2006年10月30日(月)「しんぶん赤旗」
安倍政権1カ月と共産党
安倍政権1カ月と共産党(上)
安倍内閣が発足して一カ月余。北朝鮮核実験問題、歴史認識や格差拡大と貧困の広がり、憲法改悪、教育基本法改悪など、外交、内政の重要課題について、日本共産党は正面からただし、解決の方向を提起してきました。
平和・外交解決を提起
北朝鮮核実験
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北朝鮮が核実験を強行した九日、日本共産党の志位和夫委員長はただちに厳しく抗議する談話を発表しました。この問題に対応する上で、(1)国際社会が一致結束して対処する(2)外交的・平和的な手段で解決をはかる―の二つの原則を提起しました。
核実験直後の十、十一日の衆参予算委員会で、日本共産党の笠井亮衆院議員、井上哲士参院議員は、この二つの原則を堅持した対応を政府に求めました。安倍晋三首相は「そうした考え方においては、共産党と同じ考え」、「軍事衝突はだれも望んでいない。そうならないように全力を挙げなければならない」と答弁しました。
また、衆参両院の本会議で採択された核実験抗議決議でも日本共産党は、二つの原則の見地で修正を求めました。その結果、決議文には「国際社会が結束した外交を展開し、平和的な解決を模索すべきである」と明記されました。
一方、国際社会が平和的・外交的解決をめざして、国連安保理決議の採択に向け全力をあげていた中で、政府、自民党、民主党の一部に、軍事的対応を急ぐ動きが浮上しました。
非軍事的な措置を決めた国連安保理決議の採択後も、麻生太郎外相が「周辺事態」認定も可能だとする考えを表明するなど、軍事的対応に固執する動きが続きました。
これをズバリ批判したのが日本共産党です。志位委員長は十七日のCS放送の番組で、安保理決議の内容は非軍事的な措置で、平和的・外交的解決をはかるものだとあらためて指摘し、軍事的対応の動きに対し「安保理決議に真っ向から反している」と批判しました。
政府内からも、安保理決議に基づく国際社会の対応について「武力を使ったようなことは、あまりやらないイメージが出ている」(久間章生防衛庁長官)との声があがりました。
首相の「持論」通用せず
歴史認識問題
小泉純一郎前首相の靖国参拝がもたらした深刻なアジア外交の行き詰まりをどう立て直すかが課題となる中、安倍晋三首相の歴史認識が鋭く問われました。
安倍首相はかつて「終戦五十年国会議員連盟」の事務局長代理として活動していました。その議連の「結成趣意書」では過去の戦争が「日本の自存自衛、アジアの平和」のためだったと記しています。また「従軍慰安婦」問題でも歴史教科書攻撃の先頭に立ってきました。
ところが国会で自身の歴史観を追及されると、安倍首相は「いま私は政府の立場にある者として、こうした歴史についての認識を語ることについては謙虚でなければ」などと、ごまかしに終始してきました。
これに対して志位委員長は、六日の衆院予算委員会で、「謙虚」といいながら、首相自身が過去に政治家として歴史観を大いに語り行動してきた事実を示し、歴史認識をただしました。首相は、植民地支配と侵略についての「反省とおわび」を示した一九九五年の「村山談話」、「従軍慰安婦」問題について旧日本軍の関与を認め「心からのおわびと反省」を示した一九九三年の「河野談話」の継承を言明せざるを得ませんでした。これにはマスメディアも注目しました。
志位氏は「あなたがずっと主張してきた歴史観、戦争観というのは、首相になったらもう口にすることができないような性格のものだということを物語っている」と述べ、安倍氏の「持論」が国際的には全く通用しないものであることを浮き彫りにしました。
「核武装議論」を追及
閣内からも懸念
北朝鮮の核実験に関連して、国内外に批判と懸念を広げているのが、麻生太郎外相や自民党幹部の「核武装議論」容認発言です。
志位委員長は「言語同断で許しがたい」と厳しく批判。際限のない核軍拡競争につながる論理だと指摘し、「日本は唯一の被爆国として、核兵器廃絶を地球的規模で実現することにこそイニシアチブを発揮すべきだ。麻生氏の発言は、外相の資格にかかわる問題だ」と述べ、発言の撤回を求めました。(十九日の記者会見)
この立場から、日本共産党の緒方靖夫議員が、核武装論を批判したのに対し、久間防衛庁長官も「日本が(核兵器を)持つような誤解を各国に持たせないことについて、努力する必要がある」と、懸念を表明しました。(二十四日の参院外交防衛委員会)
(10月29日掲載)
安倍政権1カ月と共産党(下)
働くルール破壊を告発
格差問題
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「格差拡大」への批判が噴き出すなか、安倍首相は「再チャレンジ」支援策の推進を打ち出しました。しかし、格差拡大の根源―三人に一人が非正規雇用という現実を生んだ「構造改革」路線を「加速」させると安倍首相は明言しています。
格差問題の象徴的現れである「ワーキングプア」(働く貧困層)の背景に働くルールの破壊があると、ズバリ切り込んだのが市田忠義書記局長の質問(十三日、参院予算委員会)でした。
市田氏は、自動車や電機など日本を代表する企業の生産現場で、労働者の多くが派遣や請負など非正規雇用で、低賃金、劣悪な労働条件にあると告発しました。安倍首相は「ワーキングプアといわれる人たちを前提に、コストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それは大変な問題」と認めました。
さらに市田氏は、キヤノン、松下電器、ソニー、東芝などの工場で違法な偽装請負が横行し、大企業が不当な利益を得ていると迫り、安倍首相は「法令違反には適切、厳格に対応する」と約束しました。
「産経」のコラム(十九日付)は「(市田氏の)『偽装請負』に関する追及は見応えがあった」と指摘。「朝日」は社説(十五日付)で「請負会社だけでなく、受け入れ側の企業の責任を厳しく問わなければならない」と書きました。
一からの徹底審議要求
教育基本法改悪
安倍首相は「今国会における成立を期す」(二日)と教育基本法改悪に並々ならぬ意気込みを示してきました。政府・与党は十一月上旬にも法案の衆院通過を狙っています。
同時に首相官邸に「教育再生会議」を設置。安倍首相は、教員免許更新制、学校評価制の導入などを検討課題に挙げました。学校選択制や教育バウチャー(利用券)制度など、教育の格差を今以上に広げる施策を検討し、来年一月にも中間報告を出す予定です。
志位委員長は二十六日の記者会見で、先の通常国会の論戦で、政府提出の教基法改悪法案は▽国家による「愛国心」などの強制▽教育内容への無制限の国家介入を可能にする―二つの大問題が明らかになっていると指摘。さらに新しい問題として(1)子どもたちを競争に追いたてる安倍内閣の「教育再生プラン」(2)「日の丸・君が代」強制を断罪した東京地裁判決(3)いじめ自殺の問題―があるとして、一からの徹底審議が必要だと主張しました。
なかでも、社会問題となっているいじめ自殺問題について「教育基本法を改定すれば、競争主義がいっそうひどい形で教育におしつけられ、学校の『荒れ』をいよいよ深刻にする」と述べ、いじめ克服のために何が必要かを最優先で審議する必要があると強調しました。
手続き法案撤回求める
憲法改悪
「五年以内」の改憲を掲げる安倍首相は、「まずは(改憲)手続き法である国民投票法案がこの国会で成立することを期待している」(十一日の参院予算委員会)などと繰り返し答弁しています。一方、現行憲法下でも、アメリカから要求されている「集団的自衛権の行使」ができるよう「個別具体的な例に即して研究していく」とのべています。
日本共産党は、志位委員長の代表質問などで、集団的自衛権の行使とは、日本が武力攻撃を受けていなくても、アメリカが戦争状態に入ったらともにたたかうということだと批判。改憲が「海外で戦争をする国」づくりを狙うものであることを浮き彫りにしてきました。
改憲手続き法案は、衆院憲法調査特別委員会で、二十六日から本格質疑入りしました。審議では、笠井亮議員が「現に進行している改憲の動きと密接不可分に結びついていることは紛れもない事実だ」と指摘。有権者の二割台の賛成でも改憲案の承認になりかねないことや改憲派に圧倒的に有利になる宣伝の仕組みなどを明らかにしながら、九条改憲の条件づくりを狙う同法案の撤回を求めました。
(10月30日掲載)