2020年5月18日(月)
米国のコロナ感染・死者 最悪
国民皆保険 今こそ
サンダース氏訴え再び脚光
【ワシントン=遠藤誠二】新型コロナウイルスによる世界最多の感染者・死者を出している米国では、国民皆保険への関心が改めて高まっています。民主党大統領候補者の指名争いで健闘した進歩派のサンダース上院議員は、自身が主張してきた国民皆保険制度「メディケア・フォー・オール」を「今こそ実現しよう」と呼び掛けています。
新型コロナウイルス感染の拡大による経済活動の停止・制限で失業者は3000万人以上となり、雇用者提供の医療保険を失う国民が続出。経済的な困窮は、高額な医療保険支払いを続けられなくなるケースを生んでいます。
現在、医療保険をもたない国民は約2750万人(人口の8・5%)。オバマ前政権時代に4670万人いたのが、オバマケア(医療保険制度改革)導入で減りましたが、オバマケア改廃を進めるトランプ政権のもとで無保険者は再び増加しています。加えて1100万人いる不法移民の存在も深刻です。
医療保険がないことなどを理由に、新型コロナウイルス感染が疑われる症状がでても、病院に行くことをためらう人もおり、その率は14%(ギャラップ・ウエストヘルスケア調査、4月1~14日)、7人に1人にあたります。低所得者や非白人になるとその率は22%(5人に1人)に上がります。ファウチ国立アレルギー感染症研究所所長は12日の議会証言で、「実際の死者はより多くいるとほとんどの人が感じている」と述べ、自宅で亡くなる人など統計外の死者が多数いると語りました。
新型コロナウイルスに感染し、ICU(集中治療室)の治療を受けた場合、3万ドル(約324万円)以上の治療費がかかり、医療保険加入者でもすべてが保険の対象とならず数千ドルの自己負担となった事例があがっています。トランプ政権は無保険者の検査・治療費を連邦政権が支払うと発表しています。
サンダース氏は「全国民を対象に、将来的なワクチン接種、検査、治療を政府が負担すべきだ」と主張。バイデン前副大統領とともに、医療保険を含む政策を協議する統一作業チームをつくりました。
民主党の大統領指名争いの議論では、サンダース候補(当時)が掲げた「メディケア・フォー・オール」が、他の候補から「非現実的」と攻撃を受けましたが、今では当然の議論となっています。
米シンクタンク「ルーズベルト研究所」のフェリシア・ウォン代表は「これら進歩的な政策は、新型コロナウイルスの事態を受け国民の政治経済的な現実がいかにもろいかが明確になり、より支持を受けるだろう」と指摘します。
世論調査(ザ・ヒル―ハリスX、4月19~20日実施)では、69%の国民が「全国民への医療保険を支持する」と回答しています。