2006年12月19日(火)「しんぶん赤旗」
主張
パート労働法見直し
格差容認ではなく均等待遇に
格差と貧困の問題が社会的に注目される中、パート労働者の待遇改善はいっそう緊急の課題となっています。政府は来年の通常国会にパート労働法の改正を提案する方向です。
生活できないパート賃金
パート労働者は千二百六十六万人と、この二十年で三倍近くになりました。パートは、労働者の四分の一、女性の四割を占め、若い世代にも急増しました。生活のため一日に二つ、三つの職場をかけもちする人も少なくありません。店長などの基幹的役割を果たしていても、賃金などの差別は続いています。年収百三十万円に届かない人は男性34%、女性56%にのぼっています。
厚生労働省の調査では、企業がパートを雇う理由のトップは「人件費が割安だから」(67%)です。パートの低賃金の背景には、財界・大企業が率先して、パート労働者を安く活用して、利益をあげてきたことがあげられます。また、現行パート労働法(一九九三年制定)は、差別を是正する規定も企業に対する強制力もありません。待遇改善に役立つパート法を求める声がひろがったのは当然です。
先ごろ、具体的な見直し内容を検討してきた厚生労働省の審議会・雇用均等分科会が、パート法に労働条件の明示、教育訓練などで義務化をふくむ一定の改善策をもりこんだ報告書(案)を発表しました。
しかしその改善はきわめて限定的で、パート労働者の要求にこたえたとはいえない不十分なものです。
報告書(案)は、賃金等の処遇について、ごく一部の例外的なケースに限定して正社員との差別を禁止するとしています。仕事内容や人事異動、労働時間もほとんど正社員と同じで長期勤続と、本来パートとはいえない人が対象です。それ以外のパート労働者は、仕事内容や意欲、経験、成果などに応じて正社員との“均衡処遇”をはかって賃金等を決める「努力義務」にとどめました。
“均衡処遇”とは、安倍内閣の「再チャレンジ」策の目玉の一つですが、残業や転勤も多い現在の正社員の働き方を基準に、それとの違いに応じてパートを処遇する考え方です。同一労働同一賃金の原則を否定し、残業が少ない、転勤がないなどの「差異」が少しでもあれば格差は当然とされます。格差と低賃金を合理化し、圧倒的多数のパート労働者の処遇改善をおきざりにしかねません。
使用者側は、これにさえ「改正そのものに反対」「法律で規制する必要はない」と激しく反発しています。このまま安上がりで使いやすい労働者としていっそうの活用をねらう財界の意向があからさまです。
また、「パートの賃金を上げずに正社員を下げてもいい」などの議論があることは、今後、正社員を含む全体の切り下げにつながる問題として重視しなければなりません。
ILO(国際労働機関)パート条約やEU(欧州連合)諸国では、パート労働者は労働時間が短いだけで、正社員との差別を禁止する「均等待遇の原則」を定めています。これが今日の国際的な基準であり、格差容認の“均衡処遇”は、世界の流れとかけはなれたものです。
差別禁止こそ原則に
パート法に「均等待遇の原則」を明記し、賃金、福利厚生、教育訓練などあらゆる面でパート労働者への差別を罰則付きで禁止することが必要です。実効あるパート法改正へさらに一歩でも前進させるように、パート労働者の皆さんの運動とも力をあわせて奮闘する決意です。