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2024年11月21日(木)

主張

リニア中央新幹線

必要性疑問な巨大工事中止を

 リニア中央新幹線工事が行き詰まっています。

 10月、東京都町田市の小野路工区の調査掘進地点に近い民家の庭から水と気泡が噴出し、事業者であるJR東海は、「工事との因果関係を調査する」として工事を中断しました。

■各地で影響が深刻

 8月には東京都品川区の目黒川で、北品川工区での調査掘進が原因とみられる気泡が発生、5月には岐阜県瑞浪(みずなみ)市大湫(おおくて)町の井戸で水位が低下するなどの影響が確認されています。

 東京・品川と新大阪(438キロ)を結ぶリニア中央新幹線は、現在、品川―名古屋間(286キロ)の工事が進められています。同区間の約8割はトンネルで、都市部では地上から40メートル以深の大深度トンネルを掘り、途中、3000メートル級の山が連なる南アルプスを東西に貫く超巨大事業です。

 前述の事例だけでなく、▽人口62万人を抱える静岡県大井川流域での水枯れ、異常出水▽東京外環道工事で起きたような陥没の危険▽東京ドーム約50杯分にもおよぶ膨大な残土の処理―など問題が山積しています。残土には重金属が含まれるうえ、盛り土が大雨などで崩落する危険が指摘されています。処理場所が決まっていないところも多く残されています。

 沿線の自然環境を壊し、住民の生活・生業(なりわい)を破壊する懸念が深刻です。

 安倍晋三自公政権は2016年、国会でのまともな審議もせずにリニア新幹線への3兆円の財政投融資を決めました。品川―名古屋間の総工事費は5・5兆円だったのが1・5兆円増え7兆円以上となりました。今後、工期が延び、工事費が増えるのは必至で、財投が償還されなければ国民に負担がのしかかります。

■開通見通し立たず

 JR東海は昨年暮れ、品川―名古屋間の開業時期27年を断念すると発表しました。大深度トンネル工事は、北品川工区と愛知県坂下西工区でシールドマシン(掘削機)の不具合などで調査掘進がたびたび中断。用地買収が進まない区間も存在し、開業時期の確かな見通しはたっていません。

 反対運動を続ける「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」は2月、工事の進み具合(進捗〈しんちょく〉率)は10~20%程度と推定し「今後、開業までにどれほどの時間を必要とするか想像を絶する」との見解を発表しました。

 岸田文雄首相(当時)は7月、三重県亀山市のリニア駅候補地を訪問し、品川―新大阪の全線開業を最短で37年に実現する目標を改めて掲げました。品川―名古屋間の開業も見通せないまま、13年後の全線開通表明は極めて無責任です。

 リニア新幹線は既存の新幹線と比べ4倍の電力を消費するとされ、省エネ化に逆らうものです。自公政権は、巨大災害時に既存の新幹線が使えない事態の代替として必要だとしますが、そうした大災害では、むしろリニアこそ惨事を起こす危険が現実的です。

 品川―名古屋間の最短時間は現行、東海道新幹線で約1時間半。リニアでは40分といわれます。50分の短縮のために巨額な予算を投入し、自然環境や沿線住民の生活に深刻な影響を与えるのか―事業者や政府は冷静に考え直しリニア事業をただちに中止すべきです。


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