2020年6月27日(土)
主張
「大阪都」構想
コロナ禍の今なぜ強行なのか
大阪市を廃止し四つの特別区に分割する「大阪都」構想の制度案が、府・市議などでつくる法定協議会で、大阪維新の会、公明党、自民党府議団の賛成多数で可決されました。維新は、府議会と市議会の議決を経て、11月1日に「都」構想の賛否を問う住民投票を実施しようとしています。日本共産党と自民党大阪市議団は、制度案に反対しました。協議会が公募した市民の意見の多数は、「コロナ禍の今、なぜ実施するのか」というものです。大阪市廃止=「都」構想はストップすべきです。
一度否決された案を踏襲
制度案の議決は、全く大義がありません。その中身は、2015年に実施された「都」構想についての住民投票で否決された案の「五つの特別区への分割」を四つにするというだけです。「大阪市廃止」が強行されれば、政令市としての力でつくり上げてきた「18歳までの医療費助成」「高齢者の敬老パス」「給食無償化」などの住民サービスが維持される保証はありません。特別区の財源や権限は、「府」に奪われ、「財政調整」をはかるのも、「府」任せになるからです。
公明党の要望で取り入れた、四つの特別区に新庁舎をつくらない案も問題です。既存の区役所を活用するとしますが、入りきれない職員は現大阪市本庁舎を「合同」で使います。多くの職員が、他の自治体庁舎を間借りし仕事をする事態が続くことになります。自治体として体をなさない姿です。
介護保険なども特別区が担当せずに、四つの特別区が集まる巨大な「一部事務組合」が担います。「府」、特別区、同組合という複雑な「三重行政」が出現します。
何より問われるのは、コロナ禍の下で、政治的立場を超えてコロナ対策に総力を挙げなければならない時に、そのよりどころとなる大阪市を廃止するための住民投票を行う必要があるのかということです。しかも、現在の制度案の論議にはコロナ対策は何一つ視野に入れておらず、制度設計を担保する「財政シミュレーション」も「コロナ以前」のものです。
最優先で今求められているのは、コロナ対策の科学的な検証と総点検の上に、「コロナの時代」の新しい政治・経済・社会に向けた見直しに踏み出すことです。それは、維新による府・市政が削り続けた公的医療や保健所、感染症対策の体制を抜本的に拡充し、よみがえらせることです。さらに「インバウンド頼み」の「成長戦略」から脱却し、子どもたちの健康と学ぶ権利を保障する「少人数学級」などの実現です。これに責任を負う「公の役割」を府政にも市政にも取り戻すことが不可欠です。
これに逆行する「都」構想は、まさに百害あって一利なしです。
市民と野党の共闘の力で
日本共産党大阪府委員会は「コロナ禍のもとでの『大阪市廃止』は許されない。大阪の力を一つに、『都構想ストップ』の審判を」のアピールを出し、立憲民主党、国民民主党、社民党をはじめ各界に共同を訴えています。13日には平松邦夫元大阪市長ら6氏の呼びかけで、大阪の5野党が勢ぞろいしたフォーラムが開催され、「都構想よりコロナ対策」を議論しました。住民投票は、「維新とその野合勢力」対「市民」のたたかいです。市民と野党の共闘の力の発揮が求められています。