2020年12月5日(土)
主張
香港活動家禁錮刑
野蛮な弾圧許さぬ国際世論を
香港の裁判所が民主活動家の黄之鋒(こう・しほう)、周庭、林朗彦(りん・ろうげん)の3氏に、昨年、不許可の集会を扇動したとして禁錮7月から13月半の実刑判決を言い渡し、世界中で怒りの声が上がっています。政府批判の平和的なデモを呼びかけたことに刑罰を科す野蛮な弾圧です。香港の「一国二制度」を形骸化させる不当判決です。6月末に国家安全維持法(国安法)を制定、施行して以降、中国指導部と香港政府は民主化運動に対する抑圧を一段と強め、香港が物言えぬ社会にされています。国際社会が毅然(きぜん)とした態度を示すべきです。
国安法で物言えぬ社会に
実刑判決は、民主化運動を担ってきた3氏に重罪を科すことで香港市民を恐怖で縛り付けようとする暴挙です。周氏は8月に国安法違反の容疑でも逮捕され、黄氏も他の罪で起訴されています。今後さらに不当な刑罰が加わる恐れがあります。
国安法は「国家分裂」「政権転覆」「外国勢力との結託」などを最高無期懲役の重い刑罰で禁止しています。どんな行為が罪にあたるかの判断は当局次第です。中国指導部や香港政府に対する批判を強権的に封じ込める同法の狙いは、施行後の事態で明らかです。
10月末までに逮捕されたデモ参加者は、国安法以外の容疑を含めて1万人を超えました。二千数百人が起訴され、600人以上が有罪判決を受けました。国安法違反容疑での逮捕者は30人以上です。
民主主義の蹂躙(じゅうりん)は香港社会全体に広がっています。立法会(議会)では4人の民主派議員が資格を剥奪されました。学校では教科書から「三権分立」「民主派」などの言葉が削除され、当局の意に沿わない教員が資格を取り消されました。香港政府や警察を批判してきたケーブルテレビ局のスタッフが解雇され、中国指導部を批判してきた新聞の創業者が起訴、勾留されるなど報道の自由も危機的状態です。
中国指導部が香港で行っていることは社会主義と相いれず「共産党」の名に値しません。社会主義は「国民が主人公」という民主主義の理念を現実のものとする社会です。日本共産党綱領は、社会主義・共産主義の社会で「さまざまな思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される」と明確にしています。
香港での人権弾圧は単に中国の内政問題ではなく国際問題です。香港の「高度な自治」は1997年、英国からの返還にあたって中国自身が世界に誓った公約です。香港の地位を定めた香港基本法は「言論、報道、出版の自由」「結社、集会、行進、示威行動の自由」を明記しています。中国政府には厳格に守る義務があります。
国連憲章と国際法を守れ
中国は世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言など人権擁護の国際的な取り決めに支持、署名をしています。国民の政府批判を刑罰で禁じることは世界に自ら約束した義務を投げ捨て、国連憲章と国際法を踏みにじる行為です。
3氏への判決について日本政府は「重大な懸念」と「注視」(加藤勝信官房長官)を言うだけでなく、厳しく抗議すべきです。国連憲章と国際法を守れという国際世論で中国を外交的に包囲し、その力で人権弾圧をやめさせていく必要があります。