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裁判所は国民の権利実現のための最後の砦(とりで)です。不当解雇、男女差別、労働災害、公害・薬害、平和訴訟、戦後補償などの裁判では、国民のいのちとくらしを守るうえで、国民の期待に反し、十分な役割を果たせていません。
刑事裁判では、2009年5月以降に導入される裁判員制度は、国民が参加する画期的な制度です。現在国民の権利を守るうえできわめて問題の多い刑事裁判に、国民が参加するということは、刑事裁判のあり方を改善する絶好のチャンスです。裁判員制度の実施にあたって、えん罪をうまない、国民が参加しやすいしくみを保障することは、国の大きな責任です。
法律扶助協会にかわって日本司法支援センター(法テラス)が設置され、法律扶助事業、被疑者・被告人の国選弁護、法律相談、犯罪被害者支援、少年事件支援の活動が開始されました。これらの事業は国民の権利を保障することをめざすものであり、国民の期待にこたえられるように充実をはからなければなりません。
日本共産党は、国民のための裁判、国民による裁判の制度を改善するため、全力をあげます。
日本の刑事裁判は、鹿児島の選挙違反裁判にしめされているように、相変わらず自白を強要する警察の取り調べに基礎をおいています。嫌疑を否認すれば長期にわたって釈放せず、また、捜査機関があつめた証拠を裁判のさいに提出しないなどの現状のうえに、取り調べ調書に偏重した裁判となっています。この結果、えん罪がしばしば生まれています。憲法では適正手続、黙秘権、弁護人の秘密通行権など、第31条から40条までにわたって詳細に刑事上の人権が定められていますが、実際の運用では不十分です。
国民が重大な刑事事件の裁判に裁判官とともに参加する裁判員制度の導入をひかえ、刑事裁判の改善を促進することは、きわめて重要です。
裁判員制度の充実……裁判員制度では、とりわけ、有罪が確定するまでは被告人は無罪が推定されるという刑事裁判の原則がつらぬかれ、検察官と被告人(弁護人)の双方が法廷でおこなった証言や物的証拠の説明など、直接の見聞を中心にして犯罪事実を認定することが求められます。
また、裁判員の加わった裁判を開くにあたっては、よく準備したうえで集中的な審理をすすめなければなりません。裁判員が刑事裁判に参加しやすいよう、国の責任で事業所等への保障措置を徹底することを求めます。
保釈の運用の改善、公判前の証拠の弁護人への全面開示……被告人が否認していると保釈を認めない、被告人に有利な証拠を集めているのに検察官が開示しないなど、公正な裁判を害するやり方をあらためます。
捜査全体をガラス張り(可視化)に……自白強要の取調べをあらためるうえで、取り調べの全過程を録音・録画し、刑事裁判で活用を求める声が高まっています。しかし、警察は自白強要の取調べができないと捜査に支障が出るなどという理屈で、この導入に反対し、検察庁も録音・録画を取調べの一部に限る態度です。捜査全体の可視化を実現することは、公正な裁判を迅速にすすめるうえで不可欠です。可視化の法制化が実現する以前に、被疑者が取調べ全過程の録音・録画を要求したときは、捜査当局にこれに応じるよう改善します。
ウソの自白強要の中止、えん罪根絶へ「代用監獄」の廃止……12人の被告人全員無罪の地裁判決のあった鹿児島県議選挙違反事件、富山県警の長時間の任意の取調べでウソの自白を強要して逮捕し、有罪判決を受け服役した男性の事件など、被疑者・被告人に対する自白強要、人権侵害の取調べが依然として後を絶ちません。物証やアリバイを無視し、えん罪を生み出す自白強要、人権侵害の取調べの温床となっているのが、「代用監獄」制度です。
逮捕された被疑者はすみやかに裁判官の面前に引き渡されなければならず、その後は身柄を警察にゆだねず、捜査と拘禁を区別するのは、国際的な常識です。肉体的、あるいは精神的な苦痛を与える取調べは、拷問にほかなりません。07年5月、拷問禁止条約第1回日本政府報告に対する審査で、「代用監獄」で精神的拷問を受け、ウソの自白をさせられた実態が告発され、拷問禁止委員から「クレイジーだ」との驚きの声があがりました。
「代用監獄」は即時廃止し、被疑者・被告人は法務省が管理する拘置所に収容するようあらためます。
検察の改善……刑事裁判の改善にとって、検察官が警察の違法捜査を追認し、被告人を長期に保釈せず拘置をつづけることを主導する現状をあらためなければなりません。
同時に、通常では起訴しないような行為を、差別的に起訴して民主的な言論活動をおさえようとするなど、検察権の濫用にはきびしく抗議します。
起訴権を検察官が独占し、起訴するかいなかは検察官の判断にかかっているという制度のもとで、国民が検察権をチェックする制度がきわめて不十分です。日本共産党が主張してきた、検察審査会が起訴相当の議決をしたときは、検察官は起訴しなければならないとする制度は、2009年春までに、検察審査会が同一の事件について起訴相当を2回議決した場合は必ず起訴されることになり、一歩前進です。同時に将来は、起訴陪審制度の採用を検討することを提案します。
日本の裁判所は少数の裁判官が多数の事件を受け持っており、しかも迅速な処理を要請されるため、十分な準備をして公正な判断をするうえで、たいへんきびしい状態におかれています。事件は大幅に増えているにもかかわらず、裁判官はわずかな増員にとどめられてきたためです。地方裁判所の支部の体制もたいへん手薄です。現在、裁判所の予算は国家予算の約0.4%という少額にすぎません。
憲法で保障された国民の権利の保障という本来の重要な任務をはたすうえで、裁判官の増員は待ったなしです。あわせて裁判所職員についても適切な増員をはかることを求めます。
また、地方裁判所の支部の担当地域のなかに弁護士の「過疎」地域が多数あり、日本弁護士連合会(日弁連)はこの解決に努力しています。裁判官・検察官・弁護士になる資格をもつ人を大幅に増加させている現在、裁判官の大幅な増員、弁護士の「過疎」地域への配置を実現することは可能です。
日本司法支援センター(法テラス)が、資力の乏しい人が弁護士に依頼して権利を実現できるよう費用を援助する法律扶助事業にあたることになりました。現在、法律扶助を希望しても勝訴の見込みがないと補助できない、費用の立て替えが原則のため、訴訟を断念せざるをえないなど、法律扶助事業の改善は、切実な要求です。その最大の障害になっているのは、法律扶助事業にたいする国の予算が少ないことです。2006年度の予算は数十億円にすぎず、ヨーロッパ諸国の水準とはケタ違いです。
憲法は必要なすべての人に「裁判を受ける権利」をみとめていますが、当事者本人だけで裁判をおこし、すすめるのは容易ではないため、弁護士に依頼して権利を実現することは、個々人の資力に関係なく平等に保障されなければなりません。予算の増額をはじめ、法律扶助事業の拡充のために抜本的改善を実現させます。
犯罪の被害者やその家族たちは、その生命や身体に重大な侵害をうけ、精神的にも打撃をうけた刑事事件の重要な当事者でありながら、長いあいだその人権を守るための措置がほとんどされないままでした。
日本共産党は、1975年7月、「犯罪被害者補償法案大綱」を発表し、犯罪者に賠償能力がないとか、犯罪者不明などから、被害者やその家族に損害賠償がされず、精神的に深刻な苦痛をうけたうえに生活上も悲惨な状態においこまれている現状にたいし、国の救済措置として、国家補償の制度を提案しました。また、犯罪被害者基本法を早急に制定し、国の施策として、被害者は尊厳をもってあつかわれるべきであり、すみやかな被害回復の権利を有することを宣言し、被害者に刑事事件の加害者や事件の内容、刑事手続きや判決内容などの情報について可能なかぎり提供をうけることをはじめ、各種の権利の保障を明確にすることを要求してきました。
2004年には、全会一致で犯罪被害者等基本法が制定され、政府が犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進をはかるという状況が切り開かれています。日本共産党は、犯罪被害者の個人の尊厳、幸福追求の権利を保障するため、犯罪被害者にたいする国家補償の実現、精神的なケアの充実などのために奮闘します。
<少年法改定について>なお、少年法について刑罰的側面をつよめる改定がすすんできましたが、判断力に乏しく、未成熟である少年の更生のために、教育的福祉的な対応をつよめ、そのなかで本人の反省を迫るとともに、社会への復帰のさいに犯罪に走らないですむような環境をととのえることこそが大切です。同時に、日本共産党は、20歳以上という現行の成人年齢を「18歳以上」に引き下げ、選挙権を付与するなど「成人」として扱うことと一体に、少年法の適用年齢を18歳未満にすることで、年齢問題の解決をはかることを提案しています(「少年法改定問題について」、2000年10月17日)。
現職警察官の犯罪や不祥事が後を絶たず、逆に汚職など重大犯罪の検挙率は向上せず、国民の警察への不信が広がっています。最近も、銃押収の偽装、官製談合への介入・競争入札妨害、捜査情報の漏洩、収賄容疑など、あいついで警察官が逮捕されました。職務と関連のない反社会的な事件も続発しています。
この間、北海道警元幹部警察官、愛媛県警現職警察官などの警察の裏金問題での内部告発を契機に、国費である捜査旅費、捜査費、都道府県費である捜査用報償費、参考人旅費などを使って裏金をつくり、幹部が裏帳簿で管理し、交際費、接待費などに使われるという、警察組織の構造的な裏金づくりのシステムが明らかになりました。しかし、裏金ねん出の構造には全くメスが入っていません。
警察は、国民の生命、身体、財産の安全、犯罪の捜査、基本的人権の保障にとって重要な責務をもっていますが、警察犯罪や不祥事が続発する現状は、文字通り、警察組織の再生が求められていることを示しています。
国家公安委員会は、警察の独善化を防止し、警察庁を民主的に管理することに本来の役割があります。しかし、国家公安委員会は、警察いいなり・おまかせの対応を続け、その機能をはたしていません。いまの国家公安委員会は、人選にあたっても警察庁がリストを作成し、内閣総理大臣が追認して任命する、事務は警察庁が担当するなど、警察庁主導で取り仕切られています。
日本共産党は、2000年3月、警察の犯罪や不祥事をただすべき国家公安委員会と監察機構を警察から独立して、その役割をはたすよう改革案を提案し、その実現のために奮闘してきました。その実現はいよいよ急務です。
国家公安委員会の警察庁による推薦をやめ、国会で「指名聴聞会」を開催し、適否を判断できるようにします。警察庁から独立した独自の事務局をもうけ、警察行政にかかわる諸問題、予算配分などについて必要な調査・検討をおこなうようにします。
国家公安委員は建前のうえでは常勤になっていますが、週1回の会議に参加するなど形だけです。これをあらため、5人の委員すべてを常勤にし、職務に専念させるべきです。
国家公安委員会が警察の独善防止や民主的管理のために、どういう活動をおこなってきたかなど、必要な事項について、毎年、国会にたいする報告を義務づけるようにします。
警察の一連の不祥事件のおおもとには、警察にはびこる独善性や秘密主義、不正・腐敗をおおい隠す隠ぺい体質があります。警察庁や都道府県警察の内部監察ではこの体質にメスを入れることができないのは当然です。監察制度を警察庁から分離・独立させ、国家公安委員会の直属機関として監察委員会(仮称)をもうけ、警察庁と警視庁、道府県警察本部、および警視正以上の幹部警察官、重要案件についての監察をおこなうようにします。
監察委員長をふくむすべての監察委員は、警察官以外から起用します。監察委員の過半は、法曹資格を有するものとし、監察委員および委員を補佐する職員についても、警察庁との人事交流を禁止します。
キャリア制度の弊害は、現場性のつよい警察で、「キャリア官僚」が警察行政を取り仕切ることによる問題点が、銃器摘発問題などであらためて明らかになっています。キャリア制度を見直し、特権的なあつかいをあらためるなど、公正な人事政策の確立をめざします。
警察は、不偏不党の立場で警察の責務をはたし、いやしくも国民の基本的人権を侵害することがあってはならないと、警察法できびしく定められています。ところが警察は、本来の責務に反して、各階層・分野の国民的運動や日本共産党に対するスパイ活動を秘密裏に組織的継続的におこなっています。
警察庁公安第一課(当時)が指揮し、神奈川県警公安警察官が実行した緒方国際部長宅電話盗聴事件では、「さくら」とよばれる秘密特殊工作部隊の存在が明るみに出ましたが、その後も「チヨダ」と俗称を変えて存続し続けています。
国公法弾圧堀越事件では、警視庁公安部と月島署の公安警察官が29日間にわたり、のべ171人が、国家公務員個人の立ち寄り先や交友関係を尾行、スパイし、休日、職務と全く無関係に地域で「しんぶん赤旗」号外等を配布した行為を、多いときで11名、ビデオカメラ6台、自動車4台で「捜査」していました。
日本共産党は、1990年総選挙で、日本共産党、民主的団体の組織と活動を秘密裏に組織的継続的にスパイする公安警察や公安調査庁などの秘密警察を即時廃止することを求めています。また、秘密警察の違憲違法のスパイ=警備情報活動を中止するよう、強く求めます。
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