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2024年9月5日(木)

きょうの潮流

 作家の井上ひさしさんは小学生だった冬のある日、親友から届いた絵はがきに心ときめきました。「…家にも学校にも蒸気が通っていて、いつもポカポカです」▼この一行で「夢の都」となった中国・大連。のちにこの地を舞台にした戯曲も書きました。「幼時に焼きついた『大連は夢の都』という文句は、その意味を変えながらであるが、とにかく死ぬまで消えぬ」と(『井上ひさしの大連』)▼いまや世界とつながる港湾、貿易、観光都市として繁栄する大連。しかし過去には名もない漁村が翻弄(ほんろう)されてきた歴史が刻まれています。帝政ロシアによってダルニーと名付けられ、日本統治下では大連と呼ばれ、満州への表玄関として大勢の日本人がゆきかいました。路面電車や建造物をはじめ名残は現在も▼120年前の日露戦争の爪痕も残り、旅順にある刑務所の旧跡博物館には当時の日本軍の足跡が展示されています。伊藤博文を暗殺した安重根(アン・ジュングン)も収監された監獄で抗日運動の英雄も並べられ、訪れる若者らを引きつけていました▼きょうは日露戦争の講和条約が結ばれた日です。この戦争で港と鉄道を獲得した日本は韓国併合とともに大陸侵略を強め、破滅への道を突き進んでいきました▼日清戦争から130年、第1次世界大戦から110年と節目の今年。来年は第2次大戦終戦から80年です。ふり返れば、明治維新後の日本は戦後が新たな戦争を迎える戦前だった時代でした。それをくり返してはならない。「夢の都」の今が教えています。


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