今回、32人の青年の皆さんからのメールを読ませていただきました。一言で申しますと、なんと酷い実態なのか! 暗然とする思いです。
新聞などでは、「景気は回復基調、失業率も低下」などと報道していますが、青年の失業率は他の年代層の2倍以上も高いのです。
なぜこうなったのでしょうか? 「好況〜不況」という景気循環論での一時的な現象では説明がつきません。
いまから10年前の95年、当時の日経連は「新時代の日本的経営」と題する新たな労働力政策を打ち出しました。この政策は労働者を、(1)長期継続雇用型 (2)長期雇用を前提としない高度専門能力活用型 (3)雇用柔軟型 の三つに区分けし、賃金制度もそれぞれ違うものにしていました。そして、コスト削減のために、少数精鋭を徹底し、トヨタのジャスト・イン・タイム方式のように、必要なときに必要なだけ人数を確保するとして、雇用機関や労働時間を「柔軟」にしていくことを方針としました。
バブル崩壊後の長期不況のもとで、大企業はこの政策をいっせいに取り始め、どの企業も正社員の採用を縮小し、パートやフリーター、派遣などに切り替え、また業務請負という外注化を行いました。その結果、いくら願っても正社員には採用されなくなりました。
いま、多くの青年労働者がメールで告発している事態を生み出した本当の原因はここにあります。当面の利益をあげることだけを考え、青年に脅かしをまじえて短期雇用と低賃金を押しつけ、年金や健康保険の加入さえ行わないことは、法違反であるとともに、今日の企業経営者がモラルハザード(倫理の崩壊)に行き着いているといえます。
景気が若干好転しても、この状況が自動的に改善されるものではなく、この現状を変える力は、青年労働者の皆さんを中心とした、国民的運動が必要だと思います。「青年に雇用を」の運動が全国的に広がるなかで、経団連は「多くの企業が定年退職と採用抑制を組み合わせた雇用調整を行ったことが、若年層の雇用問題を深刻化させた可能性は否定できない」などといい始めています。もっと大きな運動に発展させるために、あきらめず、全国の青年がスクラムを組もうではありませんか。私もこの現状を変えるために、ともにたたかいます。
■プロフィール
かさい・あきら
2001年まで参議院議員を勤め、05年の総選挙で東京比例ブロックから衆議院に選出され、国会では、厚生労働委員会、憲法調査特別委員会などに所属。参議院時代より、小泉首相まで歴代4人の総理を相手に論戦を繰り広げ、テレビでもしばしば実況中継された。日本共産党中央委員・国際局次長として野党外交の現場に臨んで奮闘。「非核の政府を求める会」常任世話人など。
1952年、大阪生まれ、東大経済学部を卒業後、同農学部でも学ぶ。青年学生運動以来、国際活動で30数カ国を訪問。家族は妻と母。母親は広島で被爆している。趣味 料理、ウォーキング。
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