2006年12月2日(土)「しんぶん赤旗」
外資の政治献金解禁
政治資金規正法改悪案可決 質疑わずか2時間
衆院委
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自公民など賛成佐々木議員反対
外資企業による政治献金を解禁する政治資金規正法改悪案が一日、衆院政治倫理委員会で自民、公明、民主、国民新各党の賛成多数で可決されました。日本共産党の佐々木憲昭議員は「国家主権にかかわる原則を百八十度転換する内容。今必要なのは企業・団体献金の禁止だ」と反対しました。
前国会で一度も審議されず継続審議となっていましたが、この日、二時間余りの質疑を行っただけで採決されました。
法案は「株式上場している国内企業」を理由に規制対象から除外する内容です。提出した自民党の加藤勝信議員らは「政策に影響を与え国策を損なうことはないと判断した」と説明しています。
佐々木氏は質疑で、「これまで外資の影響を受けていた企業の性質が変化したわけではない。外国から直接経営支配を受けている企業もある。変わったのは法案提出者の側。献金をくれるなら外資でももらうということだ」と批判しました。
提出者の早川忠孝議員(自民)は「上場企業は厳しい上場基準をクリアしており、市場の監視下にある」として、問題ないとの認識を示しました。
佐々木氏は「上場基準は、民間企業である証券取引所が市場運営の観点から定めたもの。外国の影響力を排除する担保にはならない」と反論しました。
最後に、外資比率が50%を超えるキヤノンの御手洗冨士夫会長が日本経団連会長に就いたことを挙げ、「カネで政治に影響を与えたい経団連の思惑と、献金元が減って困っている自民党、民主党の思惑が一致したということ。この重大改悪をわずか二時間の質疑で採決することに、厳しく抗議する」と述べました。
解説
国政に外国が影響力
現行政治資金規正法は、政治や選挙が外国の勢力によって影響を受けることを避けるため「主たる構成員が外国人もしくは外国法人である団体その他の組織から、政治活動に関する寄付を受けてはならない」と定めています。総務省は「外国人持ち株比率が50%超の法人が規制対象」としています。
今回の法案は、株式上場している国内企業なら規制対象から除外するとしています。与党と民主党などは献金を解禁する外資企業を「上場期間五年以上」などとする修正案を提出しました。
これに対し日本共産党の佐々木憲昭議員は反対討論で「五年以上に限ったとしても、外国の影響力排除という観点からは意味を持たない」と指摘しています。
外資企業献金を解禁する背景には、献金を通じて政治への影響力強化を狙う日本経団連の意向があります。
日本経団連会長に就いた御手洗冨士夫・キヤノン会長は、会長に内定した一月の記者会見で「いまの法律の下ではキヤノン(外資比率50%超)は政治献金ができない」「時代の流れとああいう法律とは理論的に矛盾する」と語っています。
これに対し民主党の鳩山由紀夫幹事長は、今年五月に日本経団連が開いた「民主党と政策を語る会」で、「外国人持ち株比率が50%を超えたとしても、それをもって企業の政治寄付が制限されるのは、基本的におかしな話。経済界の要望に応えられるように努力をしたい」と発言していました。
法案を提出した自民党については、経団連の政策「通信簿」が「企業の政治寄付については経団連と考えが一致し…政治資金規正法案を提出し、成立に向け努力した」と「評価」しています。
巨大な資金力を持つ大企業の献金は、主権者・国民の意思で進めるべき政策決定過程を大きくゆがめるもので、国民の基本的権利を侵害するものです。
今回の法案はこれまで、不十分ながらも、徐々に規制強化してきた流れを逆行させ、それに加えて、外国勢力の影響排除という原則を転換させるものです。「規制に穴をあける大問題」(佐々木衆院議員)です。(安川崇)