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2024年9月13日(金)

主張

長崎被爆体験者訴訟

国は被害矮小化の姿勢改めよ

 国が定めた被爆地域外にいたため被爆者と認められない被爆体験者が、被爆者と認めるよう長崎県・市に求めた裁判で、長崎地裁は9日、44人の原告のうち15人のみ被爆者と認める判決を出しました。被害者を限定、分断するもので、原告はじめ被爆者から落胆と怒りの声があがっています。

 判決は、被爆指定地域外で「黒い雨」により被爆した人がいることを認めました。一方、被爆者の認定に当たっては、原爆の放射線で健康被害が起きる「高度の蓋然(がいぜん)性」(確実性)を証明する責任が原告にあるとし、15人以外は蓋然性が認められず、降雨体験などの証言も「裏付けがあるとまではいえない」として被爆者と認めませんでした。

■認定の限定狙う

 被爆者の認定を国は一貫して狭く限定し、原爆の被害を小さく見せる姿勢をとってきました。「黒い雨」や灰を浴びても、それが健康被害を起こすほどのものだという「科学的な根拠」が証明できる場合に限るのもその一つです。

 しかし、証言にあるように被害は広範囲に及びます。放射性微粒子を含む灰、雨、チリは諫早市、大村市、島原半島でも記録されていました。それらを浴び、がんなどを発症した人さえ被爆者と認めず、79年前に起きたことの立証を原告に求めるのは不合理です。

 2021年、広島高裁は、被爆者とは「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定できない事情の下に置かれていた」者だとし、認定要件から病気の発症も外しました。「黒い雨」や飲食物摂取による内部被ばくの影響を広く認めるべきだとし、「疑わしきは原告の利益に」という方針を示し原告全員を被爆者と認めました。国は上告せず判決は確定しています。

 当時の菅義偉首相は「同じような事情」の人について、「訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう、早期に対策を検討」するとの談話を発表しました。

 一方で、内部被ばくの影響などについて判決には容認できない点があるとして、政府は、(1)「黒い雨」にあったこと(2)がんなどの11の疾病の発症―という新しい要件をつくり、長崎については除外しました。

■確定判決に従え

 確定判決に従わず新基準や分断を持ち込んだ国の責任は重大です。国は確定判決に従い、広島でも長崎でもすべての被爆体験者を被爆者と認めるべきです。

 核兵器の被害の深刻さを認めることが核兵器の非人道性を示すことにつながります。国は被害を矮小(わいしょう)化する姿勢を抜本的に改めるべきです。

 岸田文雄首相は8月9日、被爆体験者と面会し「早急に課題を合理的に解決できるよう」対応策を指示したと語りました。武見敬三厚労相は10日の会見で、長崎県・市などと協議し「適切に対応」「早めに結論が得られるよう取り組む」とのべました。県や市は被爆体験者の救済を再三国に求めており、「合理的」「適切」の意味が鋭く問われます。

 被害者は高齢化しています。国は原爆被害への国家補償と被爆者施策の抜本改善に踏み込むべきです。日本共産党は被爆者の闘いと運動に連帯し、被爆者の要求実現に力を尽くします。


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