2006年5月20日(土)「しんぶん赤旗」
米産牛肉
「輸入再開へ調整」
政府 米側言い分を追認
牛海綿状脳症(BSE)の危険部位除去違反で、ことし一月からふたたび禁輸となっている米国産牛肉の輸入再開問題をめぐって開かれた日米専門家会合が十九日、日程を一日延長して終了しました。政府は同日、「今回の意見交換を踏まえて日本側の考えを整理し、米側と輸入手続き再開のための措置の調整を行う」として、輸入再開の日米協議をすすめることをあきらかにしました。
外務省によると、同会合では、(1)一部の施設で手続きや書類上の問題が確認されたものの、牛肉製品に影響を及ぼすものでなかった(2)問題点は改善される予定(3)輸出された牛肉の記録から問題点は発見されなかった――などという米側の説明を日本側が追認。今後、輸入再開のための事前の現地調査や、消費者の意見交換会をおこない、輸入再開の条件を日米で協議していく方針です。
米農務省は、小泉首相が訪米する六月下旬までに牛肉輸入再開を決めることを求めています。日本政府が、日米間のBSE対策のへだたりや、米側の検査体制への信頼性に疑問を残したまま輸入再開を強行しようとすることに、消費者の不信感や批判が強まるのは避けられません。
解説
危険部位除去の保証なし
BSE危険部位の背骨混入で、輸入が停止している米国産牛肉をめぐって、三日間にわたった日米政府の専門家会合は、食の安全よりも「対米関係」を最優先する政府の無責任ぶりをあらためて浮き彫りにしました。
日本だけでなく、香港と台湾でも、骨付き米国産牛肉の違反が繰り返されています。米農務省の違反記録(ノンコンプライアンスレコード)でも、危険部位除去の違反が同じ施設で何度もおこっています。にもかかわらず米政府は、日本向け牛肉輸出認定施設について「書類上の問題点が確認されたが、製品に影響はない」などといっています。これでは、米政府の検査体制や危険部位除去という条件順守の信頼性への疑問は解消されるものではありません。
米政府が会合で提出した三十五カ所の日本向け牛肉輸出施設の再調査報告書の内容は、「対日輸出条件の順守体制に問題はない」とするこれまでの説明をくりかえす内容です。
そのうえ、米農務省のランバート農務次官代行は十九日の会見で、再調査の報告書には「改善点が残っている」と報告書の不備があることを明らかにし、六月中に内容の一部を手直しした改定版を日本側に提出すると説明しました。
日本政府が、修正の必要な報告書を追認し、小泉首相の訪米・日米首脳会談前に米国産牛肉の輸入再開を決定するための日米協議をすすめるというのでは、国民の健康と安全を守る責任を投げ捨てる対米追随の態度でしかありません。
米国産牛肉輸入再開の協議や米側の報告書にたいして、政府が今後開催を予定している消費者との意見交換会などでも批判や不信をますます広げるだけです。(宇野龍彦)