2025年1月23日(木)
きょうの潮流
ふり返れば、いつもあの時の光景を思い出します。うす暗いベンチ裏で、黙々とグラブや靴を磨く姿。選手として、やるべきことをやる。そんな信念が、背番号51からにじみ出ていました▼日本のプロ野球史上初の200本安打を達成した日でした。快挙にもかかわらず20歳の青年は物静かに。1994年、イチロー選手は独自の振り子打法でヒットを重ねていました。野球への情熱と向上心。それは日米で前人未到の記録を成し遂げていった歩みにつながっていきます▼翌年、神戸市内の球団寮で阪神大震災に遭遇。30年目の今年、「初めて命について考えさせられた時間だった」と語りました。今も神戸は特別な場所で、これからも自分なりに進んでいく姿が、誰かのきっかけや支えになればうれしいと▼日本野球に続き、米国の殿堂入りの栄誉を受けたイチローさん。日本人野手として初めて米大リーグに挑んでから25年、もっと世界をめざす日本選手が増えてほしいと呼びかけます▼現役引退後は高校球児の指導にも汗を流します。そこで訴えているのは、みずからの感性を大切にすること。グラウンドで求められる、さまざまな判断。感じ、考え、動くことの重要さを▼データに縛られた現代野球への警鐘は、常識とされるものに挑み、努力や鍛錬を積んで壁を乗り越えてきたプロ人生に裏打ちされています。相手に寄り添う感性は社会に出てからも役に立つと教えるイチローさん。今も野球を通じて自分ができることを模索する日々です。