2002年11月14日(木)「しんぶん赤旗」
イラクにたいしては、アラブ連盟、イスラム諸国会議機構(OIC)をはじめ、訪問した各国が必死で働きかけていたことが会談のなかで明らかにされ、共同の外交努力をおこなっているという実感を共有できたのは、とてもうれしいことでした。
アメリカの戦争を辞さないとする軍事力による威嚇がイラクを動かしたとよくいわれますが、実際にはイスラム、アラブ各国が、戦争の可能性が高まるもとでいっせいにイラク政府に働きかけたことが会談のなかでよくわかりました。「イラクに自重を求める」共同の働きかけが、それまで「政治ゲーム」をしてきたイラクを国連との誠実な共同の方向に変えたというのが各国の実感でした。
ある国の外務省の高官は、率直に「アラブ諸国をはじめ非同盟諸国などがいっせいに動いたことが、イラクが九月十六日に無条件受け入れを表明し、その後、態度をさらに好転させている大きな要因となっているし、今日もその努力が継続されている」とのべていました。
また同高官は「イラクは国連安保理や国連で、まとまった声でイラクにせまらない間は不まじめな時間稼ぎをしていたが、国連が真剣にイラクに戦争回避を迫るようになってからやっと、真剣な対応をするようになった」と注目すべき発言をおこなっていました。
それに、極東の日本から共産党が加わったことが歓迎されたのです。日本共産党がこれらの諸国政府と共通した立場で、イラクに働きかけた共同の努力に、強い賛同と称賛が寄せられました。
私は“普段着”で話をしただけなのに、会談でのべた内容も新鮮に受けとめられ、歓迎されました。八月下旬に不破議長が中国を訪問し首脳会談をおこないましたが、その会談でのイラク攻撃反対の一致にいたる論点をはじめ、そのときに国際問題を研究した膨大な準備とそのもとでつくられた重要なテーゼがありました。わが党の国際関係論の到達点が築かれていたわけですが、それらを事態の進展に合わせてのべたのです。
私はアフガニスタンでの戦争とイラクに対する戦争の違いをのべました。心を痛めながらもアフガニスタン戦争を支援した国々の立場、苦悩に理解を示しつつ、イラク戦争には反対する論理と道理を明確に語ったのですが、これには十分な手応えがありました。
国連憲章を破るものはどの国であろうと強く糾弾される―訪問国では、この論理こそ強い共感と一致点をつくり出しました。
イラクへの戦争はテロ反対の国際共同戦線を崩壊させる―訪問中におきたバリ島でのテロを口実にイラク攻撃を急ぐというブッシュ大統領の演説についてこうのべると、反テロ国際共同戦線の力強い構成国と自負している国ですから、強い同意がかえってきました。
異なる文明の平和的な共存―中東諸国では、イスラムが誤解されているという思いがとても強く、日本共産党が昨年のテロ事件以来うちだしているこのテーマは歓迎されました。OICが来年十月に開催するサミットでは、二つのテーマの一つが「文明の対話」であり、話がはずみました。
私はこの間、イスラムの勉強をし、訪問国でも話を聞いてきましたが、事実イスラムは寛容と融和の宗教です。他を排撃することを厳に戒めているのです。そのイスラムがいまテロと一体視され重大な誤解を受けていることに、たいへん苦悩しているのです。それが、こうしたテーマ設定の背景となっているのです。
焦眉(しょうび)の国際問題で、日本共産党の外交政策の立場がどこでも強い共感を得るだけでなく、私たちの論点が新鮮に歓迎されました。こうして、政府との直接の対話で、日本共産党の立場が公正で幅広い基盤をもっていることが裏づけられたのでした。(つづく)