2025年1月29日(水)
きょうの潮流
「楽しくなければ、テレビじゃない」をスローガンにして視聴率競争に血道を上げていた。そこまでやらなくても、と世間からたたかれながら…▼フジテレビの元プロデューサーが著書で語っていました。バラエティー偏重、いじめや暴力、セクハラもおかまいなしのお笑い番組。視聴者の刺激をあおって数字を稼いできましたが、いまや凋落(ちょうらく)ぶりは甚だしい▼視聴率は低迷し、昨年1月期のゴールデン帯では民放キー局の最下位に転落。テレビ界に衝撃が走りました。タレントや番組出演者らの人格や人権を無視してきた「文化」は社の体質にも▼「人権侵害が行われた可能性がある事案」。タレント中居正広氏が女性への性加害を起こしたとされる問題をめぐるやり直し会見。フジテレビの港浩一社長はそう述べて「人権への認識が不足していた」と謝罪しました▼会見では女性への対応が至らず、放送業界の信用失墜にもつながりかねない事態を招いてしまったと。中居氏への聞き取りが不十分だったうえに社内でも共有されず、中居氏出演番組を続けた失態。この問題をめぐっては同局幹部の関与疑惑も。性暴力や人権を軽視する巨大メディアグループの姿勢がどれだけ社会に悪影響を与えるか▼民放連会長でもあるフジテレビの遠藤龍之介副会長はテレビ70年の節目にこう語っています。「人間の心の中に共通項はあるはずなので、それをいかにして見つけるかが、これからの放送に求められている」。それは何よりも人権を守ることです。