2006年7月28日(金)「しんぶん赤旗」

主張

牛肉輸入再開

不安の根源に対米優先の姿勢


 政府は、BSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい危険部位の混入で停止していた米国産牛肉輸入の再開を決定しました。

 政府は、米国での事前調査でズサンな実態が明らかになったのに、対日輸出条件が満たされるとして、輸入再開を認めています。

 しかし、昨年十二月の輸入再開時にも、日本政府が、現地調査の結果、「危険部位の除去は適切に行われている」と報告した直後に、危険部位の脊柱(せきちゅう)混入が発見(今年一月)されたのです。

国民への説明は後回し

 日本政府の“調査能力”を、国民の目で検証することが必要です。政府は、国民への説明会を二十八日予定しておきながら、その前日に、輸入再開を決定しました。国民への説明を後回しにする日本政府の姿勢が、消費者の不安・不信を増幅させます。

 日本では二〇〇一年九月の国内でのBSE感染牛発生を受けて、対策を強化してきました。全頭検査と全月齢牛の危険部位除去、肉骨粉の製造・利用の禁止、トレーサビリティー(流通経路情報把握)などです。

 日本で行っている措置を、米国産輸入牛肉にもとってほしい。そうでない限り輸入再開には反対だ―。これが、二〇〇三年十二月、米国でBSE感染牛が発見されて以来の、国民多数の声です。

 政府は、米国の要求に屈して、食の安全についての国の責任を放棄する態度をとりました。

 全頭検査の緩和もその一つです。国内の基準を変えて、二十カ月以下の牛を検査の対象外としました。一方で、予算措置をとるものの、全頭検査の責任を都道府県にゆだねてきました。

 政府は、当初は、日本共産党議員の質問にたいし、「輸入再開の検討にあたり、国産牛肉について講じているBSEの全頭検査、および特定危険部位の除去と同等の対策が必要だ」と答えていました(二〇〇四年一月二十三日、小泉首相)。

 ところが、“コストがかかる”といって全頭検査に反対する米国政府の圧力が強まると、日本政府は国会で「全頭検査は世界の非常識」(二〇〇五年二月、当時の島村農水相)と発言するようになりました。質問した公明党議員が、「大変勇気ある、率直なご答弁ありがとうございます」とのべました。対米追従そのものです。

 BSEの全頭検査体制は、日本の牛肉にたいする国民の信頼を支える柱です。検査をつづけるなかで、当初予想できなかった若い牛(二十一カ月、二十三カ月)の感染牛を発見することができ、科学的な成果もあげています。全頭検査の否定は、国民の食の安全確保を覆すものです。

 米国は、輸出再開にあわせるかのように、BSE検査の頭数を現行の十分の一、感染牛発生前の四万頭に減らすことを発表しました。食肉処理される牛の0・1%程度です。

BSE根絶を目指して

 国民の食の安全より米国の顔色をうかがって卑屈な態度をとればとるほど、米国のBSE対策の後退を招くのではないでしょうか。

 日本の国民の願いは、日本と世界でのBSEの根絶です。そのためのBSE対策の強化です。

 日本でとっている全頭検査や危険部位の除去をはじめとするBSE対策を米国に要求していくことが、食の安全の向上につながるのです。

 米国の要求に屈するのではなく、食の安全確保にむけて、日本政府は責任を果たすべきです。


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