2006年10月28日(土)「しんぶん赤旗」
主張
改憲手続き法案
九条破壊法は廃案しかない
衆院憲法調査特別委員会で、改憲手続き法案が審議入りしました。
二十六日には、与党と民主がそれぞれ競い合って提出した法案をならべて、趣旨説明と質疑をしました。委員長を務める自民党議員は審議が始まる前から、「この国会中に成立させたい。衆院で十一月中に採決し、参院に送付することになる」と公言しています。
日本を海外で戦争する国につくり変える憲法九条破壊を準備する法律など国民のだれも望んでいません。そもそも国会に持ち出すこと自体許されないものです。
狙いは隠しきれない
安倍晋三首相は就任後、「五年以内の改憲」を政権の課題として正面にかかげ、「まずは手続き法である国民投票法案がこの国会で成立することを期待している」と、改憲への一里塚となる手続き法を今国会で押し通すことに執念を燃やしています。法案は国民投票のやり方や国会の発議の方法を決め、改憲に具体的に足を踏み出そうとするものです。
法案について自公も民主も「形式的な手続き法づくりにすぎない」といいます。しかし、日本共産党の笠井亮衆院議員が二十六日の憲法調査特別委で明らかにしたように、改憲手続き法は改憲の動きと密接に結びついています。
自民党はすでに「新憲法草案」を示しました。平和憲法の要である戦力の不保持、交戦権否認を定めた九条二項を削除し、自衛軍の保持と海外での武力行使を可能にする規定を盛り込んでいます。
公明党の新運動方針は、「加憲」の中身として「自衛隊の法的認知」、「平和への貢献」の名による海外派兵を打ち出しました。
民主党も「憲法提言」で「制約された自衛権」、武力行使を含む国連多国籍軍への参加を主張しています。
改憲勢力はいずれも、これほど明確に、九条破壊に狙いを定めた改憲の方向を示しています。それなのに「改憲内容とは関係ないルールづくり」などということが成り立つものではありません。
「憲法九六条の規定があるのにその手続き法がないことは国民主権をないがしろにするものだ」という言い分も通りません。
この六十年間、改憲手続き法案が一度も国会で議論されなかったのは、国民が具体的に改憲を必要としてこなかったからです。どの世論調査をみても国民は憲法九条を変えたいなどと思っていません。こんな改憲手続き法を押し付けられるほうが「国民は迷惑」(笠井議員)です。
立法の意図がよこしまだから、与党案であれ、民主案であれ、手続き法の中身も論外です。国民の意思の反映を妨げ、改憲案を通しやすい仕組みづくりになっています。
ハードルの引き下げ
「国民の過半数」の基準を引き下げたことで、有権者の二割台の賛成で改憲案が「承認」されることになりかねません。公費を使った広報、無料のコマーシャル・新聞広告が所属国会議員数をふまえて配分されるため、反対意見は著しく不公平に扱われ、税金で改憲推進の大キャンペーンが行われます。五百万人以上の公務員、教育者の自由に意見を表明する権利が制限されます。改憲へのハードルを引き下げようとしたからこうなるのです。
九条改憲に道を開くだけの手続き法案は、断固廃案しかありません。いまこそ反対の声と運動を大きく広げていきましょう。