2006年12月8日(金)「しんぶん赤旗」
改憲手続き法案
結局、9条狙い
自公民「修正」合意 より悪い方向も
改憲手続き法案を審議した七日の衆院憲法調査特別委員会では、それぞれ法案を提出している与党と民主党から、「共同修正」へ向けた歩み寄りを明確化する発言が相次ぎました。法案は、日本共産党の笠井亮議員が批判したように、「結局は九条改憲のための法整備」。法案の反民主性も変わらず、国民にとってより悪い方向での「修正」も出てきています。
有権者2割賛成で
憲法九六条は、改憲について、衆参各院の総員の三分の二以上の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成が必要としています。
この際の過半数の「分母」について、与党案は当初から「有効投票総数」と定義。もっとも少ない賛成票で改憲案を通そうとしています。民主党は同党案でこの分母を「投票総数」としていましたが、委員会の議論では無効票が少なくなるように投票用紙の記載方法を変えることを前提に「有効投票総数」を受け入れる方向性を示しました。
いずれの案も過半数の定義を「民意を最大限くみ尽くす」という観点で考えてはおらず、諸外国でみられる最低投票率制度もありません。投票率が五割台の場合、有権者の二割台の賛成で改憲案が承認されかねません。
両案の主な相違点のひとつ、投票年齢については、「原則十八歳以上」としていた民主党案に合わせるため、与党から「本則十八歳以上」で対応したいという発言があらためて出されました。
また、この日は、教員・公務員に対する国民投票運動の規制について、自民党の船田元議員が「違反した場合でも罰則は設けない」という方向で与党案に「修正」を加える考えを表明。続けて「悪質な行為は公務員法上の規制がかかる」とのべると、もともと法案で同様の教員・公務員規制を設けていなかった民主党側も「修正の提案の部分は、対応を積極的に検討していきたい」(園田康博議員)と応じました。
笠井氏は「規制をもうけること自体が問題だ」と批判。堀越事件などをあげながら「(公務員に)委縮効果も現れる」と批判しました。
今国会めざす発言
「修正」の方向が明確になるのとあわせ、前のめりの発言も相次ぎました。
公明党の石井啓一議員は「もともと両案の相違は少ない。一致した形での法案成立をめざすべきだ。修正合意を今国会中にまとめるべきだ」、同党の福島豊議員も「いつまでもダラダラやるわけにはいかない」とのべました。
答弁した自民党の葉梨康弘議員は、改憲手続き法案を与野党の「対決法案」だとは思っていないとのべ、「合意形成がはかられつつあるのはいい。早期に合意すべきであり、粛々(しゅくしゅく)と成立をはかる方向にすすむべきだ」とのべました。
民主党の枝野幸男議員も「基本的な認識は一致している。考え方が近づいてきたのは大きな前進だ」と答弁しました。
笠井氏は、改憲や集団的自衛権の研究を掲げる安倍政権のもとでの手続き法整備は「まさに九条改憲のための法整備だ」と批判。「国民が安倍政権に望む課題のなかでも改憲は数%にすぎない。法案の根本問題も解決していない」として、国民不在の歩み寄りではなく「法案は審議未了、廃案にすべきだ」と訴えました。