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2024年9月10日(火)

きょうの潮流

 原爆の投下は国際法違反である、と宣言した裁判が60年前の日本でありました。「広島、長崎両市に対する原子爆弾による爆撃は無差別爆撃として当時の国際法からみて、違法な戦闘行為であると解するのが相当である」▼1955年、広島と長崎の被爆者5人が日本政府に賠償を求めて起こした原爆裁判です。8年以上かけた判決は原爆の非人道性にも論及。「このような残虐な爆弾を投下した行為は、不必要な苦痛を与えてはならないという戦争法の基本原則に違反している」▼この裁判は連続テレビ小説「虎に翼」にも織り込まれ、主人公の佐田寅子(ともこ)は裁判官の1人としてかかわります。史実が取り入れられているのは、寅子のモデルとなった三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんが結審まで右陪席裁判官を務め、判決文にもその名が刻まれているからです▼きのう被爆をめぐる裁判の判決が長崎地裁でありました。「被爆体験者」とされた人たちが長崎県や市に対し、被爆者と認めるよう求めたもの。地裁判決は原告の一部を被爆者と認定したものの、ふたたび救済に線引きしました▼ドラマの中で寅子は国側の法学者に問います。「米国にも国にも賠償を求められない場合、いま苦しんでいる被爆者はどこに助けを求めればよいとお考えですか?」▼先の原爆裁判は結語で言及しています。国家が開始した戦争は国民の多くを死に導き、傷害を負わせて不安な生活に追い込んだ。「われわれは本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられない」。それは今も。


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