2006年6月4日(日)「しんぶん赤旗」
廃案しかない 医療改悪法案
審議するほど問題点
緊迫の国会
国民の命と健康を脅かす医療改悪法案の参院審議が緊迫しています。十八日の国会会期末をにらみ、与党は早期の採決を提案するなど成立に執念をもやしています。しかし審議をすればするほど問題点が噴出。徹底審議で廃案にするしかありません。
団塊世代にらむ 大規模負担増
高齢者の患者負担を二倍、三倍にする深刻さが明らかになりました。
七十歳以上の窓口負担は現在一割。二〇〇八年四月から七十―七十四歳の窓口負担を二割に引き上げます。負担増総額は年間千二百億円。一人当たり年間平均二万円も増えることになります。
七十歳以上の「現役並み所得者」は今年十月から三割負担(現在二割)に。療養病床に入院する七十歳以上の居住費、食費の保険外し(今年十月から)で月三万―四万円を超える負担増になります。
重大なのは、いまの高齢者を直撃するだけでなく、「団塊世代の大量退職」をにらんでいること。「後期高齢者(七十五歳以上)が、いまの千二百万人から二五年度には二千万人になる」(川崎二郎厚労相)といっているように、いまの現役世代を狙った「医療費大抑制」計画です。
保険証取り上げ 高齢者を直撃
七十五歳以上の高齢者に容赦ない負担増を迫っています。〇八年四月に新設する「後期高齢者医療制度」です。いまサラリーマンなどに扶養される高齢者は保険料を払っていませんが、新制度では全高齢者から保険料を徴収。月一万五千円のわずかな年金からも保険料を「天引き」します。
滞納した場合、一年以上たつと保険証がとりあげられます。「資格証明証」にされると、医療費の全額(十割)をいったん窓口で払わなければなりません。
これまで七十五歳以上の高齢者は、公費医療(被爆者、障害者、結核患者など)と同様に、資格証を発行されてきませんでした。厚労省自身が“こういう人たちから保険証は取り上げられない”といってきたからです。なぜ判断を覆したのか、厚労省はまったく説明できません。
療養病床6割減 患者追い出し
お年寄りが長期入院する療養病床を、現在の約三十八万床から十五万床に約六割も削減する計画(一二年三月までに)に批判が集まっています。
いまでも特別養護老人ホームの入所を待っている人は全国で三十八万五千人以上もいます。有料老人ホームは所得の少ない人はとても入れません。療養病床を追い出されたら自宅にも帰れず、行き場を失う「医療難民」「介護難民」が多数生まれかねません。
政府は七月からの診療報酬で、「医療の必要性の低い」高齢者を恣意(しい)的に分け、療養病床に入院している患者の半数を追い出す仕組みを先取り実施しようとしています。
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混合診療の拡大 保険きかない
保険がきく診療と保険がきかない診療を組み合わせる「混合診療」。これまでは「高度先進医療」や「差額ベッド」などの例外を除いて原則的に禁止されてきました。
改悪案では「必ずしも高度でない先進技術」や「国内未承認薬」などを対象に加え、適用範囲を拡大します。
保険外の診療、負担が拡大する一方、保険での診療が狭められることになり、公的医療制度の土台を崩しかねない内容です。日本医師会が緊急記者会見(五月十六日)で、保険外給付の拡大が混合診療の本格導入につながらないか、と危ぐを表明するなど批判が広がっています。
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現役並み所得者 単身で年収約480万円以上、夫婦で年収約620万円以上の70歳以上の高齢者。公的年金等控除の縮小などで、8月から単身で年収約380万円以上、夫婦で年収約520万円以上に基準が引き下げられます。