪初出場の宇野昌磨(しょうま)選手も銀メダルを獲得しました。
今大会の日本勢のメダル獲得数は9(金1、銀5、銅3)。前回ソチ五輪の8を上回り、海外開催の冬季五輪では最多となりました。過去最多のメダル数は1998年長野五輪の10です。
時代築いた仲間に敬意 平昌発 鼓動
総立ちの観客の歓声と拍手が降り注ぐ。「やったー」。羽生選手が叫びながら腰をかがめ、右足首に手を添えた。痛めてから3カ月間、ため息と苦悩をもたらしたその体の土台部分に。
「とにかく右足が頑張ってくれた。感謝しかない」
不安視された右足首が踏ん張った。体が重くなる終盤。二つのジャンプで転倒をこらえ、最後の3回転ルッツでは着地の衝撃を吸収し、持ちこたえた。逆境で力がわく自身の生きざまを表すように、力強く。
連覇は66年ぶりの偉業。この4年は競技の難易度が急激に上がっただけに、その重みは計り知れない。ソチ五輪後、4回転ジャンプの種類と数が一気に増し、体への負担も増大した。
羽生選手はこの激流の中に絶えず身を置き続けた。過去、多くの五輪覇者は大会後に長期に休養してきたが、彼は勝負の世界で毎年自己を高めた。
「ぼくらの世代がどれだけ強くなれるのかによって次のオリンピック(平昌)が変わってくる。その変革者になって頑張らなければ」。その一心で。
その気概と向上心が競技の限界を押し上げた。2015年に歴代最高点を立て続けに更新し、技の出来栄え点で3点満点をいくつも記録。国際スケート連盟が5点満点に引き上げる採点方法を平昌五輪後に導入するきっかけをつくった。
変革を先導し続けた23歳は、その集大成を力の限りに平昌の銀盤に描いた。しかし、達成に酔いしれていない。「僕が(フィギュアのレベルを)引き上げたとは思っていない」とのべ、ネーサン・チェン、宇野、金博洋ら各選手の功績をあげた。
「本当に僕は時代に恵まれたスケーターだと思う」。同じ時代に競い、歴史をともにつくり上げた仲間たちへの敬意がにじんでいた。(勝又秀人)