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2024年9月21日(土)

賃上げと一体に、労働時間の短縮を

働く人の自由な時間を拡大するために力を合わせましょう

2024年9月20日 日本共産党

 日本共産党の田村智子委員長が20日の記者会見で発表した「賃上げと一体に、労働時間の短縮を 働く人の自由な時間を拡大するために力を合わせましょう」と題する政策は次のとおりです。

なぜ、いま労働時間の短縮が必要なのでしょうか

 “自由な時間が欲しい”――切実な声がひろがっています……「毎日遅くまで残業で、帰るとすぐに寝てしまいやりたいことができない」(青年労働者)、「仕事と育児、家事に追われ睡眠時間を削っている。自分の自由な時間が欲しい」(働く女性)、「自分を向上させる時間が欲しいが毎日クタクタで余裕がない」(教員)、「学費と生活費のため深夜バイト、徹夜バイトに追われ勉強する時間がない」(学生)―など、いまの日本社会のなかで、「人間らしく働きたい」「もっと自由に生きたい」「自身を成長させたい」、そのために「自由な時間」が欲しいという切実な声が広がっています。それは、自分勝手でもなければ、封じ込めて我慢しなければならない思いでもありません。

 長時間労働是正、自由な時間の拡大は、日本社会の重要課題です……日本のフルタイム労働者の労働時間は、ヨーロッパ諸国に比べて年間300時間程度も長く、いまなお「過労死」が大問題になっています。これまで長時間労働を是正する運動は、「サービス残業」の規制やブラック企業告発など一定の前進をかちとってきました。その到達点をふまえながら、さらに人間らしい自由な生活時間、働く人の自由な時間を確保するために労働時間の短縮のとりくみを発展させることが求められています。

 労働時間の短縮は、余暇や趣味を楽しみ、豊かな教養を育み、社会活動にとりくむなどのために自由な時間を確保するとともに、男女がともに家事や育児、介護などのケアを分かち合える社会にするためにも、いま日本社会に求められている重要課題です。

 ジェンダー平等のためにも労働時間の短縮が求められます……長時間労働は、ジェンダー不平等と結びついています。男性を中心とした正規雇用にもとめられる生活を犠牲にした長時間労働は、女性が家庭におけるケアを担い、非正規雇用を選ばざるをえない状況を生みだしています。労働時間を短縮すると同時にケアの社会化と分担など働き方を変えていくことはジェンダー平等社会の実現に欠かせません。

 自由な時間の拡大は日本経済の発展にもつながります……長時間労働は、経済社会全体には大きな重荷になっています。働く人の自由な時間が増えることは、個人のさまざまな活動を広げ、消費と需要の増大につながります。さらに、個人の心身の健康と、多面的な発達を促し、経済と社会の発展に寄与します。目先の利益の追求で働く人の時間を奪うことは、人間らしい生活を阻害するとともに、経済社会の健全な発展にも逆行しています。

賃上げと一体に、労働時間の短縮をすすめることが必要です

 働く人の実質賃金は、自公政権が復活してからの11年の間に、33万6000円(年額)も減っています。物価の上昇に賃金が追いつかずに生活が悪化する事態が広がっています。労働時間の短縮と賃金の引き上げはセットですすめてこそ、働く人に真に豊かな生活の拡大をもたらし、経済の好循環にもつながります。とくに現在、非正規ワーカーが増大し、ギグワーカーなど働き方が多様化するなかで、すべての労働者の権利を擁護し、賃金の引き上げ、労働時間の短縮を同時にすすめることが急務となっています。

1 「自由時間拡大推進法」を提唱します

 労働時間の短縮は、人間らしい真に豊かな生活を実現するために必要不可欠です。

 日本国憲法の下で制定された労働基準法で「1日8時間」を原則とするとされたのは77年前です。経済力も、技術力も飛躍的に伸びましたが、この労働時間の原則はそのままです。

 しかもいわゆる「36協定」などの時間外労働を許す例外規定がある上に、自公政権が行った労働法制の規制緩和で、裁量労働制、変形労働制、残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル)など、長時間労働を容認・拡大する法律が強行されました。「サービス残業」「名ばかり管理職」「ネットを使った自宅作業」など、違法・脱法の長時間労働も横行しています。「1日8時間」を定めた第1号条約をはじめ労働時間に関するILO条約をひとつも批准していないのは、日本とアメリカだけです。日本は、異常な長時間労働を容認する国、労働時間の短縮で国民の自由な時間を保障していく、という姿勢を持たない国になっています。

 日本共産党は、「自由時間拡大のための労働時間の短縮を推進する法律案」(自由時間拡大推進法案)を提案します。これは労働基準法をはじめ、賃上げとともに労働時間を短縮するために必要な関連法の改正案の総称です。

 この中心は、二つの方向で、人間らしい豊かな生活にしていくための労働時間の短縮をすすめることです。第一は、すべての企業に適用される法定労働時間を、すみやかに「1日7時間、週35時間」に移行するために、国が必要な措置をとることです。第二は、「1日8時間」さえ崩されている現状をただちになくすために、残業規制の強化や違法・脱法の長時間労働をなくす措置をとることです。

(1)「1日7時間、週35時間労働制」をめざします

 現在の8時間労働に休憩時間や通勤時間を加えれば、仕事に係る拘束時間は10~11時間にもなります。これに残業が加われば、さらに大変です。すべての労働者の自由時間を拡大するためには、法定労働時間の短縮が不可欠です。人手不足を理由に長時間労働を放置してきたことで人手不足がさらに加速する事態も広がっています。働く人の自由な時間を拡大するとともに、男女がともに家事や育児、介護などのケアを分かち合える社会にするうえでも、「1日7時間、週35時間」への法定労働時間短縮をめざします。

●「1日7時間、週35時間労働制」にすみやかに移行することを国の目標にします

●この目標達成のために、政府に実施計画を策定することを義務づけます。実施計画には、中小企業への支援策、介護、建設、運輸など人手不足の産業で労働条件の改善とともに労働時間短縮をすすめる対策をはじめ、1日7時間労働に移行できる条件整備を盛り込みます

(2)健康と生活時間を奪う働かせ方を規制します

●時間外・休日労働の上限を規制します。1日2時間を超える残業割増率を50%に引き上げます

 時間外労働の上限を例外なく「週15時間、月45時間、年360時間」に規制します。現状は、「特別の事情のある場合」に「月100時間未満」などと「過労死基準」さえ超える残業が容認されていますが、こうした規定を撤廃し、残業時間の上限を順守させるようにします。割増賃金について、残業の抑制という本来の役割を発揮できるように、1日2時間、週8時間を超える残業、3日以上連続の残業の割増率を50%にします。

●連続出勤・休日出勤規制を強化します

 現行法は、「4週間で4日の休日」としているために、最大48日もの連続出勤が可能になっています。完全週休2日制をめざすとともに、法定休日を「7日ごとに1日」として、連続出勤・休日出勤を規制します。1日の労働が終わり、次の労働がはじまるまでの休息時間を確保する連続11時間の勤務間インターバル規制を導入します。

●「サービス残業」の根絶をはかります

 違法なただ働き残業(「サービス残業」)が後を絶ちません。企業に罰則を科すとともに、「サービス残業」が発覚したら、労働者に支払う残業代を2倍にします。「サービス残業」が企業にとって「割に合わない」ものにすることで、長時間労働の抑止力とします。

●年次有給休暇を最低20日に増やすとともに、有給の傷病・看護休暇を創設します

 年次有給休暇を現行の最低10日から20日に増やし、一定日数の連続取得と完全消化を保障させます。傷病や家族の看護の心配によって年休取得を控えることのないように、有給の傷病・看護休暇を創設し抜本的に拡充します。第136条(不利益取り扱いの禁止)に罰則を定め、年休取得妨害を厳格に取り締まります。

●企画業務型裁量労働制の廃止をはじめ裁量労働制を抜本的に見直し、残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル)を廃止します

 ホワイトカラーを際限のない長時間労働に追いやる企画業務型裁量労働制を廃止します。専門業務型裁量労働制については、真に専門的な業務に限定し、その要件と運用を厳格化します。事業場外みなし労働時間制についても、その要件と運用を厳格化します。対象となる労働者を労働時間規制の保護から全面的に適用除外にする制度である高度プロフェッショナル制度は、厚労省の調査でも適用労働者が長時間労働になっていることが明らかになっており、廃止します。

●労働基準監督官を増員し、体制の拡充をすすめます

 労働時間の短縮をすすめるうえで、企業にルールを守らせる労働行政の強化が不可欠です。労働基準監督署の体制強化や相談窓口の拡充などをはかります。労働基準監督官数は、ILO基準(「先進国」の場合、1万人の労働者ごとに1人の監督官を配置する)にそって2倍以上に増やします。

(3)あらゆる働き方において、実態を踏まえて労働法を適用して労働時間短縮と賃上げをすすめます

●フリーランス、ギグワーカーの時短と賃上げをはかります

 フリーランスやギグワーカーなど「雇用関係によらない働き方」が急増し、従事者は460万人を超えています。しかし仕事の発注者との雇用契約が不明確なことを理由に労働法制の保護の対象外にされ、長時間労働、低賃金、無権利の状態に置かれてきました。フリーランスやギグワーカーの時短と賃上げを実現するには、その労働者性を認め、労働法制、労働時間規制、最低賃金適用の対象とすべきです。

 日本共産党は、すでに「非正規ワーカー待遇改善法」を提案(2023年10月発表)し、労働者性の判断基準を見直し、労働者としての認定をすすめ、団結権、団体交渉権、ストライキ権を保障すること、労災補償を実現・拡充することなどを提案しています。

●スポットワーク(スキマバイト)に労働法制を厳格に適用します

 プラットフォームを介して短時間・単発で働く、スポットワーク(スキマバイト)という働き方が急速に広がっています。就業先と雇用契約を結び、労働者として労働法の保護を受けることになっていますが、契約時の労働条件と実際の労働条件が異なるなどトラブルも多発しています。労働者の生活と権利を守るために、労働法制を厳格に適用します。

(4)教職員、公務、ケア労働における長時間労働の是正、「残業」を減らす措置をとります

 教職員の長時間労働が大問題になっています。公務労働でも、政府が定員の削減を繰り返してきたために、業務量の増大に人員が追い付かず、残業時間が民間より増えるなど長時間労働がまん延し、ケア労働における長時間労働も深刻化しています。

教職員を増やし、異常な長時間労働を是正します

 国の「教員勤務実態調査」(2022年)でも、教員は月曜から金曜まで毎日11時間半も働き、土日の出勤も多くあります。教員の長時間労働は、子どもの教育にも深刻な問題であり、「教員不足」の最大の原因にもなっています。

●教員数を抜本的に増やして、業務量を減らして、長時間労働を解消します

 教員1人あたりの授業負担は長い間「1日4コマ」(小学校)とされていましたが、90年代以降、「週休2日制」「ゆとり見直し」などを「理由」に、この基準を国が投げ捨て、教員の授業負担を増やし続けました。小学校では、多くの教員が1日5コマ、6コマの授業をしています。授業準備や採点、打ち合わせや報告書などの校務に追われ、長時間残業は必至になっています。教員の持ち時間数上限を4コマを目安にして、教員を計画的に増員します。

●公立学校の教員を「残業代ゼロ」にした法律(給特法)を改め、残業には残業代を支払います

 「残業代ゼロ」にしているために、誰が何時間残業したのかまったく分からない状態が続き、長時間労働が野放しにされています。残業代をきちんと払う当たり前の制度にし、労働時間の把握と健康管理をはじめ専門職として働くルールを確立します。

●学校の業務削減――現場に負担を与えている国・自治体の教育施策の削減・中止、学校現場での不要・不急の業務の削減、部活動の負担軽減などをすすめます

●公立、私立での非正規教職員の正規化と待遇改善をすすめます

公務労働の定員削減をやめ長時間労働を是正します

 国は、「5年間で10%の定員削減」を20年近くも続けてきました。新たに生じた仕事に必要な人員は手当てされるものの、翌年からは、その人員も削減対象にしています。そのため仕事量に対し恒常的に人手が不足し、多忙化や長時間労働が深刻となっています。自公政権は地方に対しても、国と同様の人員抑制を求めてきました。残業時間は、国家公務員も、地方公務員も、民間の1・3倍程度になっています。そのために、公務の現場でも長時間労働による離職や精神疾患が増え続けるとともに、非正規職員の急増を招きました。

●総人件費抑制策を転換し業務量に応じた人員確保・人員増をすすめます

 総定員法を廃止し業務量に応じて各府省が定員を設定できるようにします。当面、定員削減目標を撤廃し、機械的な定員削減をやめさせます。

 現に常勤職員並みに働いている各府省の非常勤職員の常勤化をすすめます。常勤化を望まない非常勤には現在の雇用条件を維持することを保証します。

ケア労働における賃上げ・労働条件の改善をすすめ、人員不足を解消し、長時間労働を是正します

 医療、介護、保育、福祉などケア労働の現場では人手不足が深刻なのに求人をしても応募がなく慢性的な人員不足で、過労死水準の長時間労働、健康リスクをともなう夜勤労働をよぎなくされています。その原因は、仕事の量と責任に比べて処遇が低すぎるためです。また医療、介護の現場では変形労働時間制のもとで2日分の労働を連続して行う2交代制夜勤が常態化していますが、労働者の体調不良や患者・利用者の安全にも影響を及ぼす事態となっています。1日単位の労働時間の上限規制や月単位の回数規制など抜本的改善は急務です。医師不足の原因は社会保障抑制政策のもとで養成数が抑えられてきたことにあります。ケア労働全体の長時間労働是正のためには社会保障拡充へ政策の転換が必要です。

2 労働時間の短縮で、ジェンダー平等をすすめます

 6歳未満の子がいる共働き世帯の妻と夫の生活時間を比べると、家事関連時間は妻、仕事時間は夫に偏っています(内閣府「男女共同参画白書」2023年版)。その結果、30~40代の働く女性の仕事+家事時間は10時間超です(NHK「国民生活時間調査」20年)。日本人は世界一睡眠時間が短いとされますが、その中でも女性の方が男性より睡眠時間が短くなっています。「頭の中が常に仕事と家事のことでいっぱい。何も考えなくていい時間が欲しい」―働く女性の切実な声です。

 ジェンダー平等を実現するためには、労働時間全体の短縮によって、男性がよりケア(家庭における無償労働)を担えるようになり、女性が担っているケアの負担を減らすとともに、ケアの社会化を進めること、労働時間を短縮しても生活できる賃金を確保することが必要です。

●労働時間の短縮をジェンダー平等実現の柱に位置づけて推進します

●男女の賃金格差をなくし、コース別人事管理制度など実態として女性を差別する間接差別をなくします。非正規雇用への不当な差別・格差をなくし、正規雇用との均等待遇を実現します

●自由な時間を増やし、人間らしく生活するためにも、ケアの社会化をすすめます。保育・学童保育の拡充、介護サービス、障害福祉の縮小・切り捨て・負担増から拡充への転換など、安心できる社会保障制度にしていきます

3 政治の責任で賃上げをすすめ、労働時間短縮と同時にすすむようにします

 自民党政権復帰後に実質賃金は年間33万6000円も減りました。実質賃金が減り続けてきたことが、消費も需要も冷え込ませ、経済の停滞を招いています。物価上昇を上回る大幅賃上げを実現しなければなりません。労働時間の短縮と賃上げが同時にすすんでこそ、人間らしい豊かな生活が実現します。

●最低賃金を時給1500円以上にすみやかに引き上げ、平均的な労働時間で月額手取り20万円程度にします。地方格差をなくし全国一律最賃制を確立します

●中小企業の賃上げへの直接支援を抜本的に強化します。最賃法に中小企業支援を位置づけます

●大企業の内部留保に時限的に課税し、中小企業の賃上げ直接支援のための10兆円規模の財源を確保します。大企業の内部留保課税にあたっては、賃上げ分を控除し、課税させない仕組みにして大企業での賃上げも促進します

●ケア労働者の賃金を、国が決めている公定価格や報酬を見直すなどして、引き上げます

●男女の賃金格差を是正して、賃金の底上げをはかります

4 「1日8時間」の原則さえ骨抜き・形骸化をねらう労働基準法大改悪に反対します

 いま政府、財界は、労働条件の最低基準を定めた労働基準法を解体してしまう、大改悪を狙っています。厚生労働省は、「労働基準関係法制研究会」を設置していますが、そこでは「労使合意」があれば、「デロゲーション(適用除外)」として、労働基準法で定めた「労働条件の最低基準」を守らなくてもいい、とする労働基準法の形骸化が俎上(そじょう)にのぼっています。「労使合意」といっても、“意見さえ聞けば労働者が反対しても使用者の判断が優先される”仕組みさえ検討しています。

 これは、労働者の生命・健康確保のための最も重要な規制である労働時間規制を中心とした労基法を「解体」するものであり、労働者から生活のための時間、健康保持のための時間をさらに奪うものになります。

 労基法の規制、とくに労働時間規制は、不十分な上に順守されず、過労死も頻発しています。いま必要なことは、労働時間規制からの逸脱を拡大するのではなく、その順守を徹底することです。

 政府・財界は、労働者から時間を奪う仕組みを、「多様な働き方」とか「柔軟な働き方」を口実につかっています。しかし、「柔軟な働き方」とは、企業にとって使い勝手の良い働かせ方ではなく、労働者の働き方の自己決定権と生活を保障するものでなくてはなりません。日本共産党は、「1日8時間労働」という原則さえ骨抜きにして、長時間労働をさらにはびこらせる労働基準法の大改悪に断固反対します。


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