2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」
ゼロから4万8000円に
紙議員示す 障害児も深刻な負担増
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四日の参院決算委員会で、日本共産党の紙智子議員は、十月から本格実施された障害者自立支援法が障害者と家族に過酷な負担を強いている実例を具体的に示し、政府に法の見直しを強く迫りました。
入所定員四十五人の知的障害児施設では十月の負担増で二人がすでに退所、利用料が払えないという相談が二件あった――紙氏が紹介した札幌市の例は、自立支援法の「応益」負担が障害児に深刻な事態を引き起こしていることを示しました。
いままで負担が無料だったのが、最高月額四万八千円に。施設では、親の負担を減らすために、楽しみにしていた一泊旅行を中止しました。約半数が一人親家庭で、親自身が障害をもっていたり、育児放棄という問題を抱えてやむなく施設入所している子どもたちの実情を切々と訴えた紙氏。「障害をもった子どもには、発達に深刻な影響を与える問題だ。負担の見直しをしてほしい」とただしました。
施設などへの報酬単価の引き下げも障害者・家族を直撃しています。
紙氏は、共同作業所への報酬単価が引き下げられ、支払いが月単位から日割り計算になったことで、多くの施設が大幅な収入減になった、と指摘。体調を崩しやすい障害者が、施設を休むと施設の収入が減るので、発熱しても無理に通う人も出ている例を示しました。
また、ヘルパーの事業所も深刻です。重度訪問介護の単価が下がり、引き受ける事業所がなくなってしまったところもありました。
これらの事例を次々と示した紙氏は、自民党や公明党など与党があわてていいだした「見直し」では、「応益負担」という根本を変えようとしていない問題を次のように指摘しました。
「障害のある人は、食べたり、外出したり、病院へ通ったり、人間として生きるための最低必要条件のことをするのに、助けがなければならない。それがなぜ『利益』を受けたことになるのか。それが『利益』なら、障害が重い人ほど負担が重くなってしまう。こういうやり方こそ見直さなければならない」
実態を示された安倍晋三首相や柳沢伯夫厚労相は、具体的な改善策にまで踏み込む答弁は避けながら、「さまざまな意見があることは承知している。その声は真しに応えたい」(安倍首相)とのべました。障害者と家族の声に応えるというのなら、小手先の改善だけでなく、「応益負担」の撤回をただちにおこなうときです。
紙智子議員の質問に対し、視聴者から反響が寄せられました。
“気持ち代弁してくれた”
紙議員の質問に反響
「感動しました。私の子どもも障害をもっていますが、私たちの気持ちを安倍首相に伝えてくれて、うれしかったです」(東京都江東区の男性)、「応能負担から応益負担に変えて、障害者に1割負担を導入した結果、障害者がどんなに大変なことになっているか、具体的事実をあげて追及してくださり、ほんとうにうれしく思いました」(新潟県長岡市の女性)など、障害者の実態をとりあげた紙議員の質問は感動を呼びました。
兵庫県加古川市の障害者の男性からは「現在、病気のため、はたらいていません。生活は非常に苦しいです。障害者を苦しめるいまの制度を、なんとかしていただきたいと思います」と期待の声が寄せられています。