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21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温暖化ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内のアスベスト対策や大気汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で、次のようなとりくみを強めます。
安倍政権は温暖化ガスの「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」方針を閣議決定し(「21世紀環境立国戦略」)、独ハイリゲンダム・サミットでも、「2050年」に「半減」という長期の目標にかかわる言葉が盛られたと宣伝しています。しかし、いま日本は、直近の目標である京都議定書での約束(2012年までに90年比6%削減)を達成する見込みがたっていません。
京都議定書で公約した「6%削減」の達成に、あらゆる手をつくす……EUはすでに削減目標の達成を見越していますが、日本は削減するどころか、逆に8%も増加しており、現在のままでは期限(2012年)までに目標を達成することは、極めて困難です。
石炭や石油などの化石燃料を燃やした時点で排出量を計算すると、エネルギー・産業部門が日本の二酸化炭素排出量の65%をしめています。とくに産業部門の割合は主要国のなかで最大となっています。発電所、高炉製鉄所など180の事業所が日本全体の排出量の半分を占めています。日本経団連は、日本の製造業が世界一効率がいいと強調していますが、欧米の先進国と比べ、ほぼ同じか中には日本が劣るものもあります。90年代にエネルギー効率を上げる投資を企業がしなかったことや、火力発電所が増加したことによって、景気が上向けば排出量が増える状況になっており、政府が頼みにしている日本経団連の「自主」行動計画では、総量目標を達成する裏づけにはなりません。
安倍内閣は、こうした問題を放置したまま、二酸化炭素の排出量の「1人1日1キログラム削減」をスローガンに「国民運動」を提唱しています。生活スタイルの見直しは大切ですが、家庭部門の排出量は、全体の5%であり、それを削減の決め手とするのは無理な話です。
やはり日本の排出量の8割を占める企業・公共部門での削減がカギです。政府は日本経団連の「自主」行動計画まかせにせず、経済界と政府の間で削減協定(自主協定)を締結し、達成責任を公的に裏うちすることが大切です。排出権取引を実施し、そのさい各企業の排出状況と実効性のある削減目標を明らかにさせることが重要です。
排出量の多いエネルギー部門では、小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・活用が決定的です。自然エネルギーの活用を広げるため、目標量を抜本的に引き上げるとともに、電力会社が買い取り価格を引き上げ、固定価格で買い取ることが必要です。既存のエネルギー税制を見直して、温暖化ガスの排出量を考慮した環境税を導入すべきです。
家庭でも、電気製品台数の増加や自動車の大型化によるエネルギー消費の拡大、核家族化・単身化による世帯増の影響で、温暖化ガスの排出が増加しています。また、労働規制の緩和や残業規制の不徹底、深夜労働による長時間営業・労働や帰宅・出勤時間の不規則化、大規模小売店舗法の廃止による大型店の郊外出店による自動車の多用、都市再生の名による大規模な高層マンション・建物の建設促進によるエネルギーの多用なども、エネルギー消費をふやしています。
地域でも路面電車など公共交通機関へのシフトや、パーク・アンド・ライドの推進、ロード・プライシング制の検討などで都市部への自動車流入の抑制をはかります。都市の気温が上昇するヒートアイランドを防止するため、都市の過密化を避け、緑化の促進をはかります。エネルギーのロスを減らし省エネをすすめるためには、廃熱利用、ヒートポンプの普及、エネルギーの“地産地消”、建物の断熱と交通輸送の切り換えや共同化によるまちづくりが重要です。
商品や施設の省エネをすすめ、「省エネ生活」への支援を強めるとともに、生活スタイルや経済活動を変えることが必要です。
中長期の目標を明らかにして、低エネルギー・低炭素社会への転換をすすめる……温暖化対策でいま重要なことは、気候変動が危険なレベルに達しない温度上昇の上限を共通の認識にし、その範囲におさえるために、空気中の温暖化ガス濃度をどう抑えるのか、そのために何が必要かを考えることです。
科学者やEU、NGOは、気候変動を破局的な危険のレベルに達するまえに抑えるためには、工業化以前に比べて2度未満に気温の上昇を抑え、温暖化ガスの濃度は1.7倍以内(480ppm程度)で早期に安定させることが必要だと考えています。それには、増え続けている温暖化ガスの排出量を基準年である1990年比で、2020年までには下回らせ、50年までには50%に削減するとりくみが求められています。
2050年に世界全体で温暖化ガスの排出量を90年比で半分にするには、日本をふくむ先進国が60%〜80%という大幅な削減をしなければなりません。それを見越してEUは2020年までに20%削減する方針を明らかにしており、50年までにフランスは75%、ドイツは80%の削減を検討しており、イギリスは60%の削減を目標にする法案を国会に提出しようとしています。
日本も、2020年までに30%、50年には70%削減することを目標に掲げ、それにむけて経済システムや生活スタイルなどを変革して、低エネルギー・低炭素社会への転換を目指すべきです。
自動車排ガスと健康被害との因果関係を、あいついで司法が認め、国・都・道路公団に被害者への賠償を命じました。公害健康被害補償法(公健法)で認定されていなかった被害者の健康被害が司法で認められたのですから、国、東京都が救済するのは当然です。原告はメーカーの責任も追及し、判決は、健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、自動車メーカーの対応に社会的責任上、問題があったと指摘しました。メーカーは超低額の解決一時金(賠償金)ではなく、被害者の要求にこたえるべきです。また、企業がいま使用しているディーゼル車の汚染物質(粒子状物質や二酸化窒素など)除去装置の実用化など、メーカーが社会的責任を果たすよう求めます。大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での走行規制など、汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、環境・製品アセスメントを強化します。
公式認定から51年になる水俣病にかんして、最高裁が国の責任と判断基準や認定制度・検診の見直しを認めたこと(2004年10月)をうけ、5200名をこえる被害者が国の認定を求めています。また1200人をこえる被害者が新たに提訴をおこないました。ところが、政府は、認定基準の見直しを拒否し、わずかばかりの「解決金」で患者を切り捨てようとしています。ただちに全容解明の実態調査をおこない、最高裁が示した救済水準に合わせて、すべての水俣病被害者の救済を急ぐべきです。
アスベスト(石綿)は、吸いこんでから20〜30年以上も後に悪性腫瘍(がん)をひきおこします。その一種である中皮腫(ちゅうひしゅ)などの被害が続々と明らかになり、その影響は事業者・従業員だけでなく、家族、周辺住民にも及んでいます。政府が、ILO条約の批准を先延ばしにした結果、WHO基準の200倍も緩い基準(76年の通達)を05年まで放置してきました。関連業界と政府の責任は重大です。
石綿関連企業の労働者や事業所周辺住民などの健康診断調査を継続して実施するために、費用を原因企業と国が負担するよう求めます。アスベスト対策法の施行後も、認定対象が狭く、救済数が余りにも少ないため、被害者の実態に合わせて拡充します。石綿の労災認定も抜本的に見直すとともに、すべての健康被害者を救済し、被害に対する補償水準を引き上げるなど救済制度を早急に改善するよう政府に求めます。石綿の特例使用が認められている分野を含め、早急に全面的な使用禁止を目指すとともに、石綿除去や解体に伴う二次被害を阻止するために、自治体の指導・監督を強め、国の補助の拡充を求めます。
化学物質による環境汚染がひきおこすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。
電磁波による健康への影響については、WHOをはじめさまざまな調査・研究があります。携帯電話用の無線基地の建設をめぐって紛争が起きている場合には、住民の不安にはそれなりの根拠があり、事業者側の責任で不安を軽減するよう対応をすべきです。電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。
大型焼却炉によるごみの“焼却中心主義”からの脱却をはかります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するためには、自治体と住民に負担を押しつける現行制度を、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ大型廃棄物処理施設の建設・運営の高コストや、処理施設の爆発事故やトラブルに、自治体は費用負担と安全性の問題で頭を痛めています。自治体は国の誘導策にのって大規模施設の建設に走ることをやめ、事故やトラブルについてはプラントメーカーに改善と補償を要求するとともに、国の指導を求めます。家電製品のリサイクル費用については、廃棄時の不法投棄をなくし、ごみになる部分を減らすために、商品の販売時に徴収すべきです。
不正軽油の生成から大量に発生する硫酸ピッチや、地下水から法定基準値を超えて検出されたヒ素やセレンなどの有害物質など、廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけます。違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な指導と監督をおこないます。不法投棄のルートと関与者の解明、違反者など排出者の責任による撤去を実施させます。
人類生存の基盤である生態系や住環境を守るため、環境破壊をひきおこすような大規模開発をやめさせるとともに、環境アセスメント制度を改善し、住民参加と情報公開、代替案の検討を義務づけ、事後評価を実施させます。さらに欧米で導入されている「政策の検討段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の早急な実施を求めます。電力業界の圧力に屈して、発電所を戦略アセスメントの対象からはずすべきではありません。諫早干拓などをただちに中止し、自然の維持と回復のとりくみを盛り込んだ干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。
国土の3分の2を森林が占める日本は、世界でも有数の「森」の国ですが、その荒廃が進んでいます。絶滅が心配されているオオワシ、イヌワシ、ツキノワグマ、サンショウウオや北海道のナキウサギ、ヒグマなどを、開発から守り保護に力をつくします。森林の荒廃や気候の変動によって、野生の熊やイノシシ、シカなどが森から里にちかづいて人間に捕殺されるケースが急増しています。捕殺だけの対応ではなく、野生動物との共存のために生息する頭数や状況の把握、森林の保護・管理、野生動物による被害の防止と救済に総合的にとりくみます。
神奈川県内の野生のウシガエルから国内の野生カエルで初めてのツボカビ感染が確認されました。ツボカビは、過去30年間に中南米やオーストラリアの両生類を激減させたカビです。日本の両生類への壊滅的打撃と生態系全体への影響が危惧されます。日本は外来種生物の大量輸入国であり、それが自然界に出て日本の固有種の生息を脅かしています。動植物の輸出入検疫を強化するとともに、内外の知見にもとづくリストを作成し輸入を規制すべきです。輸入業者の立入り検査の強化も必要です。米軍の岩国基地で繁殖した毒グモが基地外にまで広がったように、港湾や空港、基地などでは意図せず付着などで入り込む外来種があり、こうした施設の周辺の監視を強めるとともに、固有種を脅かす外来種の除去をいっそう積極的におこなうべきです。
犬や猫などのペットは、こんにちでは単なる愛玩動物としてだけでなく、コンパニオン・アニマル=「伴侶動物」と考えて飼育する人も少なくありません。ところが、最近では、さまざまな事情からペットの飼育を途中で放棄する人も少なくなく、心ない人たちによる動物虐待もしばしば報道されます。一部の無責任な飼い主のために、近隣の住民が迷惑に感じ、ペットとなっている動物を快く思わなくなってしまう人たちもおり、人間社会で暮らす動物たちを取り巻く状況はきびしくなっています。保健所への持ち込みや捕獲による犬や猫の殺処分数は年間36万件にもなるといわれています。
殺処分を減らすためには、なによりも飼い主の責任として、ペットが死ぬまで飼いつづけることが基本です。同時に、引き取り手の見つからないまま子猫・子犬が処分されることがないよう、里親を探すなど譲渡する数をふやすことが重要です。場合によっては犬猫の不妊手術をすることも求められます。子犬は引き取り手が見つかりやすいのに比べ、成犬はみつけにくく処分されることが多いといわれています。人をかむなど矯正できない問題がある場合をのぞき、譲渡の可能性を広げるためには、性格を知り、必要な矯正をし、一定期間の健康管理をするなど手間と時間が必要です。行政だけでこうした措置をカバーすることは困難ですが、愛護団体やNPO、地域の住民の協力なども得られる仕組みをつくります。政府は、市町村による動物との共生の地域ビジョンの作成を支援したり、不妊手術への助成制度を創設や、譲渡促進のとりくみへの支援などに乗り出すべきです。
日本海や東シナ海を越えてくる黄砂や窒素酸化物が、日本の国民ののどや鼻に影響をあたえ、酸性雨や光化学スモッグの原因になっています。モンゴルや華北地域の砂漠化がすすんでいることや、急速な経済発展をすすめる中国での大気汚染の悪化が、国境を越えて日本にも影響を与えているといわれています。
東アジア全体の環境を保全するために、政府は、公害防止の経験や研究の成果を生かし、緑化事業や東アジア諸国の人びとの健康を守るとりくみを提起し、積極的に協力を広げるべきです。東アジア諸国に進出して活動している日本企業も、その国の環境にかかわる規制を遵守するだけでなく、適正な環境基準の設定に積極的に応じることで、社会的に貢献すべきです。
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