2006年6月24日(土)「しんぶん赤旗」
主張
肝炎感染
全被害者の救済に踏み出せ
薬害C型肝炎をめぐる集団訴訟で初の大阪地裁判決(二十一日)は、国と製薬会社に責任があると認定しました。
B型肝炎ウイルス感染では、最高裁判決(十六日)が、集団予防接種の注射器使いまわしを放置してきた国に責任があると認めました。
ウイルス性肝炎感染についての、相次ぐ司法判断を、政府は真剣に受け止めるべきです。
64年の承認時から批判
大阪地裁の判決を受けて、小泉首相は、「裁判は裁判としても、この薬害に苦しんでいる方、この悲痛を思うと、国としても、患者の皆さんに何ができるか考えていかなきゃならない」と述べています。国としての救済策の検討を示唆したものです。
薬害C型肝炎訴訟は、全国五地裁で九十人を超える人々が原告となって、裁判を起こしています。出産時や手術時に止血のために使用された血液製剤「フィブリノゲン」などの投与が原因でC型肝炎ウイルスに感染しました。危険な血液製剤を販売し続けた製薬会社と、それを放置してきた国の責任を明らかにしてほしいと訴えています。
大阪地裁の判決は、製薬会社については一九八五年八月以降に違法性があるとしました。肝炎ウイルスを殺す方法を変更したもののかえって危険性を増すことになったという理由です。
国については八七年四月以降の違法性を認定しました。青森県でおきた集団感染の報告があったことなどから、この時点で肝炎感染の危険性は明らかでフィブリノゲンの有効性も確認できない状況にもかかわらず使用制限をしなかった点や、製薬会社の申請からわずか十日で製造を承認した点が指摘されています。
国と製薬会社の違法性を認めた時期より以前に、薬剤を投与された人々は、訴えが退けられました。これらは不当なことです。
同時に、判決は六〇年代、七〇年代の国の怠慢とずさんな薬務行政についてもきびしく批判しています。
六四年のフィブリノゲン製剤の製造承認は、「臨床試験資料がずさんだった」としました。また、七七年に米国の食品医薬品局が承認を取り消したという情報に際して、厚生省(当時)が何の対応もとらなかったことに対しても、「医薬品の安全性を確保するという立場からは、ほど遠い、お粗末な面が認められ、その意識の欠如ぶりは非難されるべきである」と指摘しています。
国会では、七三年に厚生省(当時)がみずから監修した本のなかで感染の危険性や代替治療法にふれていたことを、日本共産党の小池晃参院議員がとりあげました(二〇〇二年五月三十日の参院厚生労働委員会)。
早くから危険性が予見できたのに、国の怠慢で被害が拡大してきたことは、いまや明白です。
判決で認定された行政への批判は、投与の時期にかかわらず、すべての被害者の救済への足がかりとなるものです。
医療と生活補償を
B型とC型のウイルス性肝炎感染患者は、約三百五十万人にのぼるといわれます。放置すれば、肝硬変や肝がんに進む危険があります。患者は、闘病生活や医療費の負担に加え、社会的な差別にも苦しんでいます。もうこれ以上対策を遅らせるわけにはいきません。
原告たちは、すべてのウイルス性肝炎感染患者の救済を求めています。検診から医療、就労、生活補償を含む総合的な対策に早急に踏み出すことを要求します。