2006年12月24日(日)「しんぶん赤旗」
「思い代弁してくれた。抜群」
国政動かし 国民の利益守る
共産党国会議員団 この1年
臨時国会(九月二十六日―十二月十九日)が終わりました。小泉前内閣最後の国会となった通常国会(一月二十日―六月十八日)をあわせたこの一年、日本共産党国会議員団は「たしかな野党」として自公政権と真正面から対決し、国民運動と連携して国政を動かしてきました。
政府を追いつめた論戦
教育基本法
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改悪教育基本法が成立した十五日夜、広島の教師から赤旗編集局に電話がありました。
「共産党さんのおかげで教育基本法の問題が国民の前に明らかになった。結果は残念だが(たたかいで)私たちは元気になった」
安倍内閣は「教育の憲法」である教育基本法の改悪を最重要課題に掲げました。日本共産党は幅広い国民各層とともに改悪に反対。通常国会では継続審議にさせ、臨時国会では会期延長にまで追いつめました。
志位和夫委員長が追及した「愛国心通知表」は全国で見直しが広がりました。改悪法が教育への国家介入を無制限にするという志位氏の指摘は愛国心報道一辺倒だったマスメディア論調にも影響を与え、参院では民主党も教育への「不当な支配」問題で政府を追及するなど論戦の流れを変えました。
高橋千鶴子、石井郁子両衆院議員が暴露したタウンミーティングでの「やらせ質問」は、政府を追いつめ「共産党の大ヒット」と言われました。
石井議員が暴露した東京都足立区の学力テスト結果による学校予算のランクづけ計画は、批判を受けて同区が取りやめました。自民党の幹事長経験者からも「学校選択制はぼくも反対だ」との声が聞かれました。
井上哲士参院議員が追及した「やらせ質問」を文部科学省の教育基本法担当の中枢幹部が推進していた疑いは、教基法担当の歴代局長・審議官を処分したことで裏付けられました。
教師の多忙化をとりあげた小林みえこ参院議員の質問には「現場の先生の一番切実な問題だ」と歓迎のメールが届きました。
「靖国史観」追及し変化
歴史問題
歴史認識問題は、根っからの「靖国」派・安倍晋三首相の登場で、大きな焦点となりました。志位和夫委員長は臨時国会の衆院代表質問(十月三日)と、つづく衆院予算委員会(十月六日)で首相の歴史観を正面からただしました。
安倍首相は、「植民地支配と侵略」への「おわびと反省」を示した村山富市首相談話(一九九五年)、「従軍慰安婦」問題で、旧日本軍の関与と非人道的な実態を認めた河野洋平官房長官談話(九三年)ともに引き継ぐ考えを示し、新聞各紙は大きく報じました。
「首相の立場を優先し『持論』を変えたといっていいだろう」「自ら発言を覆したり、逸脱すれば、政権の致命傷となることを覚悟しておくべきだ」(「東京」社説十月七日付)
従来の一連の政府の歴史認識を認める安倍氏の姿勢がはっきりし、そのもとで日中、日韓首脳会談が開催され、外交面でも一定の前向きの変化が起こることになりました。
小泉純一郎前首相の靖国神社参拝で先鋭化した「靖国史観」をめぐる問題は、〇五年五月に不破哲三議長(当時)がおこなった時局報告会での問題提起と「赤旗」報道、党国会議員団の質問など一連の日本共産党のとりくみが、情勢を全体として一歩前にすすめる結果につながりました。
巻き返しの動きもあります。下村博文官房副長官や中川昭一自民党政調会長が「河野談話」の見直しに言及しています。
日本共産党は、ひきつづき歴史の逆流を許さないとりくみをつづけています。
二つの原則、国会決議に
北朝鮮問題
「共産党と同じ考えだ」
安倍首相がこう答えたのは、笠井亮議員の提起に対してでした(十月十日、衆院予算委員会)。北朝鮮の核実験を受けて、国際社会がとるべき「二つの原則」を提唱したときのことです。
「二つの原則」とは、北朝鮮に核兵器と核開発を放棄させるため、(1)国際社会が一致協力して対応し(2)問題の平和的・外交的解決という立場を堅持してのぞむ――との提案。志位和夫委員長が発表し、大きな先駆的な力を発揮しました。
井上哲士議員が軍事対応論の危険性を指摘した際にも、安倍首相は「軍事衝突はだれも望んでいない」(十月十一日、参院予算委員会)と答弁しました。
「二つの原則」の立場は、衆参両院の国会決議としても実りました。衆院決議の準備段階では、穀田恵二議員がこの立場を貫くべきだと主張。当初案にはなかった「国際社会が結束した外交を展開し、平和的な解決を模索すべきである」との文言が盛り込まれました。自民党からも「共産党は筋を通している」との声がきかれました。
この立場は、非軍事的措置による解決をめざした国連安保理決議、その後の六カ国協議再開への動きという国際社会の動きとも響きあいました。
一方で、麻生太郎外相ら政府・与党からは北朝鮮問題にからめて、「核武装」議論を容認する発言や、自民、民主両党からは「周辺事態法」の発動論など、北朝鮮問題を党略的に利用した軍事対応論もあがりました。
これにも、笠井議員や緒方靖夫参院議員が、衆参それぞれの委員会で軍事対応論の危険性を指摘し、麻生外相を追及しました。
「地元に大きな勇気」
米軍再編反対
日米同盟を地球的規模に拡大し、そのために在日米軍基地の恒久化・強化をはかる米軍再編。日本共産党は米軍基地を抱える自治体での反対運動を励まし、政府を追及してきました。
「市民の安心・安全の問題は何も解決していない。容認できない」。山口県岩国市の井原勝介市長は十二日の市議会で、米軍岩国基地への米空母艦載機部隊移転の撤回を改めて求めました。三月の住民投票の直前、市田忠義書記局長はこの移転計画を告発しました。
沖縄県名護市に建設を狙っている米軍新基地。政府は、V字形滑走路にし、離着陸方向を固定したので住宅地上空は飛行しないと説明していました。しかし赤嶺政賢衆院議員の追及に久間章生防衛庁長官は「緊急時の場合は、どういう方向からでも着陸することはありうる」と答弁。地元に受け入れを迫った最大の根拠が崩れ去ったのです。地元紙も「美辞の裏には牙が隠されていた」(沖縄タイムス十一月七日付)と批判しました。
防衛施設庁は、在日米軍再編に地方議会が反対決議をあげるのを監視するよう、全国の担当者に電子メールを出して指示していました。暴露したのは井上哲士参院議員。「自治体ぐるみでたたかう地元に大きな勇気を与えた」(中里龍夫・キャンプ座間周辺市民連絡会代表委員)質問でした。
海外派兵を自衛隊の「本来任務」に位置づけ、防衛庁を「省」に移行させる「防衛省」法の本質に迫った論陣を張ったのも日本共産党です。久間防衛庁長官自身、「憲法九条からあえて省にしていないと説明すれば、外国の理解は得られる」と答弁するなど、「防衛省」にする根拠は総崩れとなりました。
「大変な問題」と首相も
ワーキングプア 偽装請負
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「日本を代表する大企業の生産現場で、こういう働かせ方が広がっている。総理は異常だと思われませんか」
「いわゆるワーキングプア(働いても貧困から抜け出せない人たち)といわれる人たちを前提に、いわばコストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それは大変な問題であろうと思います」
十月十三日、参院予算委員会で、市田忠義書記局長の質問に安倍首相はこう認めました。偽装請負の問題では首相が「適切、厳格」な対処を表明しました。市田氏の質問をはじめ、「人間らしい働き方のルール」を求める国会議員団の活動は世論を盛り上げ、運動の大きな力となりました。
「産経」十月十九日付文化面のコラムでは評論家の勢古浩爾氏が市田氏の質問に「見応えがあった」と共感を寄せ、「政府側の答弁は、あまりにも形式的でぬるすぎる。『再チャレンジ』どころの話ではない」。三重県の伊勢新聞も十月十六日付のコラムで市田質問を取り上げ、「事件の陰に大企業あり、一人微笑むの仕組みは住専以来ちっとも変わっていない」と指摘しました。
質問の二週間後、十月二十七日には厚生労働省大阪労働局が松下プラズマディスプレイの偽装請負に二度目の指導を行い、十一月から請負労働者約三百六十人が直接雇用されました。十一月十日には日亜化学で、請負労働者千六百人全員の直接雇用が決まりました。
党議員団は、不安定雇用増加の根底には、労働者派遣法の拡大をはじめ政府の規制緩和路線があることを明らかにし、政策の転換を求めました。
実態示し「見直し」に道
障害者自立支援法
「共産党の議員さんは現場の実態をしっかりつかみ、私たちの思いを代弁してくれる。その姿勢は他党と比べて抜群だ」。障害者団体の関係者から寄せられた声です。
四月から障害者福祉に原則一割の応益負担を持ち込んだ「障害者自立支援法」。負担が重くなり施設から退所したり、事業所が閉鎖の危機に追い込まれています。十月からは法律が本格施行され、障害児の応益負担などが実施されると、事態はいっそう深刻になりました。
年収八十万円以下の母子家庭の負担が、一挙に年間六十万円に。障害児を産んだことが罰則のような気持ちになる―母親の手記を読み上げ、「これで本当に能力に応じた負担と言えるのですか」と、怒りを込めて見直しを求めたのは高橋千鶴子議員(衆院厚生労働委、十月二十五日)。柳沢伯夫厚労相は「いろいろな調査をしており、直すべきときには直す」と明言しました。
紙智子議員が参院決算委員会(十二月四日)で「障害をもつ子どもの自立を願う親御さんたちの気持ちにこたえるのが政治の責任ではないか」と、具体例を示して追及。「私たちの気持ちを伝えてくれてうれしかった」などの反響が相次ぎました。
小池晃議員は、「障害程度区分」の認定審査で実態より低く判定される問題を取り上げ、改善を要求。柳沢厚労相は「すみやかに(見直しに)着手したい」と答えました(参院厚生労働委、十二月五日)。
障害者・家族や関係者の切実な声と粘り強い運動で、法律を推進してきた自民、公明両党も負担軽減策を言わざるをえなくなりました。
経産省動かし大反響
PSE問題
「寝耳に水だ。もう店を閉めるしかない」。経済産業省が引き起こした今年一月下旬以降の大混乱、いわゆる「PSE問題」―。電気用品安全法(電安法)によるPSEマークのない中古家電を四月から販売規制するという同省の方針は、施行直前に事実上の撤回という「異例の事態」に追い込まれました。
経産省ホームページに初めて「中古品も(電安法の)対象」と掲載されたのは二月十日。リサイクル業者や消費者、音楽家の不安や怒りの声がわき起こり、中古品の適用除外などを求める運動が急速に広がりました。
塩川鉄也議員は、四回にわたり国会で質問。とりわけ衝撃的だったのは、「もともと中古品は、電気用品安全法の対象外。中古品が対象になることは、法令集のどこにも書いていない。だれが、いつ、どこで決めたのか」との追及(三月一日、衆院予算委員会分科会)です。
経産省は「法令集はよく確認してまいっていません」と法的根拠を示せませんでした。インターネットのPSE反対サイトやホームページでは、塩川質問の動画が見られるようにしたものが数多く出てきたり、ブログでも「共産党のクリーンヒット」と大反響となりました。
「ルールは変えられない」と、かたくなな態度に終始する経産省に批判が殺到。三月八日の塩川議員の三度目の追及に、当時の二階俊博経産相が「今後の対応等について関係のみなさんのご意見も聞き、対応する」と答弁。これを機に経産省は方針転換に動き出しました。
「壁一つずつつぶした」
サラ金・高金利
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二百数十万人と言われる多重債務者。問題の温床である「グレーゾーン(灰色)金利」を撤廃する、歴史的な法改正が実現しました。
七月には、与党も金利引き下げの方向性を打ち出していました。しかし臨時国会直前の九月半ば、政府・与党がまとめた制度案には▽特例高金利▽利息制限法の上限金利の実質的引き上げ―が盛り込まれていました。
「サラ金業界につながりを持つ与党議員から相当の巻き返しがあったに違いない」
日本共産党は国会内に「高金利引き下げ対策チーム」(事務局長・仁比聡平参院議員)を結成。十月にかけて▽業界から献金を受けた安倍内閣の閣僚らとその金額▽借り手の自殺で保険金が出る生命保険契約の、サラ金大手各社別の実績―などを相次ぎ公表しました。
日本弁護士連合会が呼びかけたパレードに二千人が結集するなど、世論の批判も強まります。与党は同月末、方針を撤回。「運動の勝利」(宇都宮健児・日弁連上限金利引き下げ実現本部長代行)でした。
法案審議でも積極的な答弁を引き出しました。
大門実紀史参院議員は、警察がヤミ金被害者に「借りたものは返して当然」などと対応している実態を、警察署名を挙げて追及。警察庁から「不十分な対応。調査させる」との答弁を得ます。佐々木憲昭衆院議員は金融庁から、貸金業者に対し「灰色金利は、任意に払わなければ無効であることを(顧客に)説明する義務を課す」との答えを引き出しました。
被害者団体関係者は「共産党の質問は、多重債務者救済の実務でぶつかる壁を一つひとつつぶしてくれた」と評しました。
各分野で提言・緊急要求を発表
日本共産党はさまざまな問題で国民の要求や実態調査を踏まえ、提言や緊急要求として発表し、政府に申し入れています。今年に発表した主なものを紹介します。(日にちは発表日)
【予算】
◇格差拡大・負担増押しつけの小泉「改革」ストップ、国民のいのち・暮らし・雇用・営業を支える予算に―2006年度予算案の抜本的組み替えを要求する(2月20日)【医療】
◇社会的連帯で医療大改悪をはね返そう―「保険証1枚」で、だれでも、どんな病気でも、安心して受けられる医療を(2月23日)【障害者】
◇障害者自立支援法実施にむけての緊急要求―2006年4月までに、これだけは解決を(2月22日) ◇障害者自立支援法実施2カ月―実態調査にもとづく緊急要求 利用者負担と施設経営の危機打開へ制度の抜本的改善を(6月7日) ◇障害者自立支援法の抜本的見直しと障害者施策の拡充についての申し入れ(8月8日)【雇用】
◇「男女雇用機会均等法改定案」についての修正提案(3月8日)【住宅】
◇「住まいは人権」という立場へ、いまこそ住宅政策の転換を―住生活基本法案に関して(3月15日) ◇耐震偽装再発防止のために 建築基準法等改正案の審議にあたっての提案(4月12日)【農業】
◇大規模化や農家選別の押しつけをやめ意欲ある農家すべてを大事にする農政を―政府の農政改革関連法案にたいし日本共産党は主張します(5月15日)【教育】
◇子どもたちのすこやかな成長をねがうみんなの声と運動で、教育基本法改悪をやめさせよう(5月15日)【高齢者】
◇高齢者への大増税の中止を求める申し入れ(7月3日) ◇高齢者からの“介護とりあげ”をやめさせるための緊急要求(8月30日)国民の立場貫き政府ただす
地方自治体の実態ふまえて
臨時国会で日本共産党以外の各党の賛成で成立した地方分権「改革」推進法。地方の「自由度・自己責任・自律」をいいながら、交付税を年々削減します。地方をいためつける同法の狙いをズバリ指摘したのは吉井英勝衆院議員でした。
分権「改革」の推進を保障する税財源の確保が明確にされておらず、「厳に抑制すべきもの」とされる法定受託事務も年々増加していることを明らかにしました。
参院では、吉川春子議員が、義務教育費の負担率引き下げなどが推し進められた経過をあげ、交付税の財政調整・財源保障機能の維持を要求。これには総務省側も「必要な地方税や交付税などの一般財源総額を確保していく」と答えざるをえませんでした。
耐震偽装事件問題の解決へ
発覚から1年以上が経過した耐震偽装事件。日本共産党は、建築士法改正とともに一刻も早い問題解決と生活再建を求めてきました。
穀田恵二衆院議員は建築確認を見過ごした自治体の責任を指摘。公共建築物の設計入札が価格だけの競争でおこなわれ、ダンピング受注が横行していることをただすと、冬柴鉄三国交相は「常識外れなことについてはやめてほしいと勧告する」と答えました。
小林みえこ参院議員は激化する安全軽視のコスト削減競争の実態を指摘し、建築士業務の責任の明確化・透明化、低い報酬基準の見直しを求め、冬柴国交相は、報酬基準について「見直す」と約束しました。
訪米調査して「BSE」追及
7月に輸入が再再開された米国産牛肉。紙智子議員は訪米調査をもとに3月の参院予算委員会で、日本向け食肉処理場でBSE(牛海綿状脳症)危険部位が日常的に混入している実態を明らかにしました。
高橋千鶴子議員も11月の衆院厚生労働委員会で危険部位の混入は構造的問題だと指摘。11月末になって農水省と厚労省は、遅まきながら米国内の日本向け食肉施設で抜き打ち検査をおこないました。
国内BSE対策の要である全頭検査は、2008年6月に全額国庫補助が終わり、自治体任せに変わります。紙議員は「食の安全のために全頭検査は不可欠。政府は今から補助継続を明確にすべきです」と訴えます。