2019年1月13日(日)
米政府機関閉鎖 最長を更新
大統領「壁」に固執 職員500万人が無給
国民生活に不安 批判噴出
【ワシントン=遠藤誠二】メキシコ国境の壁建設予算をめぐるトランプ大統領と米議会・民主党の対立による政府機関の一部閉鎖は12日、過去最長の22日目となりました。自宅待機などを強いられる連邦職員・契約職員は約500万人近くにのぼり、「国民生活が人質にされている」との批判が高まっています。一方、トランプ大統領は壁建設に固執する構えを崩していません。
閉鎖期間は、クリントン政権時代の1995年以来となる記録更新となりました。影響を受けているのは約80万人の連邦職員および約400万人の契約職員。連邦職員のうち空港の管制官や保安担当などにあたる運輸保安庁の職員ら約40万人は、無給での労働を強いられています。11日は、給与支払い日でしたが、給与は支払われず、職員たちは、家賃や子どもの教育費などの支払いに窮する事態に直面しています。
トランプ大統領は11日、国境警備強化に関する会合で、大統領には非常事態宣言の権限があると改めて表明。「(宣言は)簡単な解決法だが、議会が(予算措置を)やるべきだ。彼らができないなら、非常事態を宣言する」と述べ、議会に予算措置を迫りました。
与党議員も疑義
トランプ大統領が、壁建設の予算措置で「完全に結束している」と述べる共和党内ですが、週末に、地元に帰り有権者から厳しい批判にさらされることになる議員からは、疑問の声があがっています。
最も長いメキシコとの国境線を抱えるテキサス州選出のハード下院議員は、政府職員を人質に交渉することは正しくないと指摘し、「(政権が)もし危機というのなら、この危機に対処している職員に給与は支払われるべきだ」と主張しました。
労働者のうち連邦職員の比率の高いアラスカ州のマカウスキ上院議員は、「(閉鎖の対象の)内務省、国立公園、内国歳入局などの業務は、国境警備問題とは何の関係もない」と述べ、政府機関閉鎖の解除を求めました。
不支持率が高く
パブリック・ポリシー・ポーリングは10日、2020年に改選を迎える共和党上院議員がいる6州の世論調査を発表。政府機関を閉鎖させたトランプ大統領への不支持率は55~63%となり、支持を10ポイントから30ポイント上回っています。共和党議員がこの問題で、トランプ大統領への支持を続けるのであれば、「政治的に失敗することになる」と指摘しています。
いいかげんな壁建設の論拠
メキシコ国境での壁建設は、トランプ大統領の選挙時の公約です。支持層つなぎとめに必死なトランプ大統領は「人道と安全保障上の危機」から壁の必要性を主張しますが、あまりにいいかげんです。
国家安全保障省によると、メキシコ国境を不法に越えて検挙された人の数は昨年、約39万人と2000年に比べ4分の1に減少。1973年以来5番目に低い数字です。
トランプ大統領は、テロリストがメキシコ国境を越えて来る、と主張。一方、司法省は、近年、テロリストの疑いで移民がメキシコ国境で逮捕されたケースはないとしています。
麻薬が国境を越え入ってくるので、壁は必要とも言いますが、麻薬取締局の報告(15年)は、麻薬はほとんどが国境の検問所をくぐりぬけるとしています。(ワシントン=遠藤誠二)