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いま、貧困と格差が深刻な社会問題になっており、「健康で文化的な最低限度の生活」をすべての国民に保障した憲法25条の生存権を守る、社会保障制度の役割はきわめて大きくなっています。
それにもかかわらず、小泉内閣、安倍内閣の自公政権は、「自助努力」「自己責任」ばかりを強調し、社会保障に対する国の責任を投げ捨て、あらゆる分野で社会保障制度の改悪をすすめてきました。
2006年は、医療改悪によって、高齢者の窓口負担が引きあげられ、現役世代の高額療養費(支払い限度額)も引きあげられました。しかも、08年4月からは、後期高齢者医療制度がはじまり、75歳以上の高齢者は医療保険料が年金から天引きされ、65歳以上の高齢者も国民健康保険料が年金から天引きされることになります。さらに、生活保護の老齢加算の廃止、母子加算の段階的廃止に加えて、生活扶助基準そのものの引き下げや、通算5年までの期限付き制度への転換なども検討されています。年金は、毎年、保険料が引きあげられる一方で、「消えた年金」問題のような重大問題までひきおこされています。介護保険でも、在宅サービスのきりすて、施設利用料の大幅引きあげにつづき、療養型病床の廃止などによる高齢者追い出しがすすめられています。
社会保障制度は、国民のくらしをささえるという本来の機能を大きく失い、逆に国民を苦しめ、不安をますます増大させる要因となりつつあります。
自民・公明政権や財界は、社会保障給付を「過大」だとし、これ以上、社会保障への財政支出は増やせないといって、負担増・給付減を正当化しています。しかし、わが国の高齢化率はすでにヨーロッパ諸国と比べても高い水準になっているのに、日本の社会保障給付費は、国内総生産(GDP)の17.5%──イギリス(22.4%)、フランス(28.5%)、ドイツ(28.8%)、スウェーデン(29.5%)などよりも大きく立ち後れた水準にとどまっています(厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し」06年)。
「医療難民」「介護難民」「ネットカフェ難民」をはじめとして、貧困が大きな社会問題となり、自殺者が9年連続で3万人を超え、そのうち経済苦を理由に自殺する人が毎年7千人におよぶ今の日本──国民の不安を一層拡大するのではなく、「国民の生存権」を明記した憲法25条の立場で、誰もが安心でき、将来に希望のもてる社会保障制度の確立に足を踏み出すべきです。そうしてこそ、国民のくらしと経済も元気をとりもどし、持続可能なものになっていきます。
民主党も、派遣労働の拡大、介護保険の改悪など、格差と貧困を拡げる政治を自民党、公明党と一緒にすすめてきました。日本共産党は、自民党政治にきっぱり対決し、国民の立場でがんばるたしかな野党として、幅広い人たちと共同し、社会保障切り捨て路線を打ち破るためにたたかいます。声を出せずに社会の中で苦しんでいる人たちの人間らしく生きる権利を守るためのたたかいを、多くの団体・人びとと連帯して、草の根から広げます。そして、社会保障を予算の主役にすえ、くらしをしっかりとささえる社会保障制度の改革、拡充に力をつくします。
政府・与党は「百年安心の年金改革」といって、給付水準は低額年金もふくめて一律に引き下げるしくみに改悪し、年金保険料も毎年値上げを続けています。しかも、「年金のため」と言って、国民に定率減税廃止の増税まで押しつけました。このままでは、制度の空洞化もいっそう深刻化し、年金制度は老後の生活保障という役割をますます失ってしまいます。「消えた年金問題」でも、保険料だけはとりたてながら、国民が受けとる年金額には無頓着な、冷たい政治の姿勢が明らかになっています。年金問題にたいする国民の怒りと不信は当然です。
日々の生活をまかなえない低額年金、無年金の人が膨大な数にのぼることも重大です。国民年金しか受給していない高齢者は910万人もいますが、その平均受給額は4万7千円にも届きません。厚生年金も、女性を中心に劣悪な状態が放置されています。また、国民年金の保険料を払っていない人が1000万人を超えるなど、年金制度全体の深刻な空洞化も放置できません。日本共産党は、こうした現状を打開し、公的年金制度にたいする国民の安心と信頼をとりもどす改革をすすめます。
日本共産党は、重点政策に掲げているように、「消えた年金」問題は、1人たりとも被害者を残さないように、1日も早く国の責任で解決するために全力をあげます(詳しくは、重点政策をお読みください)。
いま、安倍・自公政権は、「消えた年金」問題と関連して、社会保障番号制度を導入すると言い出しています。しかし、国民の医療・介護・年金などのあらゆる情報を一元管理するという社会保障番号制度の導入は、「消えた年金」問題の解決に役立つものではありません。
社会保障番号制度は、財界団体などから、一人ひとりの国民が納めた保険料と受けとった給付額を比較できるようにして、社会保障制度に対する国や企業の負担の責任をあいまいにするために導入が提言されてきたものです。社会保障は憲法25条にもとづく国民の権利 です。社会保障の給付をその人が納めた保険料にもとづく対価という考え方をひろげ、もっぱら保険料のとりたてを強化するために、社会保障番号を導入することは問題です。また、社会保障番号を導入しているアメリカでは、社会保障番号の盗難など、年間20万人が「なりすまし被害」にあっており、国民の個人情報・プライバシーの保護という観点からも慎重な検討が必要です。
「消えた年金」問題で国の管理能力・統治能力が問われているいま、どさくさにまぎれて社会保障番号制度を導入することは許されません。
わが国では、保険料をおさめていても、総加入期間が25年に満たなければ、税金から支払われている分をふくめて、年金を1円も受け取ることができません。加入期間25年以上という、この長すぎる受給条件は、不安定雇用で働く若者をはじめ、国民のなかに年金制度にたいする不信を拡げ、不安をふやしている大きな要因のひとつです。日本共産党は、せめて諸外国なみに、年金受給のための最低加入年数を10年以上へとただちにひきさげることを求めます。なお、基礎年金の国庫負担2分の1への引き上げは、消費税増税ではなく、歳出の見直しですみやかに実行します。
日本共産党は、「最低保障年金制度」をつくり、今も将来も安心できる年金制度をつくるという提案をおこなっています。その中心点は、憲法25条の「生存権」を保障する見地に立って、全額国の負担でまかなう「最低保障年金制度」を実現させることです。第一歩として、最低保障額を月額5万円とし、その上に、支払った保険料に応じた額を上乗せし、低額年金を底上げする制度をスタートさせます。
「最低保障年金制度」の実現に足を踏み出せば、低額年金や無年金者の問題、年金制度全体の空洞化、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度がかかえるさまざまな矛盾を根本的に解決する道が開けます。
日本共産党は、安心できる年金制度にするために、(1)年金財源は、大型公共事業や軍事費などの浪費を削減するとともに、「所得や資産に応じて負担する」という経済民主主義の原則をつらぬき、大企業や高額所得者に応分の負担を求めて確保する、(2)巨額の年金積立金は、高齢化がピークを迎える2050年頃までに計画的に取り崩して年金の給付にあてる、(3)リストラや不安定雇用に歯止めをかけ、年金の支え手をふやす、(4) 急速な少子化の克服は年金問題を解決するうえでも大事であり、安心して子どもを生み育てられる社会をつくる──この4つの改革にとりくみます。
この改革を着実にすすめれば、給付を減額せずに、低額年金を底上げすることができます。将来、経済が発展の軌道に乗り、国民の実質所得が増えていくなかで、年金改善のために国民の保険料の負担増を求める場合も、政府の計画よりはるかに低い水準にとどめることができます。
厚生年金など社会保険に加入することは、ほんらい非正規雇用もふくめた労働者の権利です。ところが、政府・与党が07年の国会で成立させた「パート労働法」は、パート労働者の願いである正社員との「均等処遇」に背を向け、差別禁止の対象者を正社員とかわらない一握りのパートにとどめる一方、それ以外のパートへの差別をかえって固定化しかねない内容です。
最大の問題は、現在の法律でも、法人または従業員が常時5人以上いる事業所は、正社員の4分の3以上の時間を働く労働者はすべて厚生年金に加入させる義務を負っていますが、この義務を果たしていない事業所が少なくないことです。派遣社員も派遣元の企業が加入させる義務をおっていますが、責任逃れ・違法行為が蔓延しています。日本共産党は、現行法もフル活用して、非正規雇用で働く人たちの社会保険加入・厚生年金加入の権利を守ります。
国民からみて公平な年金制度をめざすことは当然ですが、自民・公明・民主がすすめてきた年金「一元化」議論は、負担は重い方に、給付は少ない方にあわせることになりかねない危険なものとなっています。
自民党・公明党がねらっている厚生年金と共済年金の一元化ですら、厚生年金が改善されることはなく、「見せしめ」的に共済年金の制度を改悪するだけです。しかも、改悪の対象には公務員だけでなく、零細な私立学校の教職員なども含まれます。
さらに現状の枠組みのもとで、国民年金の給付水準を厚生年金・共済年金にあわせるならば、事業主負担のない国民年金の保険料は数倍に引き上がらざるをえません。また、被用者年金を国民年金にあわせれば、被用者年金の給付水準の大幅な引き下げとともに、財界が要求しているように、被用者年金への事業者負担をなくす入口になりかねません。どちらにしても、保険料の大幅引き上げか、給付水準の引き下げであり、国民にとってよいことは1つもありません。
また、民主党の、年金を一元化し最低保障年金を創設するという「年金改革」案も、国民が受け取る給付水準を改悪された年金制度と同水準に引き下げる一方で、基礎年金の財源は消費税をあてるものです。今回の選挙では、消費税は増税しないと言い出しましたが、2005年の総選挙の時には、3%消費税を引きあげて税率を8%にすると公約していたものです。増税が3%ですむ保障もありません。しかもこの案では、現在の無年金者、未加入者、保険料未納者は救済されず、40年後にようやく「最低保障年金」を本格的にスタートさせるものとなっています。これでは安心できる年金制度にはなりません。
日本共産党は、年金の水準をいっそう貧しくする「一元化」ではなく、年金制度間の格差をなくし、国民から見て公平な制度をめざすべきだと考えます。そのために、いちばん具体的で現実的な方法は、まず、最低保障年金制度を創設して、国民年金と厚生年金の低い部分の底上げをはかり、全体として格差を縮小していくことです。そうしてこそ、誰もが「生存権」を保障される年金制度への道が開けます。
急増する受診抑制、無慈悲な保険証とりあげ、入院患者の病院追い出し、深刻な医師・看護師不足──国の財政負担と大企業の保険料負担を減らすため、ひたすら国民に負担を転嫁し、公的医療保障を切り捨てる自公政権の「医療改革」により、いま、日本の医療は「崩壊」の危機にさらされています。日本共産党は、国民の命と健康を切り捨てる政治と対決し、だれもが保険で必要な医療が受けられる制度をまもり、広げます。
国民の4割が加入する国民健康保険では、「所得280万円の4人家族で国保料45万円」(大阪市)など、支払能力をはるかに超える国保料(税)に住民が悲鳴をあげ、滞納世帯が増えつづけています。滞納を理由とした国保証とりあげは35万世帯を超え(06年6月現在)、保険証がなくて受診を控えた人が死亡する事件も続発しています。命と健康を守る医療保険が、国民の貧困をますますひどくし、社会的弱者から医療を奪うことなどあってはなりません。
日本共産党は、国の責任による国保料(税)値下げを緊急に提案します。国保料(税)の「応益割」部分を、年間1人1万円(4人家族なら4万円)、国の支出で引き下げます。所得にかかわらず“頭割り”で課される「応益割」の引き下げは、国保料(税)の逆進性を緩和して、中・低所得者の負担を軽くするものです。1984年から2004年の間に、市町村国保の総収入に占める国庫支出金の割合は約15%、1兆6600億円分も減らされ、それが国保料(税)の高騰をひきおこしました。国保料(税)の1人1万円引き下げに必要な財源は4000億円で、減らされた国庫負担の4分の1に過ぎません。
生活困窮者からの国保証とりあげをやめさせます。政府の圧力と指導のもとで横行する、無法な差し押さえ、脅迫まがいの催告、加入者の人権を無視した国保料(税)取り立てをただします。
08年4月に実施が予定されている、65歳以上の国保料(税)の「年金天引き」を中止します。高齢者増税や定率減税廃止など、この間の税制改悪に連動した国保料(税)の大幅値上げから国民を守る負担軽減策をすすめます。国保法第44条にもとづく窓口負担の減免措置を推進し、生活困窮世帯の医療を受ける権利をまもります。
国民健康保険をだれもが安心して医療を受けられる保険制度とするには、根本的な制度の改革が必要です。国保にたいする国庫負担を、計画的に1984年の水準に戻し、国保料(税)を大幅に引き下げ、国保財政を立て直します。現行の“低所得者に重い”保険料の算定方式を見直し、減額・免除制度の拡大をはかります。
自公政権が強行した医療改悪法により、06年10月、「現役並み所得」とされる高齢者(70歳以上)の窓口負担が3割に引き上げられ、療養病床の食費・部屋代の大幅値上げ、高額療養費や人工透析の患者負担増が強行されました。08年4月からは、70〜74歳のすべての人の窓口負担が2割に引き上げられます。日本共産党は、高齢者や重症患者をねらい撃ちにした負担増の中止・撤回を求めます。
08年4月から、後期高齢者(75歳以上)を対象とした「後期高齢者医療制度」がスタートする予定です。新制度では、家族に扶養されている人も含め、すべての後期高齢者が、介護保険と同じ「年金天引き」で保険料を徴収されます。保険料を払えない人からの保険証とりあげも計画されています。政府は、後期高齢者の診療報酬をそれ以下の世代と“別建て”にし、“粗悪医療”や“病院追い出し”をおしつけることも検討しています。日本共産党は、無慈悲な保険料取り立てと差別医療の押しつけに反対し、「後期高齢者医療制度」の抜本的見直しを求めてたたかいます。
政府は、医療型(25万床)・介護型(13万床)あわせて38万床の療養病床を、15万床(医療型のみ)に削減し、高齢者を病院から追い出すことを計画しています。06年の診療報酬改定では、療養病床に入院する患者の「医療の必要度」を区分し、「軽症」とされた人の診療報酬を大幅に引き下げて退院に追い込む、病院追い出しの先行実施も強行されました。給付費抑制のために「医療難民、介護難民」を大量に生みだし、患者と家族に多大な苦しみを負わせる、これらの大改悪は許せません。国政でも地方でも、必要な病床をまもり、「医療難民、介護難民」をつくらないように力をつくします。
06年の医療改悪で、政府・与党は、「混合診療」の大幅拡大に道をひらく、「保険外併用療養」の導入を強行しました。保険診療と自費診療の併用を認める「混合診療」の解禁は、「必要な医療はすべて保険でおこなう」という公的医療保険の原則を崩し、患者の支払能力による「治療の格差」をうみだします。こうした動きの背景には、自分たちの保険料負担の軽減を求める財界・大企業と、国民の医療費への不安をかきたて、ビジネス・チャンスを増やそうという米国の保険業界の要求があります。日本共産党は、「混合診療」拡大を許さず、「保険証1枚」でだれもが安心してかかれる医療制度をまもり、広げます。
米国と財界は、公的医療制度の解体とともに、「株式会社による医療経営」解禁も強く要求しています。医療が市場原理にまかされている米国では、一部の資産家が高い医療費を払って最高水準の医療を利用する一方、中・低所得者はまともに医療を受けられず、医療費による自己破産も続発し、平均寿命や新生児死亡率も先進国最悪レベルです。日本の医療を日米大企業の新たな儲け口とするために、国民の命と健康を犠牲にする、医療の「市場化」に反対します。
「軽い病気」の治療を保険外とする「保険免責制度」、医療機関が処方する風邪薬や胃腸薬の「保険はずし」など、政府・与党が検討する公的医療保険のさらなる縮小に反対します。安全・有効な技術や薬はすみやかに保険適用とする仕組みをつくり、差額ベッド料などの自費負担をなくし、保険で必要かつ十分な医療が受けられるようにします。
医療改悪法では、医療給付費の削減を都道府県に競わせ、GDPなどの経済指標にあわせて抑制する仕組みが創設されました。国民に「病気予防」の責任を負わせ、保険者に「特定健診」を義務づけて、肥満、喫煙、「生活習慣病」などの人には“健康づくりを怠った”“自己責任で病気になった”などのレッテルをはって負担増のペナルティを課す仕組みも導入されようとしています。国の財政負担、大企業の保険料負担が含まれる医療給付費を抑制するため、「自己責任」の名で国民が受けられる医療を制限する改悪に反対します。
政府は、06年の診療報酬改定で、リハビリ医療に最大180日などの制限を設ける改悪をおこないましたが、患者や医療関係者の猛反発を受けて、1年で大幅な修正を余儀なくされました。日本共産党は、リハビリ日数制限の全面撤回と制度の再構築を求めます。
地方でも都市でも、医師不足は重大な社会問題です。最大の原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を減らし、日本を世界でも異常な「医師不足の国」にしてきた自民党政府の失政です。さらに、診療報酬の削減、国公立病院の統廃合、大幅な病床削減など、公的医療保障を際限なく切り捨てる自公政権の「構造改革」が、地域の「医療崩壊」を加速しています。この間、政府・与党も「医師確保」を言い出しましたが、「医師数抑制」という根本方針に手をふれないなど、解決策にはほど遠いものです。日本共産党は、深刻な医師不足を打開し、安心してかかれる医療提供体制をまもり、拡充するため、力をつくします。
──国公立病院の産科・小児科切り捨てをやめ、地域に産科・小児科を確保するための公的支援を強化します。
──「医学部定員削減」の閣議決定を撤回し、医師養成数を抜本的にふやします。
──勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー、助産師、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立を支援します。
──医療の安全・質の向上、医療従事者の労働条件改善、地域医療にかかわる診療報酬を引き上げます。
──不足地域・診療科に医師を派遣・確保する国の制度を確立します。
看護師の不足、超過密労働、離職者の急増は、医療の安全をおびやかす重大問題です。06年、国は、看護師の配置基準を18年ぶりに改定し、「患者7人に看護師1人」を配置した医療機関に報酬を加算して、手厚い看護体制を促す仕組みをつくりました。ところが、看護師の絶対数が不足しているうえに、「構造改革」で診療報酬全体が大幅に削減されたため、“看護師争奪戦”が激化し、経営難の中小・地方の病院で看護師不足がいっそう深刻化する事態が起こっています。
諸外国に比べて異常に少ない看護師数を抜本的にふやすことが必要です。また、医療機関に入院日数の大幅短縮をせまって看護師の業務量を激増させるなど、給付費削減のために看護現場の矛盾を拡大する「構造改革」の転換が求められます。日本共産党は、地域医療をまもり、すべての患者に安全でゆきとどいた治療を保障するため、看護師不足問題の解決に全力をあげます。
──「7対1」基準による混乱を解決するため、すべての配置基準で病院の診療報酬を緊急に引き上げます。「7対1」基準を特定の病院に限定せず、施設基準を満たすすべての医療機関が継続・取得できるようにします。
──看護師の労働条件を改善するための公的支援、診療報酬改革をすすめ、「夜勤は複数、月8日以内」という人事院判定の早期実現、産休・育休の代替要員確保、院内保育所の設置、社会的役割にふさわしい賃金への引き上げなどをはかります。
──「看護職需給見通し」を見直し、「看護師確保緊急7カ年計画」を策定し、看護職員の大幅増員へ抜本的対策を講じます。「行革」の名による看護学校の切り捨てをやめ、自治体独自の看護師増員対策をすすめます。看護教育制度の抜本的充実をすすめます。
──退職した看護師の再就労を、国が予算を大幅にふやして支援します。
給付費抑制を最優先に、ひたすら国民に負担増を求め、公的保険を切り縮めて市場原理にゆだねる政府・財界の路線では、患者の重症化がすすみ、国の医療費は逆に増大するだけです。日本共産党は、本当に持続可能で安心してかかれる医療制度を確立するため、(1)減らし続けた医療費への国庫負担を計画的にもとに戻す、(2)薬の価格をさらに見直し、異常に高い高額医療機器の価格を引き下げる、(3)予防・公衆衛生や福祉施策の充実に本腰を入れ、国民の健康づくりを推進する──という3つの改革にとりくみます。
小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する国の制度を確立します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させます。子ども医療費の助成制度(現物支給)をおこなっている自治体の国保に対する、国庫負担の減額調整のペナルティはやめさせます。
政府は、歯科の診療報酬を不当に低く抑えて、自費診療・混合診療を拡大しています。日本共産党は、国民の歯の健康をまもり、「保険でよい歯科治療」を実現するため、初再診料の医歯間格差の是正、歯周病の治療・管理や義歯にかかわる報酬の改善、不合理な文書提供業務の見直し、歯科技工士・歯科衛生士の役割の評価、保険治療の大幅な拡大など、制度の改革を推進します。
医療機関に一方的な費用負担を押しつけ、データの民間活用や個人情報保護の不備など、問題点の多い政府の「診療報酬オンライン請求義務化」の撤回を求めます。
安全な医療は国民の切実な願いです。医療事故の検証と再発防止にとりくむ第三者機関を設置します。幅広い医療事故に対応する無過失補償制度をつくります。
日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、政府・与党は、窓口負担増、保険証とりあげ、がん検診に対する国庫補助廃止など、がんの予防や早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。がん検診では各地で有料化、対象者選別、検診内容の劣悪化が問題となっています。所得にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制の確立、未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増と専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策をすすめます。
はしか対策をすすめます。国の責任でワクチンを備蓄し、追加接種が必要な人には公費助成をおこなうなど、感染・流行を防ぐ、あらゆる手立てをとります。
薬害(肝炎、イレッサ、MMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。薬害肝炎について、ウィルス検査の公費助成、医療費助成制度の実施、被害者の生活保障などをすすめます。タミフル問題の実態調査と原因究明をすすめ、責任を明らかにします。
救急体制の確保は、人の生死を左右する課題です。この十年間で救急出動件数が65%も増加しているのに、救急隊員数は9%増にとどまるなど、政府の責任放棄が患者の命を脅かし、救急現場の矛盾を拡大しています。さらに、政府は、救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ」(治療の優先順位の選別)の導入など、「命の格差」を拡大する改悪を検討しています。日本共産党は、16年前から国会でドクターヘリの導入を提案するなど、救急体制の充実をいっかんして要求してきました。救急車の有料化、トリアージ導入などの改悪に反対し、救急体制の拡充をすすめます。
2005年に自民・公明にくわえて民主まで賛成して成立した改悪介護保険法のもとで、高すぎる保険料・利用料、必要な介護サービスのとりあげ、深刻な施設不足と待機者の急増、介護労働者の労働条件の悪化など、さまざまな問題が浮き彫りとなっています。
施設の食費・居住費の全額自己負担化によって、負担の重さにたえきれず、施設を退所したり、利用をあきらめる人があとをたちません。特別養護老人ホームの待機者も全国で38万人をこえていますが、それに療養病床の廃止による施設からの高齢者追い出しが拍車をかけ、深刻な事態となっています。
軽度と認定された人から、介護ベッドや車イス、訪問介護や通所介護など、高齢者の生活と命をささえてきた介護サービスが「予防」や「自立支援」という名のもとにとりあげられています。家族の介護負担は増え、介護を苦にした悲惨な事件や、高齢者の孤独死などもあとをたちません。
介護予防や保健福祉の事業が「地域支援事業」として介護保険に吸収され、公的な責任と行政の財政負担は後退しました。各地の介護予防事業は閑古鳥が鳴いている上に、地域の高齢者の実態を把握し、介護予防や虐待防止などのとりくみの中心になるとされた地域包括支援センターも、介護予防プランの作成で手一杯というのが実態です。社会的な支援を必要としながら、介護制度や社会福祉の網の目からこぼれ、地域のなかで貧困にたえ、困難をかかえて暮らす高齢者が増えています。
その一方で、改悪介護保険法にもとづいて、介護報酬が削減されたため、事業者の経営も苦しくなり、介護労働者の労働条件はますます劣悪になり、辞めていく人があとをたたず、深刻な人材不足が介護現場に広がっています。
いま、介護保険制度は、国民的な存在意義という点でも、制度をささえる人材という点でも、ゆらいでいる深刻な実態となっています。日本共産党は、施設利用料の実効ある軽減措置を講じること、軽度者もふくめてすべての高齢者が人間らしく生きていくことを支える介護サービスを守ること、「地域支援事業」に十分な公費を投入して、地域包括支援センターの活動をはじめ、行政が高齢者の生活にたいする公的責任をしっかりとはたすことなど、改悪法による「介護とりあげ」、負担増などから高齢者を守る改善に全力をあげます。
また、コムスンの不正問題では、「介護難民」が生まれたり、現場で真剣に介護にとりくんできた労働者が雇用不安に陥らないように、自治体自身がサービスを提供することもふくめて、国が自治体を支援し、公的な責任をはたすことを求めます。コムスンのような「ディスコも介護も同じ」といい、違法脱法行為をくりかえしてきた業者を、“市場原理にまかせたほうが福祉サービスの質が向上する”と言って業界最大手にした国の責任は重大です。介護をはじめ社会保障を「市場原理」「規制緩和」一辺倒の世界にしようとしてきた「構造改革」をあらため、利用者の権利と生活を守り、利用者の立場にたった介護サービスにしていくために、今回のコムスン問題の教訓を政治にいかします。
さらに、民主党の強い要求で検討されてきた介護保険料の徴収年齢の引き下げや障害者福祉の介護保険への統合、財界などが主張している利用料の2割への引き上げ、軽度と認定された人を介護保険の対象から除外するなどの、さらなる介護保険の大改悪にはきっぱりと反対します。
そして、介護を受ける人も、介護をする人も、誰もが安心して利用できる介護制度の実現にむけて、次のような改革を提案します。
──国庫負担をふやし、介護保険料を抑えるとともに、利用料・保険料の減免制度をつくります。
──保険料・利用料のあり方を、支払い能力に応じた負担にあらためていく
──必要な介護を利用して在宅で生活をつづけることをさまたげている要介護認定と利用限度額のあり方を抜本的に見直し、改善します。
──特養ホーム、生活支援ハウスなどの計画的整備、ショートステイの確保、グループホームや小規模多機能への支援など、在宅でも施設でも、住み慣れた地域で安心して暮らせる基盤整備をすすめます。
──地域に暮らす高齢者の生活を行政がつかみ、総合的にその生活をささえていくために、地域包括支援センターの活動などを充実させます。
──介護・医療・福祉などの連携をすすめ、国と自治体の責任で高齢者の健康づくりをすすめます。
──介護労働者の労働条件をまもり、改善するために、介護報酬の改善などにとりくみます。
──これらの財源を確保するために、介護給付費の国庫負担割合を計画的に50%まで引き上げることをめざします。当面ただちに、25%から30%へと引き上げます。
06年4月に障害者自立支援法が施行され、福祉サービスや自立支援医療(更生、育成、精神通院医療)に原則1割の「応益負担」が導入されました。障害者が人間としてあたりまえの生活をするために必要な支援を「益」とみなして負担を課すという「応益負担」は、憲法や福祉の理念に反します。障害が重い人ほど負担が重くなり、負担に耐えられない障害者はサービスを抑制しなければならず、将来を悲観した親子心中事件まで起きるほど、障害者と家族が苦しめられています。報酬単価の引き下げや日払い化で施設・事業所の経営は苦しくなり、廃園に追い込まれた施設もあります。「福祉は人」なのに、福祉労働者の離職や労働条件の悪化が深刻になっています。
こうした現状にたいして、史上空前の運動で障害者自立支援法を見直せと立ち上がった障害者団体の努力などによって、政府も、08年度までの期限付きですが、利用料を軽減するなどの1200億円の「特別対策」を実施せざるをえなくなりました。
日本共産党国会議員団は、06年、全国256の障害児者施設・事業所の協力でアンケート調査を実施し、2回にわたる「緊急要求」を発表しました。国としての実態調査を小泉首相(当時)に約束させました。国のこの調査でも負担増を理由に入所・通所施設の利用を中止した人が1625人(07年2月政府調査)にも達していることが判明しています。
障害者自立支援法は“自立支援”どころか“自立阻害”の法律であることがますます明らかになっています。日本共産党は、障害者自立支援法の大幅見直しと「応益負担」の撤回を求めます。
障害者予算の抜本的な増額を求め、在宅や施設サービスを大幅にふやすなど、地域生活の基盤整備を集中的にすすめます。小規模作業所への支援策を、国と自治体で講じます。施設・事業所への報酬を増額し、日額払いを月払いに改めます。障害程度区分認定を実態に見合ったものに改善します。大企業に法定雇用率を守らせるなど、就労の保障をすすめます。
介護保険料の徴収年齢を引き下げて、国民に負担増を求めるとともに、障害者福祉のサービス水準の低下も招く、介護保険と障害者福祉の「統合」に反対します。
無年金障害者への特別給付制度が05年4月から開始されていますが、障害基礎年金と同額に改善するとともに、年金制度の枠内で解決することを求めます。
交通や建物などのいっそうのバリアフリー化をすすめます。
在宅投票制度の対象拡大、政見放送の字幕表示、点字広報や点字記載の投票用紙の配付など、障害者の参政権を保障します。
難病、発達障害、高次脳機能障害など、すべての障害児者を対象とする総合的な「障害者福祉法(仮称)」を制定します。「障害者差別禁止法(仮称)」を制定し、障害者の「全面参加と平等」を実現します。
「障害者権利条約」が国連で採択されました(2006年)。日本でも、条約の批准が求められています。障害者自立支援法をただちに見直し、障害者差別禁止法や障害者福祉法を制定するなど国内法制を整備し、条約を批准させることが不可欠です。日本共産党は障害者団体と力を合わせて運動をすすめます。
2006年、政府は難病のパーキンソン病と潰瘍性大腸炎の患者9万人を医療費助成制度から切り捨てようとしましたが、大きな世論と患者団体などの運動で断念しました。社会保障予算削減のために、難病患者さえ切り捨てる政府のやり方は許されません。難病関係予算を抜本的に増額し、新規の難病認定をすみやかにすすめ、治療研究をすすめます。すべての難病患者や長期慢性疾患者、小児慢性疾患児の医療費助成制度を抜本的に拡充します。
生活保護の受給世帯は109万世帯(07年3月)に達し、史上最高を更新し続けています。生活保護制度は、セーフティーネットの最後の砦であり、国民の生存権=「健康で文化的な最低限度の生活」の水準を具体化したものです。
ところが、日本の生活保護の捕捉率(生活保護が必要な水準にある世帯のうち、実際に何世帯が生活保護を受給しているかの割合)はヨーロッパにくらべて極端に低いことが多くの研究者から指摘されています。国が、給付費を抑制し、国の負担をおさえようと、生活保護法にも違反するような福祉行政を自治体の現場におしつけているからです。貧困が広がるいま、必要な人すべてが受けられる制度にこそ、改善すべきです。
生活保護費の抑制のために、自治体では生活保護の受給希望者に申請書さえ渡さない違法な「水際作戦」や、保護開始後、生活が軌道にのっていないのに無理やり保護の辞退届を書かせるなどの事態が広がっています。生活保護法にも違反した行為や無法な指導の中止を求め、必要な人がきちんと生活保護が利用できるようにします。
07年から、持ち家を持つ高齢者に不動産を担保にお金を貸し付け、それを使いきるまでは生活保護を受けさせない「要保護世帯向け長期生活支援資金=リバースモーゲージ」がはじまりました。08年度は、07年度見送られた生活扶助基準の引き下げ、級地の再編などの本格的な制度改悪がねらわれています。生活保護の基準は、非課税限度額や就学援助など、各種制度の目安や基準になっており、生活保護水準の切り下げは、保護を受給していない世帯にも、大きな影響をおよぼします。日本共産党は、こうした改悪の中止を求めるとともに、廃止された老齢加算、削減中の母子加算の復活を求めます。
行政が、貧困の実態を正しく把握することも重要です。ところが、日本では1965年を最後に、生活保護が必要な水準の世帯数の把握がおこなわれていません。イギリスでは、3年ごとに捕捉率を公表しています。国が貧困をなくすという立場にたてるかどうか、姿勢が問われています。国として貧困、生活保護の捕捉率などの実態調査をおこなうことを求めます。
母子家庭などに支給される児童扶養手当の受給者は、過去最高を更新しています。母子家庭は、不安定雇用、低所得をしいられ、その平均収入は全世帯の平均収入の約4割です。まさに児童扶養手当は命綱であり、自民、公明、民主の賛成で決められた、08年度から実施予定の児童扶養手当の大幅削減(最大で2分の1)の中止を求めます。
司法の場で、くりかえし国の審査方針が批判されている原爆症認定について、機械的な切り捨て方針を廃止し、放射線の影響が否定できない疾病・症状については認定するなど、被爆者の実情に即した新しい基準に、緊急に改めます。死没者補償の実施、国家補償の被爆者援護法への改正、被爆二世対策の拡充をすすめます。在外被爆者が居住地から、被爆者健康手帳の取得や原爆症認定申請ができるようにします。
全国には13ヶ所の国立ハンセン病療養所があります。入所者は3000人を割り、高齢化と身体の不自由さが年々すすんでいます。2001年の熊本地裁判決とハンセン病問題対策協議会での「基本合意」「確認事項」にもとづき、国として、入所者の医療・生活保障の拡充をすすめることをはじめ、人権の保障は緊急の課題です。
不足している医師・看護師の確保・増員をはかり、入所者の医療や介護の抜本的な拡充をすすめることを求めます。重症化している入所者の夜間介護体制の充実を求めます。
療養所ごとに「将来構想」づくりがすすめられています。国は、入所者の願いを反映する療養所を実現するために、積極的で万全の支援と保障につとめるべきです。そのためにも日本共産党は、療養所の入所者自治会などのつよい要求である「ハンセン病問題基本法(仮称)」の実現に力をつくします。
退所者が安心してかかることのできる医療制度の拡充・確立を求めます。
さきの戦争で犠牲になった「中国残留孤児」たちは、国の謝罪と生活支援を求め、全国で訴訟をたたかっています。07年1月、安倍首相は政府の対応の不十分さを認め、「孤児」たちに「日本に帰ってきてよかったといえる支援策づくり」を約束しました。人間としての尊厳にふさわしい社会的支援を、政府が確実におこなうことを強く求めます。
シベリア・モンゴルなど抑留者への未払い賃金問題の早急な解決をはかります。
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