2002年11月15日(金)「しんぶん赤旗」
訪問した国々には、それぞれ国情と歴史があります。ヨルダン、サウジアラビアは王国、カタール、アラブ首長国連邦は首長国、エジプト、イラクは共和国。ヨルダンやエジプトのように資源のない国、国民の八割が移民労働者が占めるカタール、アラブ首長国連邦…。
共通点は、訪問した国はいずれもアメリカと特別に重要な関係にあることです。アメリカに安全保障を委ねるなど対米関係を「国の生命線」と位置づけそれを宣言している湾岸諸国は、米軍基地を置き、米軍を駐留させており、旅行中も米軍の増派や米軍との共同演習が報じられていました。
アメリカがこれら諸国に、対イラク戦争での基地利用にどう協力するのかを迫っているとき、私たちは、アメリカの戦争問題をテーマに各国政府と会談したのです。
その会談で、日本共産党のわれわれと親米的外交を掲げる諸国政府との意見がことごとく一致し、「同意する」「その通り」をのべあったのです。とりあわせの意外さもあり、その一致に思わず顔を見合わせたこともたびたびでした。
イラクへの戦争は絶対に起こしてはならない――これはもっとも強い一致でした。戦争がおきたら、この地域に壊滅的な打撃をもたらし、その規模は誰にも想像ができないほどである状況でした。とくに、東西をイラクとイスラエルにはさまれる地理的位置にあり、イラクに石油を100%依存し、水資源確保に苦労しているヨルダンは、戦争は国の破滅に導くという強い危機感をもって、「外交が最大の資源」を合言葉に、アブドラ国王を先頭に活発な外交を展開していました。
外部の力で政権転覆をおこなうことは絶対に認められない――イラクのフセイン大統領への感情は別にして、その打倒は絶対に認められない、「国際関係に『ジャングルのおきて』を持ち込んではならない」ことが国連憲章と国際法の名において強調されました。こんなことが実際におこなわれたら、次はシリア、その次はイランと際限なく、アメリカが気にいらない政権打倒を認めることになり、こうした国際関係の規範のじゅうりんは絶対に許してはならないと、誰もが語気を強めました。
イスラム諸国会議機構(OIC)のバヒット政治部長は、加盟国への攻撃はいかなる理由があろうとも絶対に認めないというOICの原則的な立場を示して、その試みにたいしては、相手が誰であれ反対することを強調しました。
そもそも大量破壊兵器をめぐってイラクが脅威かという根本問題については、クウェートを侵略した当時ならともかく、今日は近隣諸国を脅かすようなイラクの脅威は「ない」というのが一致した結論でした。百歩譲っても「アメリカがさわぐような脅威はない」こと、この地域に脅威がないのに、どうして遠く離れ、最大の軍事力をもつアメリカにイラクが脅威になるのかと強調されました。
同時に、決議六八七をはじめとするイラク関連の国連安保理決議を、イラクが全面履行することは、平和的解決の大前提でした。戦争回避は当然だが、早くイラクへの経済制裁の解除をすることが必要であることが主張されました。「イラク国民が最大の被害者だ」と強い同情の気持ちが表明されました。
私たちは、中東各国を転々としながら、国連での議論を追う毎日でもありました。訪問国のなかでも、新たな国連決議にたいする対応では、違いも見られました。ヨルダン外務省局長代行は、「国連決議となれば、どのような内容でも、合法性がある」とのべました。他方、エジプト外務次官は、「仮に国連決議が採択されても、他国への武力行使は絶対に認められない。非合法である」と強調しました。
訪問期間中に、フランスのシラク大統領のアレクサンドリアやベイルートでの演説は、アメリカの一方的な武力行使の最後の防波堤として重視され、よく議論しました。
国連憲章を厳守せよ――このあまりに当たり前のことが、訪問中の共通のキーワードになったのです。(つづく)