2024年11月17日(日)
主張
大深度地下使用法
安全安心脅かす法律は廃止を
リニア中央新幹線の地下トンネル工事が行われている東京都町田市の住宅の庭で10月に水と気泡が湧きだしたことから、JR東海は掘削工事を中断し調査をしています。
工事に使っている掘削機(シールドマシン)は、土を削りやすくするため、気泡剤を放出しながら動きます。住宅の庭で採取した水からは、気泡剤に含まれる界面活性剤が検出されており、工事が原因であることが濃厚です。
8月には、リニアの地下トンネル工事が進む東京都品川区の目黒川でも気泡が発生しています。
■崩壊した安全神話
リニアと同じシールド工法による東京外郭環状道路(東京外環道)の地下トンネル工事では、2020年に東京都調布市の住宅地で陥没事故が起きました。この事故の前にも付近の川で気泡が確認されています。
JR東海は原因を徹底究明し、その結果と対策を住民に説明すべきです。
看過できないのは、これらのトンネル工事が「大深度地下使用法」に基づいて行われていることです。
同法は、地下40メートル以深等の「大深度地下」は「通常使用しない空間」であって「地上に影響を及ぼす可能性は低い」などと決めつけ、地権者の同意も補償もなしにトンネル工事などを行えるようにしたものです。00年に日本共産党を除く各党の賛成で成立しました。
日本共産党は当時、▽リニア新幹線や外環道の建設を見込んで大深度地下使用を制度化するものである▽大深度地下についての十分な科学的、民主的な調査研究をしないまま事業推進を第一義にしている▽大深度地下使用の認可手続きに地権者など国民の意見が反映される保証がない―として反対しました。
その後の国会でも大深度地下工事の危険性を繰り返し追及してきましたが、政府は「地上への影響は生じない」などと強弁し、安全上問題はないとの立場を取り続けてきました。
しかし、陥没事故や気泡の発生をはじめ、シールドマシンの故障なども相次いでおり、大深度地下工事の「安全神話」は崩壊しています。
地権者や周辺住民が安全安心に生活する権利を脅かし、補償の必要もないとする大深度地下使用法は廃止しなければなりません。
■共産党が法案提出
こうした事態を踏まえ、日本共産党国会議員団は今年10月、大深度地下使用法の廃止法案を参院に提出しました。
内容は▽大深度地下使用法は廃止するものとし、政府は施行後1年以内に必要な法制上の措置をとる▽既に大深度トンネル工事が進み、同法廃止後も事業を継続しようとする場合、事業者は地権者の同意を得なければならず、その間の工事は中断する▽以上にかかわる事業者の損失は適正に補償する―です。また、地下工事により土地の価値が減少した場合の損失も適正に補償されるようにし、大規模地下開発による災害発生防止のための措置強化を盛り込んでいます。
完全に行き詰まっているリニア新幹線や東京外環道の工事を中止させるとともに、大深度地下使用法を廃止するため運動と世論を大きくする必要があります。