2003年10月27日(月)「しんぶん赤旗」
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日本共産党の不破哲三議長は二十六日、長野市の街頭演説で、「日本の政治の大問題の一つは、財界のために働く政治か、それとも国民のために働く政治か、という点にあります」と切り出し、「みなさんがくらしのなかでぶつかっているどんな問題をとりあげても、国民の苦しみの根っこには、必ず“財界が主役”の政治があります」とのべ、年金や社会保障の問題につづいて、農業の問題をとりあげました。
長野県は日本でも有数の農業県です。
いま農業はどうなっているでしょう。日本の食料自給率(カロリー計算)はずっと下がって40%という状態が続いています。自給率40%ということは、一億二千万人の国民のなかで、四千八百万人分の食料しか国内ではつくっていない。七千二百万人分の食料は外国からの輸入に頼っている。こういう状態です。こんな国は世界にはないのです。
国民の食料の半分以上を外国に頼るようになったら、どこの国でも大騒ぎをするものです。「これじゃ大変だ」と。
いまから四十年前ですが、イギリスでそういうことが起きました。一九六〇年代に食料自給率が40%台になった。イギリスでは、国をあげて対策を立てて、八〇年代の早い時期に食料自給率を70%台に回復し、その状態がいまでも続いています。こういう努力が当たり前のことなんです。
ところが日本の自民党政権は、自給率がいくら下がっても、何の手も本気で打とうとしない。40%になっても小泉さんが「“農業鎖国”というわけにはゆかないから仕方がない」、外国でそんなことをいったということが報道され、大問題になりました。
みなさん、なぜ農業がこういう状態になっても胸が痛まないのか。もし財界・大企業が握っている産業が傾いたら大騒ぎになるでしょう。銀行が傾いたら、何十兆円のお金でも平気でつぎ込みます。しかし、国民の命を支える食料の問題―日本の農業がこんな危ない状態になっても、本気にならない。ここに、“財界が主役”という政治の怖さが現れているのではないでしょうか。(「その通り」の声)
しかもみなさん、自民党政府が農業対策だといってやっていることが、世界の常識からいってもおかしいのです。
いま世界では、農産物の貿易競争がたいへんですから、どの国も農業対策に力を入れています。それで、どこにいちばん力を入れているかというと、農産物の価格が大きく下がったときに、価格の保障をちゃんとやって、農家経営が成り立つように国が応援する“価格保障”。それから、農業というのは災害などいろいろありますから、いろんな事情で農家の所得がぐーんと減ったときに、所得を応援して保障する“所得保障”。ここにどこの国でも力を入れているのです。
実際、イギリスやドイツやフランスなどヨーロッパの国々は、農業予算の約三分の二は農家の所得の保障、価格の保障に充てています(二〇〇一年で、イギリス63%、フランス64%、ドイツ68%)。
日本ではどうでしょう。価格保障や所得保障に充てる予算は年々減って、同じ二〇〇一年の数字で27%、三分の一にもならないのです。ヨーロッパ諸国と比べて、それくらいやり方が違うのです。
私、アメリカの統計を見て驚きました。アメリカの農家が所得のなかで農産物を実際に売って手に入れる所得(農産物販売所得)、政府から援助を受ける所得(政府補助)について、最近の統計を見ると、農家所得の四割から五割近くまでが政府の補助金で支えられていました(一九九九年49%、二〇〇〇年49%、〇一年43%)。
どこの国でもそういう手当てをして、世界的な競争のなかでも、農家が経営をちゃんと守り、自国の農業が維持できるように努力をしているのです。
では、そういうことを日本だけがなぜできないのか。“価格保障を一律にやるのは反対だ”という声をいちばんあげているのは、みなさん、財界なんですよ。もう何回も意見書を出して、“いま日本の農業で価格保障に力を入れたら、政府やわれわれが切り捨てたいと思っている家族農家、規模の小さい農家が生き残ってしまう。そんなことをやるのはムダ金だ”、そういう声をさかんにあげて、“政府は、大きな規模の農家だけに援助を与えるように、そういう農業政策に切り替えろ”とはたらきかけてきました。
政府の農政は、このところとくに、財界の主張するこの方向に大きく傾いてきました。
お米の対策でも、四ヘクタール以上の水田(北海道では十ヘクタール以上)をもつ大規模経営でないと政府の応援はしないという方針になっています。
しかしみなさん、長野県で四ヘクタール以上の水田のできる場所がどれだけあるでしょう。日本の農家を、そういう条件で仕切ったら、ほとんどの農家はつぶれてしまうじゃありませんか。
日本の農家の実情にも、世界の常識とも合わない、そういうことを、財界の都合のために無理やり日本の農業に押しつける。私はここにいまの農政のでたらめさのいちばんの根っこがあるということをみなさんに訴えたいのであります。(拍手)
ヨーロッパやアメリカでやっているように、価格や所得の保障を農業政策としてちゃんと実行する。日本の農業経営の主力は家族経営です。現実に日本の農業を担っている家族経営が成り立つような手だてを、政府が保障する。これこそ、日本の農業が必要としている政治ではないでしょうか。
農業を基幹産業として取り扱う。食料の自給率を国民が安心できるところまで引き上げる。そのために、いま農家が求めている援助を他の資本主義国並みにやる。貿易の問題でも、お米のような日本国民にとって特別に重要な農産物を守れるように、食料主権回復の立場に立った交渉に本腰でとりくむ。
こういう当たり前のことを実行する政治に、こんどの選挙で道を開こうではありませんか。(拍手)
財界のヒモがついている政党、財界に後押しされている政党では、こういう政策は実行できません。日本農業の再生のためにも、“財界主役”の政治を大本から切り替える力を持った政党、日本共産党へのご支援を、お願いするものです。(拍手)
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