2006年11月23日(木)「しんぶん赤旗」

論戦ハイライト

参院教基特 井上議員質問

学力テストで学校行事も削減

「人格形成」に悪影響

首相「いいことではない」


 参院教育基本法特別委員会の審議が始まった二十二日、日本共産党の井上哲士議員は、教育基本法改悪法案は競争教育をいっそうあおり「人格の完成」という教育の目的そのものをゆがめるものだと告発しました。


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(写真)パネルを示して安倍首相に質問する井上哲士 議員=22日、参院教育基本法特別委

 いじめ自殺や未履修など現在学校で起きている問題をどう解決するか。「『人格の完成』を目指すという現行基本法の教育の目的は非常に大事だと思うがどうか」―井上氏がまずただしたのはこの点です。

 安倍首相が「人格の完成」を目指すとした教育の目的は「普遍的理念だ」と認めたのを受け、井上氏は、一人ひとりの個性を生かした多面的な教育が大事であることを強調しました。

テスト中心の教育

 「ところが現実は『人格の完成』に反する事態が起きている」と井上氏。高校の未履修問題でも、大学受験に関係ない科目は省くという「高校の予備校化」や、テスト中心の教育がすすんでいることが背景にあったことを指摘しました。

 この上、教育基本法が改悪されたらどうなるのか。改悪後に進められる教育振興基本計画について中教審の示した案のトップには全国一斉学力テストの実施が掲げられています。さらに安倍首相は学校選択制の全国的展開を主張しています。

 井上氏は、すでに学力テストと学校選択制がセットで行われている自治体では、学校同士の点数競争が激しくなっていることを指摘しました。なかには点数をあげるために「過去問」を繰り返しやらせたりして、できない子が学校に行きづらい雰囲気がつくられている例もあります。

 伊吹文明文科相は「文科省が実施するテストは習熟度調査」などと答弁。しかし現実には井上氏が指摘したように「学校間のテスト競争があり、そのなかで予算配分まで変えようという自治体が現れている」のです。

 それだけではありません。人格の形成をはかる上で欠かせない運動会などの「特別活動」が廃止・縮小されています。

自然教室まで廃止

 東京の一部では一斉学力テストと区段階独自の学力テストが実施され、子どもたちはテストに追われています。ある区では、中学二年生が楽しみにしていた二泊三日の自然教室を全中学校で廃止し、施設も売却してしまいました。これまであった遠足、文化祭、音楽鑑賞を廃止・縮小したり、準備時間を減らすために運動会を秋から春に移す中学校も生まれています。それが学力テストでの学校間点数競争で勝つための補充授業などにあてられているのです。

 井上氏 「総理はこうした事態が全国に広がることが人格の形成にとって好ましいことだと考えているのか」

 安倍首相 「遠足や文化祭などは大切な教育の機会。学力テストの補習のためになくなるのはいいことではない」

 井上氏は「実際的には、そのあるべきでないことが先行的におこなわれている」と批判した上で、受験対策のために高校で広がった未履修についてもいまの方向でいけば、ますます広がりかねないと警告。「(未履修は)すでに義務教育段階でも発生している」として、長野、香川、徳島、大阪、愛媛の五府県中学十九校で「技術・家庭」などが未履修と報じられていることにふれました。

 井上氏は「こういうことが起きていることを考えるなら、競争をあおる改定案は廃案にして、現行の教育基本法をしっかり生かすことが必要だ」と訴えました。


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