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2024年9月5日(木)

主張

検察違法取り調べ

根底にある「起訴権限」の独占

 検察官は公益の代表者として、わずかな例外を除いて刑事事件の起訴権限を独占しています。しかし、最近、その権限を悪用した事件が続発しています。

 大阪地検特捜部に業務上横領の疑いで逮捕・起訴され無罪となった不動産会社の元社長が、取り調べに当たった検事を特別公務員暴行陵虐罪で訴えた「付審判請求」に対し、大阪高裁は8月、審判に付す決定をし、刑事裁判が開かれます。

 「付審判請求」とは警察官や検察官のような公務員に職権乱用の疑いがあるとき、裁判所が起訴を行い、委嘱された弁護士が検察官役となって刑事裁判を行う制度です。過去22件の「付審判請求」が受理されましたが、検察官が対象となるのは今回が初めてです。

■長時間威圧的捜査

 決定は、検事の取り調べについて「脅迫的な言動を約50分間にわたって行っている」「脅迫としても態様や程度は著しいものがあり、陵虐行為に該当する」と指摘し「あらためて今、検察における捜査・取調べの運用の在り方について、組織として真剣に検討されるべきである」と求めました。

 大阪地検は15年前、冤罪(えんざい)の村木厚子厚生労働省局長を逮捕し、証拠の改ざんまでして検察官が逮捕された過去があるにもかかわらず改善がありません。

 看過できないのは、こうした事例がこれだけではないことです。7月には、東京地検特捜部に逮捕・起訴された太陽光発電関連会社社長が、取り調べで威圧的暴言を受けたことが人格権、黙秘権の侵害にあたるとして損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。

 その際の取り調べは録音・録画されており、訴状では「黙秘したらええやん、損やけどな、黙秘」「家族、どうでもええんかな。破滅的な人生で終わる、それでいいんかな」などと恫喝(どうかつ)されたとしています。

 同月には、横浜地検に逮捕・起訴された弁護士が、黙秘権を行使したのに長時間、侮辱的な取り調べを受けたのは違法だと訴えた裁判で、東京地裁は「人格権を侵害」「黙秘権の保障の趣旨にも反する」として国に賠償を命じました。

■国民の良識反映を

 こうした検察の取り調べ、犯罪立証の仕方の背景にあるのは「自白偏重主義」です。日本の刑事司法を担当する警察・検察が自白を重視し、警察・検察の描いた犯罪の筋にそって“真犯人”を仕立て上げ、証拠集めをする歴史がありました。大川原化工機事件はその典型です。

 これを防ぐには、取り調べの録音・録画の完全な実施、弁護人の取り調べ立会権の確立など捜査の完全な可視化が求められます。さらに根本には、犯罪捜査での起訴・不起訴が検察官に独占されているという問題があります。

 一連の問題を深く顧みるなら、国民から選ばれた審査員が検察官の不起訴処分の当否を審査する検察審査会制度の充実が必要です。同制度は検察官の職務に国民の良識を反映させ、その適正な運営を図ろうとするもので、2度「起訴相当」とされると、検察は起訴しなければなりません。

 検察は、社会正義を貫くため、社会の不正と腐敗を追及・告発する姿勢に立ち返る必要があります。


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