2006年11月3日(金)「しんぶん赤旗」

主張

憲法公布60年

いま光をはなつ九条の輝き


 日本国憲法の公布(一九四六年)から六十年の記念日です。

 改憲を政権の課題にかかげた安倍内閣の成立、国会で始まった改憲手続き法案の審議―政治の表面的な流れからは、改憲をねらう潮流が勢いづいているかのようにみえます。しかし、日本と世界を広く見渡せば、日本国憲法の値打ちをあらためて深く受け止め、九条を守りぬこうと決意する多彩な言論、運動がわき起っています。六十年を機にそのことにしっかり目を向けたいと思います。

「簡単に変えるな」

 この夏、お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さんが人類学者の中沢新一さんと対談した『憲法九条を世界遺産に』を出版しました。その絶妙の題名とともに、憲法九条の誕生を「あの血塗られた時代に人類が行った一つの奇蹟(きせき)」ととらえ、「簡単に変えるな。俺(おれ)の生きてきた歴史でもあるんだぞ」という言葉がすがすがしく受け止められています。

 太田さんはテレビ番組でも憲法への感動を口にし、自民党の政治家などから攻撃されました。その様子をみた作家の澤地久枝さんは最近の講演で「まともに発言する若者に対して、反論するおとなたちの品位のなさ、論理のなさに私は恥ずかしくなりました」と憤りを語っています。

 澤地さんは、作家の大江健三郎さんや評論家の加藤周一さんらとともに、「憲法守れ」の一点で力を合わせる「九条の会」結成の呼びかけ人の一人です。会が発足してから二年余。草の根の「九条の会」は六千に達し、「燎原(りょうげん)の火」にたとえられるめざましさです。澤地さんは「日本人は初めて市民運動の大きな一歩を踏み出した」とのべています。

 こうした発言や運動の広がりに示されるように、いま日本国憲法の値打ちを見直す動きが広がっています。憲法が公布から六十年たって古くなるどころか、その先進的な内容がいよいよ輝きを増しているからです。日本と世界の現実が憲法の理想に近づいているのです。

 北朝鮮が行った核実験はアジアと世界の平和に挑戦する暴挙でした。国際社会が一致結束した立場は、軍事ではなく平和的・外交的に解決をはかることでした。中東でも、北東アジアでも、戦争でなく外交でという動きが大勢です。背景に国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす地球規模の波の高まりがあります。

 国際社会が直面する貧困と飢餓からの解放で、九月の国連総会では「軍事費の無駄をなくし人間開発にむけるべきだ」という議論が強く出されました。軍事に頼ることの愚かさは世界の共通の思いとなっています。

 米国の進歩的法律家団体「ナショナル・ローヤーズ・ギルド」が憲法九条は「国連憲章の諸原則を国内法に取り入れた模範であり、すべての国が追求すべきもの」という決議をあげたのもそのあらわれです。

 新しい平和の秩序を求める世界中の人たちによって、「戦争のない世界」へのさきがけになろうとした日本国憲法の普遍的価値が高く評価されているのです。

世界の人たちの希望

 そのときに日本が憲法九条を捨て、米国に従って海外で「戦争をする国」になろうとすることは、世界のなかでの異常な逆流です。

 「九条の会」の呼びかけ人の一人である作家の井上ひさしさんは最近の著書で、日本国憲法を捨てることは「世界の人たちから、希望をうばうことにな」ると訴えています。

 この憲法の旗を高く掲げて進もうではありませんか。


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