2006年7月21日(金)「しんぶん赤旗」

障害ある二女殺害

母親に懲役5年判決

福岡地裁 自立支援法負担に不安


 障害者自立支援法の施行による介護費用の負担増を危ぐし、障害のある二女(当時二十七歳)と無理心中を図り殺害したとして殺人の罪に問われた福岡市の母親(53)に対する判決が二十日、福岡地裁(鈴木浩美裁判長)でありました。鈴木裁判長は「(犯行は)あまりにも短絡的で思慮が足りない」として懲役五年の有罪を言い渡しました。

 判決などによると、同被告は、二女の障害年金と夫の遺族年金のみの収入で生活し、経済的に逼迫(ひっぱく)。障害者自立支援法の施行を前に、介護費用が高額になることなどに不安を募らせて今年三月、福岡市中央区の自宅で就寝中の二女の首を絞め殺害しました。


解説

自立支援法の抜本見直しを

 今年四月に施行された自立支援法は「応益負担」を導入しました。判決は同法が施行されれば自己負担額が「三万円ほどかかる」と募らせた被告の不安について、「特に酌むべき事情とはいえない」と判断しました。

 たしかに、二十七歳という二女の若い命を奪った罪は許されません。

 ただ、自立支援法が障害者の生きる道と希望を狭めている現実があります。自立支援法では、障害が重いほど必要なサービスが多くなり、定率負担ではサービスを利用した分、負担が増える仕組みです。検察側も論告で「障害者を抱える家庭の間に同法の運用に対する漠たる不安が広がっていた」と指摘したほどです。

 国や自治体は、こうした実情を真摯(しんし)に受けとめ、自立支援法の抜本的見直しに本腰を入れることが必要です。(佐藤高志)


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