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2024年11月15日(金)

「米騒動」・世界的な食料供給不安定化

自給率向上が政治の焦点に

早期50%回復で5党一致 農業者直接支援創設でも

無策・逆行続ける自民党政治 転換急務

 総選挙で与党が過半数割れを起こす下、農業分野でも要求実現のチャンスが広がっています。多くの政党が食料自給率50%を目指すことを掲げ、そのための農業者への直接支払い制度の創設にも言及しています。(鈴木平人)


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(写真)「政府は米の安定供給に責任を持て」と声をあげる人たち=9月10日、農水省前

 日本消費者連盟が選挙期間中に各政党に対して行ったアンケートでは、食料自給率目標について、日本共産党が「早期に50%を回復し60%を目指す」と回答したのをはじめ、立憲民主党は「まずは50%」、国民民主党は「50%」、社民党は「早期に50%」、れいわ新選組も「まずは50%」と回答。それに対し自民党は記述なし、公明党は45%、日本維新の会が「検討中」と答えています。多くの政党が、食料自給率は当面50%を目指すことで一致しています。

 各党は自給率を高めるための具体的な方策として、農業者への直接支払い制度の創設にも言及しています。共産党は以前から一貫して「価格保障および所得補償の確立」を提案してきましたが、今回の総選挙では、「新たな直接支払制度の構築」(立民)、「食料安全保障基礎支払」(国民)、「戸別所得補償制度の復活」(社民)、「欧米諸国並みの手厚い生産者補償」(れいわ)と、各政党とも直接支払い制度の創設を提案しています。

「亡国の農政」

 スーパーでの米不足・高騰となった「米騒動」、気候危機や世界情勢の不安定化に伴う食料供給への注目を背景として、各党が食料自給率の向上を掲げていると考えられます。そもそも、食料自給率が先進諸国最低の38%まで低下したのは、自民党による「亡国の農政」が原因です。

 政府は1960年代以降、米国に言われるがままに農産物の輸入自由化を推し進め、日本の農業を衰退させてきました。近年は、米づくりは時給10円、畜産・酪農は赤字経営という状況が続く中、どこも後継者の確保に苦労しており、農業者の平均年齢は67・9歳(2021年)と高齢化しています。

 本来、政治にはこうした現状を打開することが求められていますが、政府は今年行った食料・農業・農村基本法の改定で、食料自給率向上の概念を投げ捨て、さらに輸入に頼ろうとしています。今後の食料生産は、あいも変わらず規模拡大と輸出向けを推進と考え、今の日本の食を支えている多くの中小農家を支えようとはしていません。

 そうした政策の下で起こったのが、この夏以降の米をめぐる異常事態でした。スーパーの棚からは米が消え、価格は去年の1・5~2倍ほどに高騰しました。社会福祉協議会が実施している食料支援の活動で米を提供できないなど、異常事態のしわ寄せは困窮世帯に特に表れています。

 日本共産党は国会でも、早くから米が足りない事態を指摘してきましたが、自民党は「米の需給がひっ迫しているとは考えていない」との答弁を続け、何の対策もとりませんでした。

軍事費が逆転

 総選挙で議席を増やした政党間で政策の一致が見られることは、市民が訴え続けてきた要求の実現のチャンスでもあります。しかし、問題は政策実現のための財源です。

 年々膨れ上がる軍事費は他分野の予算を圧迫し、農林水産費にも影を落としています。80年には農水費3・58兆円、軍事費2・23兆円だったものが、度重なる軍事費の増大により80年代末には逆転し、24年度予算では農水費2・27兆円に対し軍事費7・94兆円となり軍事費は農水費の3・5倍にもなっています。

 食料危機が現実のものとなる中、食料自給率の向上は急務です。その実現のためには、世論と運動を広げ、米国に言われるがままの軍拡、大企業を優先し中小農家を切り捨てる政治の姿勢を転換し、安定的な食料供給にむけた抜本的な農業支援の拡充が求められています。


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