2021年10月29日(金)
“対抗でなく協力を”
ASEAN諸国強調
東アジアサミット
【ハノイ=井上歩、ワシントン=遠藤誠二、北京=小林拓也】東南アジア諸国連合(ASEAN)と日米中など18カ国の首脳が参加する東アジアサミット(EAS)が27日、オンライン形式で開かれました。米国と中国が南シナ海情勢などをめぐって応酬を繰り広げる一方、米中やその同盟国間の対抗の強まりに対してASEAN諸国はそろってASEANのルールと中心的役割の尊重を要求しました。
地域関与で米中が応酬
「秩序への脅威」バイデン氏懸念
EASに5年ぶりに出席したバイデン米大統領は、ホワイトハウスの発表によると、「インド・太平洋地域への永続する関与を再確認する」と表明。「ルールに基づく国際秩序に対する脅威に懸念」を示し、中国を強くけん制しました。
ロイター通信によると、バイデン氏は、台湾海峡における中国の「威圧的な行動を深く憂慮する」とも述べました。
また、新疆ウイグル自治区やチベット、香港における人権を米国として擁護していくと言明したと報じられています。
さらにバイデン氏は、「民主主義、人権、法の支配、公海航行の自由を同盟国・パートナー国とともに引き続き支持する」と述べ、地域への関与強化の決意を強調。また、貿易や国際供給網などをテーマとした「インド太平洋経済枠組み」づくりについて「パートナー国とともに探究する」と表明しました。
これに対し、中国の李克強首相は南シナ海問題について「中国とASEANの共同の努力により、南シナ海情勢は安定を保っており、航行の自由に問題が起きたことはない」などと主張。「地域国家が南シナ海の平和と安定を守るために発揮した努力を尊重すべきだ」などと述べ、米国の地域への関与をけん制しました。
米英豪枠組みで地域が不安定に
インドネシアのジョコ大統領は、大国間の対抗が地域協力を困難にしており、「この状況はだれの利益にもならない」と指摘。「真の協力は信頼を築く」と強調し、“対抗でなく協力”を趣旨とする「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」の実践を呼び掛けました。
ジョコ氏は27日の一連の会合で、EAS参加国が2011年採択の「バリ原則」で友好・互恵関係のルールに合意ずみであることを指摘。「対抗の文化を平和の文化に転換すべきだ」と強調し、東南アジア友好協力条約(TAC)などの地域のルールと国際法の尊重を求めました。
マレーシアのイスマイルサブリ首相はEASで、米国、英国、オーストラリアによる軍事・安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」への懸念に言及。「この地域、とくに南シナ海の不安定化につながりかねない」と述べ、東南アジアを「非核地帯、平和・自由・中立地帯として保護する重要性」を強調しました。
来年に議長国となるカンボジアのフン・セン首相はEASで、「軍事同盟を含む(域外国の)いかなるイニシアチブもASEANの中心的役割を尊重しなければならない」と強調。一連の会合では「大国間の対抗の深まりが、軍拡競争につながり、地域の平和を不安定化させかねない」との懸念を示しました。
フィリピンのドゥテルテ大統領も26日の米国との会議でAUKUSに触れ、「協力を図るASEANの流儀を複雑にしてはならない」と指摘。地域の安全保障構造でのASEANの中心性を強化するものでなければならないと強調しました。
モリソン豪首相は27日のASEAN首脳との会議で「AUKUSは、ASEANとAOIPを支持する豪州の約束を変えるものではない」と釈明。「国際法とルールに基づく秩序を守る決意は変わらない。豪州は核兵器を望まないし、核保有を追求しない。確約する」と表明しました。AUKUSで豪州は原子力潜水艦の配備を計画しています。
ASEANは今年から、関係重視を求める豪州との首脳会議を毎年に定例化。今回、関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に引き上げることに合意しました。豪州は気候、保健、AOIP関連などの分野で1億2400万豪ドル(約105億円)をASEANに支援すると表明しました。