2006年5月30日(火)「しんぶん赤旗」
主張
米国産牛肉
消費者の不安を無視するな
BSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい特定危険部位の脊柱(せきちゅう)の混入をめぐり、今年一月二十日に、米国産牛肉の輸入が停止されてから四カ月余がたちました。
いまも、米国産輸入牛肉の安全確保について、日本国民の不安は解消されていません。
輸入再開を前提に
日本向けの米国産牛肉は、二十カ月齢以下で特定危険部位を除去するというのが、日米で合意したルールです。それを米政府が順守するように監督するのが日本政府の責任です。脊柱混入が明らかになり、輸入が停止されたあと、四月に行われた意見交換会では、拙速な輸入再開に反対する声が相次ぎました。消費者の意見を無視するのは許されません。
ところが、政府は、六月下旬の日米首脳会談を視野に、輸入再開にむけた動きを強めています。五月中旬に開催した日米の専門家会合では、六月初めから中旬にかけて開く国民との意見交換会の結果を踏まえ「米側と輸入手続き再開のための措置を行う」ことで合意しました。
米国産牛肉に国民が不安を抱くのは、米国のBSE対策が粗雑だからです。
米国内で、へたり牛を食肉処理した事例や、特定危険部位の除去違反の常習化が、米国の公式の文書で明らかになっています。米国からの外国向けの牛では、除去が義務付けられている骨の混入が、香港や台湾で相次ぎました。
米国政府が、“脊柱混入の原因は個別の業者と検査官の不注意による特異な例であり、他の施設は問題ない”と説明しても、日本の国民に信用されない、ずさんな実態が米国産牛肉にはあります。
特定危険部位の除去の問題だけではありません。
日本国内では、すべての牛の特定危険部位の除去とともに、食肉処理される牛のBSE全頭検査を全都道府県が国の予算で行っています。しかし、米国産牛肉は、牛のBSE検査をまったく実施しないまま、日本に輸入されています。
日本政府は、日本でも国の基準では二十カ月以下はBSE検査をしなくてもいいように緩和されたから、二十カ月以下の米国産牛肉は“検査なし”で輸入できるというのです。
米国産牛肉の輸入にあたり、二十カ月以下という条件をつけたのは、“検査なし”を容認するためです。米政府は、この条件を「三十カ月齢以下」に拡大して、BSE検査をしていない大量の牛肉を、日本国内に広げようとねらっています。
BSE感染牛は、へたり牛はもとより、健康な牛からも、多数発見されています。農水省によると、EU(欧州連合)加盟国二十五カ国で二〇〇四年に一千万頭の健康と畜牛をBSE検査した結果、百六十六例のBSE感染牛が確認されています。日本でも健康牛から合計九件のBSE感染牛が検出されています。
米国では、健康牛について、まったくBSE検査されていません。へたり牛を含む全体でも、食肉処理される牛の1%未満しかBSE検査をしておらず、それすら、今後大幅に縮小していく方針です。
日本と同じ対策を
米国のBSE検査体制は、世界から大きく遅れています。それをそのままにして、輸入再開を急ぐことは日本国民の不安を広げるばかりです。国民の信頼を回復するには、米国産輸入牛肉にも全頭検査や特定危険部位の除去、飼料規制など、日本と同じBSE対策を求めることです。