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国民の食を支えるべき国内の農漁業は衰退が続き、食料自給率は40%と先進国で例のない低水準に落ち込んだまま、さらに低下する兆しさえ出ています。農山漁村の崩壊が広がり、集落の維持や国土の保全が危ぶまれる事態です。
とくに、95年のWTO農業協定を受け入れて以降、農産物輸入が22%増加し、農業産出額は2兆円近く(19%)も減りました。自由化一辺倒の農政では、農業や農家経営が成り立たないことは、もはやあきらかです。
ところが安倍・自公内閣は、大企業の「成長」のために農産物輸入を完全自由化し、残された農業をも一挙に壊滅させかねない危険な道に踏み出そうとしています。2国間交渉によるEPA(経済連携協定)は、お互いの条件をよく考慮してすすめるなら、経済関係を深めることができます。しかし、いますすめられている日豪EPA交渉は、日本農業に重大な打撃を与えるものです。
さらに、財界代表が中心にすわる政府の経済財政諮問会議は5月、農産物関税の撤廃・削減、家族経営を主体とする農地制度の解体などを求める報告をまとめています。農水省は、関税を完全撤廃したら、農業生産は3兆6000億円減少し、米生産額では90%減、約375万人の雇用が失われ、食料自給率は40%から12%へ低下する、という衝撃的な試算を公表しました。ところが、この試算にも、諮問会議のEPA・農業作業部会の座長代理は、「(農業が)結構残るじゃないか。いい線だ」と言い放っています。こんな無責任な人たちに農政をまかせて、日本を「農のない国」にするわけにはいきません。
一方で政府は、ごく一部の大規模経営だけを対象にする「品目横断対策」を押しつけています。現実に生産に携わっている大多数の農家を排除し、集落の自主的な共同も壊す「対策」では、農業・農村の衰退に拍車がかかるのは必至です。
21世紀に入り、世界の食料需給はひっ迫傾向を強めています。地球温暖化などで生産の不安定化が広がる一方、途上国での人口増と経済発展、バイオ燃料ブームなどで需要が増え、世界の穀物在庫は過去最低の水準に落ち込んでいます。
農業と農村を立て直し、食料自給率を向上させることは、国民の生存の根本にかかわり、食料輸入大国・日本の、21世紀の国際社会にたいする重大な責務です。最近の政府調査でも、76%の国民が将来の食料供給に「不安」と答え、87%は「食料は高くても国内で」と答えています。農林漁業の再生は、地域経済振興の上でも不可欠です。
日本共産党は、農業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率を早期に50%台に回復させるために全力つくします。
オーストラリアの農業経営の規模は日本の約1900倍。国境措置=関税なしには日本の農業は守れません。牛肉・乳製品など4品目だけで約8000億円という甚大な打撃(農水省試算)をこうむることがあきらかな日豪自由化交渉は中止すべきです。
アジア諸国との経済関係の発展は、「各国の農業の共存」を基本にすべきです。近年、食料輸入を増加させているアジア地域に求められるのは、各国の農業生産の多面的な発展による自給率の向上です。日本企業の海外での「成長」のために農業に犠牲を強いる関税撤廃・自由化には反対します。
自由化一辺倒のWTOのもとで、アメリカなど輸出大国の利益が拡大する一方、日本など輸入国、途上国の農業が打撃を受け、食の安全や環境も脅かされました。国内農業の維持、食料の安定確保はどの国にとっても大事な権利(食料主権)です。2004年、国連の人権委員会は、その内容を盛り込んだ「食料に対する権利」特別報告を日本政府も含めて圧倒的多数で採択しました。こうした世界の流れに呼応して「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をめざします。
わが国の農業は、大小多様な農家や各種の生産組織によって担われているのが実態です。大規模だけを支援し、大多数を切り捨てるやり方では、うまくいくはずがありません。
「品目横断対策」を中止し、続けたい人やりたい人すべてを大事な担い手と位置づけ、農家経営の多くを可能な限り維持します。耕作放棄地が広がらないよう、農家や集落の自主的な共同も重視し、生産組織、農業生産法人、受委託組織などもそれぞれの条件に応じて支援します。
近年、増えつつある非農家や他産業からの農業への新規参入者を重視し、その定着のために一定期間の生活支援や資金、技術、農地の面での総合的な支援体制を整えます。新規就農青年に月15万円、3年間援助する制度を創設します。
地産地消や直売所、農産加工の開発、都市と農村の交流などが各地に広がっています。「食の安全都市宣言」「地産地消宣言」などを掲げる自治体も生まれています。こうしたとりくみを支援し、それと結びつけて農業の担い手確保に努めます。
都市計画のなかに農業を明確に位置づけ、振興策を講じます。都市の農地を守るために、当面、生産緑地の要件を緩和するとともに、相続税納税猶予の制度を農業用施設用地や貴重な緑を供給している屋敷林などにも適用を広げ、農家の営農を全体として守れるようにします。
株式会社一般にたいする農地所有や利用の自由化は、地域での秩序ある農地の利用や管理に重大な障害を持ち込み、大規模な荒廃・転用につながる恐れもあり、反対です。耕作者の権利を優先し、農地の売買や転用を農業委員会の審査・許可のもとにおく現行農地制度の原則を維持します。
10年前には2万円前後(60kg)であった生産者米価はいまや1万5000円台。稲作労賃は1日2959円に過ぎません。これでは農家の後継者が育つはずがありません。暴落した米価の回復は、農家の最大の願いであり、最大の担い手支援です。不足払い制度を創設して、農家手取りを生産費に見合う水準(1万7000円以上)に近づけます。
麦・大豆・食肉など主な農産物にも価格保障を実施します。国産を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大などを支援し、国産麦や大豆の需要拡大にとりくみます。
飼料価格の高騰による畜産経営への打撃を回避するため、飼料供給安定基金への国の支援を強めます。自給飼料の増産に力を入れ、荒廃田の活用を含めた飼料米の生産に食用米なみの所得を保障する助成をおこなうなど、飼料米の本格的な実用化にとりくみます。
中山間地域の直接支払い制度を改善・拡充するとともに、営農による国土・環境の保全など「農業の多面的な機能」を評価して、平場地域も対象に加えます。
価格所得保障が農業予算に占める割合は、EU諸国では5割〜7割台です。ところが日本は、公共事業が依然として主力で価格所得保障は3割台に過ぎません。農業予算を国の基幹産業にふさわしく増額するとともに、価格所得保障の割合を高めて、農家の経営とくらしを応援します。
アメリカのBSE対策のズサンさは、特定危険部位の除去、月齢20ヶ月未満という輸入条件に違反する米国産牛肉が相次いで検出されていることで、いよいよ明白です。ブッシュ政権は、「アメリカの牛肉は安全」と強弁し、輸出条件の緩和を執拗に求め、安倍内閣も、4月の日米首脳会談を前に全箱検査の廃止など条件緩和を約束しています。国民の健康と命より日米関係を最優先して、現在、国内で実施しているBSE対策を緩和することは許せません。
米国産牛肉の輸入は、対日輸入条件が厳格に守られることが確認されるまで中止すべきです。当面、アメリカ産輸入牛肉の全箱検査を維持します。国内でのBSE「全頭検査」は、厚生労働省の毎年の政策実績評価書のなかでも、BSE感染牛を確実に発見できるとして評価されています。自治体の行なう「全頭検査」への補助金を08年度以降も継続します。
鳥インフルエンザのまん延防止対策をより実効あるものにするために、鶏の殺処分補償への国の負担割合を3分の2に引き上げるとともに鶏肉加工施設も補償対象に加えます。
膨大な輸入食品のうち、港や空港で安全検査をされるのは10%に過ぎません。輸入農産物のチェック体制の強化と原産国表示の徹底をはかります。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証を義務付けます。
効率化一辺倒で農薬や化学肥料へ過度に依存した農業生産のあり方を見直し、有機農業など生態系と調和した環境保全型の農業、「地産地消」や「スローフード」へのとりくみ、食文化の継承・発展を支援します。
戦後に植林した森林が利用できる時代を迎えているもとで、適切な森林整備と国産材の供給体制を確立し、林業・木材産業の再建をはかります。
木材の生産、水源の涵養、国土保全など森林の多面的な機能を発揮させるため、市町村への財政措置を拡充し、「市町村森林整備計画」を推進します。国産材での需要拡大をはかるため、公共事業での国産木材・木製品の利用や数値目標の設定、木材加工技術の新たな研究開発の促進、融資や税制上の優遇措置を拡充し、地元産材の使用住宅を広げます。木質バイオマスや森林セラピーの推進など山村地域での新たな事業を促進します。林業労働者の確保と林業技術の継承を重視します。国有林の現業部門を重視し、持続的な経営管理にとりくみます。
日本は有数の漁場を持ちながら、世界の水産物貿易の4分の1を輸入する世界最大の輸入国です。食用水産物の自給率は50%近くまで低下し、乱獲による資源の枯渇も問題になっています。漁業経営の安定のためにも、また、乱獲を防いで資源を管理するためにも、政府の責任で価格安定対策を強化し、休漁・減船補償などを実施するとともに、後継者の育成のために青年漁業者支援制度を創設します。7割が公共事業という突出した公共事業偏重の水産予算を改めれば、財源はあります。諫早干拓や中部国際空港、新たな米軍基地建設などの大規模な開発による干潟・藻場の破壊や埋め立て、海砂の採取、河川の汚濁などがもたらした漁場の荒廃は深刻です。こうした開発をやめ、漁場の保全や改善に力を入れるべきです。有明海の豊かな漁場をとりもどすためにも、ただちに開門調査を実施すべきです。
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